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第九話 Sランク

キーンコーンカーンコーン
学校のチャイムが鳴り響く中、フィーは息をきらしながら校舎の中に入る
いわゆる遅刻である
このルーオブ剣魔術育成学校において、遅刻は厳禁である
それもそのはず、遅刻した場合は訓練施設でのモンスター討伐が課せられるからだ
もちろんそれが終わった後、反省文を書かされる事になっている
ちなみにその量はがんばっても一日で書き終われるか分からない程だ

「はぁ・・・・はぁ・・・・あとちょっと・・・」

フィーは廊下を走り抜け、階段をかけ上る
その努力の甲斐もあって、フィーはなんとか教室まで辿り着く
ガラガラと勢いよく扉を開けると、教室の中には全員がしっかりと着席していた
フィーは何やら気まずい空気の中自分の席に着席すると、丁度マリアが教室に入ってきた

「はぁ~い、それじゃあ出席確認するよぉ~!」

マリアは相変わらずな口調で生徒の名簿用紙から順番に名前を言っていく

「じゃあ次、フィーちゃ~ん」

「は、はい!」

マリアが呑気に名前を言うのに対して、フィーは何故か勢いよく返事をする

「あらフィーちゃん、いい返事するねぇ~。じゃあ次、ヴェルく~ん」

教室の中にマリアの声が響くが、それに答える返事が全く聞こえない
フィーは自分の隣の席を見ると、そこには誰も座っていなかった
そう、今日ヴェルフェスはまだ教室に来ていないのだ

(あれ、どうしたんだろう?)

フィーはヴェルフェスがいないことに疑問を抱くが、気にしない事にする
そうしている内にも出席の確認は終わり、教室にいつもの活気がよみがえる

「今日は授業見学でSランクのクラスに行くので、準備してくださいねぇ~」

マリアは生徒達にそう呼び掛けると、教室から出ていった
それと共にクラスの生徒達は何やら準備をし始める

「ねぇ、フィーちゃんは何持ってく?」

「え? 何か必要なの?」

フィーは質問をしてきたクラスメイトに逆に質問をし返す

「私はわかんない問題写した紙持ってくよ、フィーちゃんもそうすれば?」

「あ、でも私分かんないとこはあまりないから」

クラスメイトの女子にそう告げると、なぜかその女子は目を輝かせる

「あぁ~いいなーフィーちゃんは。頭良いし可愛いし。ほんと良い子なんだからぁ~」

そう言うと女子はフィーの顔に自分の顔を擦り付ける

「やめてよ、くすぐったいよ~」

「ああ~、その仕草もまた可愛いな~」

フィーはこのクラスだけではなく、学校の中でもみんなから可愛がられている
その理由は小動物みたいなのと、なぜかほっとけない感じがするからだそうだ

「もぉ~、こんなに可愛い子が劣等品の隣なんてもったいないわよ~」

女子はそう呟くとウインクをし、教室から出ていった
その後ろ姿を見送ると、なぜかションボリとした表情になる

「どうしてみんなヴェルフェス君の事嫌ってるんだろう・・・」

フィーはポツリとそう呟くと、適当に文具を手に取り教室から出ていった





この学校の日程には、一週間に一回、Sランクの授業を見学する事が出来る
ただし、Fランクの生徒は見学しても意味がないと言うことで参加出来ない
つまり、この特権はEランクからAランクにしか無いと言うことだ
今日はCランクの生徒がSランクの戦闘訓練の見学をする事ができる日だ
フィーがゾロゾロと蟻の群れの様なクラスメイト達の後ろについていくと、グラウンドに出た
どうやら今回は外での訓練になっているらしい
フィーは持ってきた文具が何の役にもたたない事を知り、少しガックリとする

「来た! ネリス様だ!!」

クラスの男子の一人がそう叫ぶと、クラスの全員が男子の指差した方向を見る
フィーも気になったのかその方向を見るため顔を動かす
そこには、学校の玄関から出てくる絶世の美少女がいた
髪は艶のある黒い髪をしており、瞳はサファイアの様に綺麗な青だ
こちらの存在に気づくと、笑みを浮かべて手を振っている
彼女が手を振った途端、フィーのクラスメイトは全員手を振り返す
だが、フィーはある事に気がついていた
それは、今来たネリスと呼ばれる女性が、ヴェルフェスに似ていることだ
彼と違って目付きは全く鋭くないが、髪の色が非常に似ている
それに二人とも容姿はとても良いのだ
そう考えていると、ネリスの後方からフェンが出てくる
フェンはネリスに気づいたのか、その顔に笑みを浮かべるとそのまま歩いていった
そしてSランクの生徒が全員集合すると、なぜが校長がグラウンドに出てくる
どうやら暇らしく、Sランクの訓練を見に来たようだ

「それではこれより、訓練を始めます」

ネリスがSランクの生徒達の前で号令をすると、Sランクの生徒達が二人一組になる
そして全員が配置につき、準備が整った

「全員、武器を出せ!!」

フェンが指示を出すと、Sランクの生徒達は何やら呟き始める
すると、彼らの正面に何かが生まれ、色のある光を出している
そう、魔方陣だ
魔方陣を発生させるには、呪文を唱える必要がある
その呪文は、自らの中にある魔力と呼ばれるものを現実に呼び出す方法だ
呪文によって、自らの魔力で炎を発生させたりする事ができる
魔方陣とは、自分の魔力を物質として構成させるのに必要な物だ
魔方陣を発生させ、その中に魔力を注ぐことにより、魔力を物質にする事ができる
ちなみに魔方陣に色がついているのは、彼らの魔力の色を示しているからだ
赤なら火の魔力を表し、青なら水の魔力を表す
ただ、自分の魔力の色以外。例えば水の魔力を持つものは火の魔力が必要なものを発生させられない
つまり、自分の色の物しか発生させられないと言う事だ
彼らは魔方陣に魔力を注ぎ終えると、その中に手を入れる
そして中から魔力によって構成された「武器」を手に取る
それらの武器は、どれもが色を帯びている

「出た! ネリス様の武器だ!!」

その声を聞きフィーはネリスに視線を送ると、彼女の手には大きな槍が握られていた
それは先端に刃のついた物ではなく、全体が刃のような槍だった
その槍はランスではなく、ジャベリンと言った方が正しいだろう
しかもそのジャベリンはバチバチと雷を纏っている

「さあ、いくわよ!!」

ネリスの掛け声と共に、彼らは戦闘を始めた










「いや~、凄かったな~」

「ホント、特にネリス様は最高ね!」

「顔良し、体つき良し、成績良し、おまけにあの性格だしな!」

Cランクの生徒達は、それぞれの抱いた感想を話し合いながら、のんびりと教室に戻っていた
その中、フィーはずっと考え事をしていた

(どうしてヴェルフェス君は来なかったんだろう)

そう、ヴェルフェスの事だ
フィーには今日の授業見学より、そっちの方が気になっていたのだ
そして、何かひらめいたのか、フィーは顔を上げると教室に戻っていった





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