「生活保護減額された」 公務員への傷害事件相次ぐ

 今月4日午後1時ごろ、38歳の男が新聞紙で包んだナイフを服の中に隠し、京畿道城南市の中院区庁(区役所に相当)を訪れた。男はまっすぐ住民生活支援課に向かうと、職員(44)にナイフを振りかざした。同職員は顔や首、手などを切りつけられ、大手術を余儀なくされた。

 男が凶行に及んだのは、基礎生活保障(生活保護)を減額されたこと理由だった。男は所得をゼロと申告し、基礎生活保障受給者として毎月48万ウォン(約3万4000円)を受け取っていたが、福祉データベースを整備したところ、隠れて日雇い労働をしていたことが分かり、区が1月から給付額を毎月20万ウォン(約1万4000円)減額していた。合理的な理由で減額されたにもかかわらず「福祉の恩恵を奪われた」という被害者意識が、こうした犯行に向かわせたというわけだ。

 このように、福祉支援が縮小または停止されたとの理由で抗議する人が増え、地方自治体が対応に苦心している。韓国政府が2年前から福祉データベースを整備し、約45万人の基礎生活保障受給者に対し、支援を中止しているためだ。福祉支援の重複・不正受給を見直すものだが、反発は生半可ではない。

 ソウル市銅雀区庁の福祉担当職員は「なぜ給付金を減額したのかという住民の抗議が、最近は月に3-4件以上ある」と語った。単に文句を言うだけでなく、ナイフやはさみ、ガスボンベを持ち出して抗議する人もいるという。

 高麗大学行政学科の咸成得(ハム・ソンドゥク)教授は「ギリシャやスペインなどでも見られたように、ひとたび実施した福祉支援は後で弊害が出ても是正するのが難しいという現実がうかがえる」と語った。

 福祉支援の中断に対する反発は、全国でみられる。今年3月には、京畿道城南市の寿井区庁で社会福祉担当職員と面談していた56歳の男が、突然ガスボンベに火を付けて自殺を図った。昨年12月に刑務所を出所して以来、3カ月にわたり基礎生活保障の給付を受けてきたが、労働能力があると判断されて給付金が断たれたため、こうした行為に及んだという。この事故で、区庁の職員がやけどを負い、病院で治療を受けた。

 2010年6月には、年金の給付が中断されたとして、60代の男が済州市庁で職員に向かってガス銃を5発撃つ事件が発生した。

 また、光州市では今年2月、基礎生活保障の受給を認められなかった60代の男が地元の役場を訪れ、福祉業務を担当する30代女性職員に机や書類の束を投げ付ける事件が起こった。「子どもに収入があるため、給付は難しい」という職員の説明にも、全く耳を貸そうとしなかったという。

 崇実大社会福祉学科のチョン・ムソン教授は、福祉の恩恵に寄りかかって暮らしていた人々が、政府による不正の是正に強く抗議している状況だとし「ひとたびポピュリズム(大衆主義)的に福祉支援を拡大すると、これを縮小しようとする際に大きな反発が生まれる」と語った。

水原=梁煕東(ヤン・ヒドン)記者
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) 2011 The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>
関連フォト
関連ニュース