死亡の6人は軽装 低体温症か5月5日 19時21分
北アルプスの白馬岳で、北九州市の医師など6人の登山グループと連絡が取れなくなり、警察などが捜索した結果、近くの尾根に6人の登山者が倒れているのが見つかり、その後、全員の死亡が確認されました。
警察は、北九州市のグループとみて確認を急ぐとともに、6人はいずれも軽装だったことから低体温症で死亡したとみて調べています。
北アルプスの白馬岳で、北九州市の63歳から78歳の男性6人の登山グループが、4日夜、宿泊する予定の山荘に到着せずに連絡が取れなくなり、警察などは、遭難したおそれがあるとみて、5日朝から捜索を行いました。
5日午前8時ごろ、白馬岳に向かう尾根で6人の登山者が倒れているのを別の登山者が発見し、連絡を受けた警察がヘリコプターで6人を搬送しましたが、全員の死亡が確認されました。
警察によりますと、登山グループはいずれも北九州市に住む医師4人と獣医師などで、岡崎薫さん(75)、政所良治さん(78)、三島齋さん(75)、井上義和さん(66)、村井正和さん(63)、角田重雄さん(63)の6人です。
6人は大型連休を利用して3日に北アルプスに入りましたが、4日は午後から吹雪となり、連絡が取れなくなっていました。
警察は、荷物の中にあった免許証などから、死亡したのはこの6人とみて確認を急いでいます。
警察によりますと、6人は雪に覆われた尾根にまとまった状態で倒れていて、Tシャツにジャンパーを羽織るなどいずれも軽装で、防寒着などは身に着けていなかったということです。
警察は、6人が天候が悪化した中で身動きがとれなくなり、低体温症で死亡したとみて調べています。
白馬岳に向かっていた6人が宿泊した山小屋「栂池ヒュッテ」によりますと、6人は3日午後2時から3時の間にチェックインし、近くにある自然園に散歩に出かけたり、そろって夕食を食べたりして過ごしたということです。
4日は午前5時すぎに弁当を持って出発し、その時点では青空が広がっていて、シャツや長ズボン姿だったということです。
低体温症とは
低体温症は、極度の寒さにさらされるなどして、体の中心部の温度が35度以下になる状態を言います。
35度以下になると、体温を上げようとして自然と激しい震えなどが起こります。
33度から34度より下がると、体の震えが止まる一方、意識がもうろうとし、錯乱状態になるなど神経症状が起こります。
さらに30度以下になると死亡する場合が多くなるとされています。
人の体温は、通常は皮膚の表面温度が変化しても体の中心部はそれほど変わりません。
しかし、特に中高年になると、暑さや寒さを感じる能力が低下するため、体温を調節する機能が若い人に比べて十分ではなく、「低体温症」にかかりやすくなります。
体が震えている症状の軽いうちは、温かい飲み物をとるなどして体を温める必要があります。
意識がもうろうとするなどした場合は、できるだけ早く専門的な治療を受ける必要があります。
日本登山医学会の監事で、低体温症に詳しい杏林大学医学部の大野秀樹教授は、中高年に低体温症が目立つ理由について「通常は寒いときに血管が縮むことで冷えた血液が体の中を回って体温が低くならないよう調節できるが、老化とともにこの機能が衰えてくる。また、寒いときには震えることで熱を作り体を温めるが、高齢になるとこの機能も衰えてくる」としています。
また、低体温症の怖さについては「体の中心部の温度が35度くらいになると疲労感を感じるようになり、33度くらいまで下がると意識がもうろうとなり、正常な判断はできなくなる。それを放置して30度まで下がると命の危険が出てくる」としたうえで、「症状が軽いうちはカイロを首筋や股の間に当てて温め、温かい飲み物ものを飲めば回復できる。それより悪化した場合は、救援を呼び、体がぬれていれば体温を奪われるので乾かすことが重要だ」と話しています。
山岳遭難による死者・不明者の90%は中高年
警察庁によりますと、おととし全国で起きた山岳遭難は、過去最悪の1942件で、死亡した人や行方不明になった人のうち40歳以上の中高年が占める割合は90%に上りました。
このところ、登山は、中高年を中心に人気が高くなっていますが、警察庁によりますと、おととしまでの過去10年間、山岳遭難の発生件数は増加傾向にあります。
おととし起きた山岳遭難は1942件で、遭難者は2396人に上り、件数・遭難者数ともに昭和36年以降、過去最悪となりました。
このうち、死亡した人や行方不明になった人は294人で、40歳以上の中高年が占める割合は90%で265人に上っています。
また、3年前の平成21年7月には、北海道・大雪山系のトムラウシ山で、18人のパーティのうちいずれも中高年の8人が亡くなる事故も起きています。
警察庁は、気象条件や体調、装備などに配慮して余裕のある安全な計画を立てること、単独登山は避け、信頼できるリーダーを中心に複数で行動すること、また、体調が悪い場合は早めに登山を中止するなど、遭難を防ぐ対策をとるように呼びかけています。
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