石巻モデルとはボランティア詐欺のお手本か
2012年04月16日
ルポライター川村昌代氏の取材によって暴露された『一般社団法人 石巻災害復興支援協議会』の伊藤秀樹・前代表による、支援物資流用疑惑が、被災地に波紋を広げている。支援物資の私的流用にとどまらず、瓦礫処理や解体工事における架空(水増し)請求による公金横領の疑いが浮上してきたためだ。
架空(水増し)請求によって、どれほどの公金が横領されたのか。そもそも同団体の設立や市政との関わりには不可解な点が多い。この震災のどさくさにまぎれて設立された同協議会は、随意契約で石巻市から6000万円近い業務を受託。このほかにも代表の伊藤秀樹氏は、同協議会に寄せられた支援機材(車両)を自社の業務に流用し、瓦礫処理や解体業務で3億円以上を荒稼ぎしていた。
これらの裏側には市政を揺るがしかねない疑惑が存在しているものとみられ、石巻市議会は同協議会の実態を調査すべく動き出したが、どういうわけか、市長与党会派とされるグローバル石巻と共産党議員が調査を限定的にすべく、常任委員会での扱いにするよう主張。自分たちだけで内々にうやむやにしようとしたが、最終的には、東日本大震災復興促進特別委員会で議論されることになった。
共産党とグローバル石巻が調査を邪魔しようとした裏側には何があるのか。支援物資の配給という名の県議選における物配り(買収?)に使われた支援物資はどこからどうやって、どこの団体に届けられたのか。石巻災害復興支援協議会は、震災のどさくさの中で支援受入の一端に携わっていた。市の災害対策本部の会議にも伊藤代表は自由に出入りしていたと言われる。同協議会が相次いで市から随意契約を取り付けることが出来た裏側には何があるのか、議会の徹底調査が待たれるが、この問題は、石巻市政を揺るがすボランティア疑獄事件に発展するのではないかとみられている。
先般、日本財団から同協議会に災害支援として無償供与された外国製高級車両が、伊藤代表自らが経営する石巻市の土木建設会社『藤久(とうきゅう)建設』の営利事業に流用されているのではないか、とする記事が週刊文春に掲載された。
週刊文春によると、災害復旧用の車両・機材が不足していた震災当時、伊藤社長は、自らが代表を務める同協議会に日本財団から無償貸与された支援車両を自社『藤久建設』の事業に流用し、半年足らずの間に約1億1千万円を荒稼ぎしていたのではないか、というのだ。
しかし、記事はそれ以外にも、明言こそ避けたものの、伊藤社長が石巻市に対して架空請求を行っているのではないか、と指摘しているのだ。
伊藤社長は、災害のどさくさにまぎれてあたかも公的機関であるかのような一般社団法人『石巻災害復興支援協議会』を設立して金集めの受け皿、隠れ蓑とする一方、協議会に貸与された支援車両を運用管理名目で自由に使いまわし、災害廃棄物処理業務で石巻市から1億1686万円を荒稼ぎ、続けて倒壊家屋・事業所等解体撤去業務で1億9464万3千円を荒稼ぎした。一年足らずの間に3億5000万円を稼ぎ出したのだ。
しかし、石巻市に請求した災害廃棄物処理業務の請求書に添えた施工写真に、これら日本財団から無償で石巻災害復興支援協議会に貸し出されたゼトロスを私的に使用していることが写っていたことから、支援物資の流用疑惑が浮上。伊藤社長は、車両借り上げ費として石巻市に請求、支払いを受けた車両借り上げ金466万円あまりを返還して事を収めようとしたが、さらに倒壊家屋・事業所等解体撤去業務でも同様に流用が発覚。13万5千円を返納したが、これらは逆に疑惑を裏付ける格好となっている。
そもそも、伊藤代表は、日本財団との間で、無償貸与された車両の管理について、特殊車両を口実に自社で運用管理することを取り付けた。すなわち自作自演で協議会に無償貸与された総額数億円の高級車両を自由に使って荒稼ぎしていたというわけだ。
さらに請求書に添付された施工写真には、『PEACE BOAT(ピースボート)』、『日本財団』、『ap bank』、『オンザロード』といった各所属ボランティア団体を示す胸当(ビブス)等の表示を身に着けたボランティアが写っており、伊藤社長は、石巻災害復興支援協議会におけるボランティア活動の記録写真を自社の瓦礫処理業務の施工写真として使用した疑いが浮上している。
しかも請求にあたっては場所と時間を変えることで同じ写真を何度も繰り返して使用。伊藤社長は詭弁を弄しているが、架空請求の額を5ヶ月間で1億1686万円にまで大きく膨らませたのではないか、と見られている。
仮に写真の作業員が、ボランティアではなく、自社の作業員だと主張するのであれば、写真に写っている胸当てを着けた作業員は、ボランティアとして活動する一方で賃金を受け取っていたことになる。そうでなければ、伊藤社長は作業員を雇わず、ボランティアを営利事業に使うことで、人件費をかけずに荒稼ぎしていたということになる。いずれにしてもボランティアの善意を踏みにじる行為は言い逃れ出来るものではない。
文春の記事によれば、伊藤社長は取材に対して、震災直後、市役所に瓦礫の撤去を要請したところ、「あんたは藤久建設っていう業者なんだから、機械を出してボランティア引き連れてやったらいいじゃねぇか、その費用部分は(役所が)みるから、という話で始まった」と言い切っている。すなわち、伊藤社長は、市の何者かと共謀して不正に手を染めたことを暗にほのめかしているのだ。
伊藤社長は一方の石巻災害復興支援協議会でも、石巻市から随意契約でボランティア調整管理業務を4743万9千円で受託。しかし、十分な運用実績に至らなかったために2897万2千円に減額となり、さらに入浴支援業務を随意契約で5565万円で受託したが、こちらも利用者数を伸ばすことが出来ず、2725万8千円に減額となった。それでも合わせて約6000万円近くを自称ボランティア団体で荒稼ぎしていたことになる。
朝日新聞は、当時、伊藤秀樹社長が代表だった『一般社団法人石巻災害復興支援協議会』を奇跡の災害ボランティア「石巻モデル」と称賛したが、その化けの皮が剥がれ落ちるのに大した時間はかからなかったようだ。費用は役所がみるといった人物は誰なのか。そこには政治家は介在していないのか。伊藤社長の身内にはベテラン県議がいるだけに疑惑は憶測を呼んでいる。
現在、『一般社団法人 石巻災害復興支援協議会』は大丸英則専務理事が代表代行となっているが、同協議会の役員は、石巻青年会議所のメンバーかOBである。その一人である窪木好文はこの災害の最中、石巻市教育委員会の教育委員になった。彼らがボランティア支援組織の一般社団法人を隠れ蓑に、自らの営利目的に利用していた可能性は否定できない。協議会というあたかも公益性があるかのような組織を隠れ蓑にすることで、世界中から寄せられた善意を踏みにじっていた行為は悪意に満ちて許し難いものがある。
同協議会に公益性はなく、震災のどさくさにまぎれて結成された名ばかり協議会の胡散臭い組織が、ボランティアを騙し、随意契約で数千万円を荒稼ぎできるまでになったのか。徹底した調査が求められている。
伊藤社長は、かつて2002年に石巻青年会議所(JC)の理事長を務めた。同災害復興協議会の役員には同様にJCの現職理事長である大丸英則、前理事長の窪木好文が名を連ねる。彼らの巧みなところは、「石巻災害復興支援協議会」を一般社団法人として登記したことだ。日本財団を信用させるには、一般社団法人という肩書きは説得力がある。
伊藤代表は、市長のお墨付きなくして参加できない石巻市の災害対策本部の会議にも出入りしていたが、なぜ、一民間業者の社長が市の災害対策会議に名を連ねることが出来たのか。
前述のとおり、伊藤社長にはもうひとつの顔がある。元県議(当時)と親戚関係にあり、震災後の県議選で、この元県議は再選を果たした。
同県議選では、共産党が最後には、県議選の票集めのために支援物資を配り歩いた。同様に「復興協議会」に届いた支援物資も伊藤前理事長の身内にあたる候補者の選挙で集票に使われた可能性は否定できない。
PR
| HOME |