■都は区部で「準絶滅危惧種」に指定
しかし、都市部ではご多分に漏れず、近年めっきり数が減っており、2007年以降は世界中で猛威を振るったツボカビ症の悪影響も心配されている。特に東京都区部では減少が目立ち、専門家からは絶滅の可能性も指摘されている。このため東京都環境局は、保護すべき重要な野生生物種を掲載した「東京都レッドリスト」(2010年版)の中で、アズマヒキガエルを区部において「準絶滅危惧」(NT)種に指定した。これは「現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては『絶滅危惧』として上位ランクに移行する要素を有するもの」という厳しめの判定だ。
そんな希少種のカエルのオタマジャクシがなぜこの春、皇居の周辺で大量に産まれたのか。理由は定かではないが、専門家は気候による影響を一因として挙げている。アズマヒキガエルの卵は産卵からふ化までの気温が低いと、多くの卵がふ化しないまま死んでしまうという。
アズマヒキガエルのオタマジャクシは皇居のお堀(内堀)の1つである牛ケ渕(うしがふち)でも群集する姿が見つかっており、他のお堀や皇居内の池でも繁殖している可能性がある。もちろん、すべてのオタマジャクシがカエルに成長できるわけではなく、多くが成長の過程で魚や鳥、カメ、ヘビなどに捕食される運命にある。この先、オタマジャクシや子ガエルの数は大幅に減るだろうが、それでも生まれてきた数が半端じゃないだけに、相当の数のアズマヒキガエルが皇居の内外で生息することになるだろう。「果たしてどんな状況になるのか。もちろん処分などは考えておらず、見守るしかない」。北の丸公園の管理担当者や警備担当者は今から心配顔だ。
(編集委員 中川内克行)
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オタマジャクシ、千鳥ケ淵公園、アズマヒキガエル
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