第一話 劣等品
ルーオブ剣魔術育成学校
この世界において最大規模の冒険者育成学校である
制服に規定はなく、また、校則もあまり無いため人気がある
また、実力主義であるため、実力に見合ったクラスに分かれている
最上級のクラスがSランククラス
その下からA、B、と続いているのである
そして、この学校でも、もっとも注目されているのが、実戦を取り入れる事
つまり、学生同士での戦いができるのである
例えば、Cランクの生徒が、Aランクの生徒を破った場合、クラスを入れ換える事が出来るのだ
ちなみにランクが上の生徒が下の生徒に戦いを申し込む事は出来ない
そして、今日もルーオブ剣魔術育成学校の一日が始まる
太陽がサンサンと朝が訪れたことを日光を出して伝えてくる
小鳥達はチュンチュンと鳴き、朝の訪れを喜ぶかのようだ
そんな中、一人の青年が学校の校庭にある大木で寝ている
漆黒の長い髪に、人の血の様に紅い眼をしている
服装は、黒のズボンに灰色のシャツ。その上に黒のコートを羽織っている
コートは足元近くまで届く長いもので、腕をまくっている
左足は伸ばし、右足は曲げた格好をしている
その右膝に右肘をのせ、左腕はダランと垂れ下がっていた
そして、彼が座っているのは、大木の枝であった
と言っても、人が二人ほど座っても、スペースが余るほどの広い枝の上にだが
「・・・・あぁ、まぶし・・」
彼はそう呟くと、目元に手をかざして日光を防ごうとする
「ったく、太陽なんて滅んじまえ」
髪の毛をワシャワシャと掻きながら太陽に陰口を言うと、ヒョイっと木から飛び降りた
そのままスタっと着地をすると、何事もなかったかの様に歩き出す
彼の名はヴェルフェス。ルーオブ剣魔術育成学校Cランクの生徒だ
ヴェルフェスは大きな欠伸をすると、そのまま伸びをする
彼がなぜ大木で寝ているのかと言うと、ある理由があるからだ
それが、「劣等品」と言われている事だ
この学校には学生寮があるが、そこに彼の部屋はない
そこは、物置として使われているからだ
彼の所有物はその物置の中にある
それを取りに行くために、学生寮に向かっているのだ
学生寮の前に着くと、そこには多くの学生が群れをなしていた
その群れの中の一人が彼に気づくと、小さい声で
「おい、あれって劣等品じゃね?」
と、友人であると思われる人に耳元で囁く
「うわ、あれが劣等品か」
「噂はほんとだったな」
「あのネリス様の双子の弟だろ?」
「ああ、ほんとネリス様がかわいそうだぜ」
ヒソヒソと小声で話し合うのは、この学校の生徒達である
そんな噂話をしている彼らを無視して、ヴェルフェスは学生寮の中に入る
ヴェルフェスの部屋は、学生寮の二階の隅である
階段をのぼり、部屋に向かう。これが彼の日課でもある
部屋の扉には「物置」と大きく書かれている
その扉を開けると、中には大量の本やら何やらが置いてある
それらをどかすと、彼は荷物の下敷きになっていたカバンを取り出す
「まったく、中の奴が壊れるだろーが」
ヴェルフェスはこの部屋の管理人に暴言を吐くと、中身を確認する
中にはヘッドフォンと教科書。その他もろもろである
中身を確認し終えた後、ヴェルフェスは下敷きになっていたもう一つの物を拾い上げる
それは、彼の武器でもある刀だ
鞘は黒く、刀の柄も黒いので、遠くから見ると黒い棒にしか見えないだろう
もちろん刀身も黒一色である
ただ、その刀は日本刀の様に緩やかなカーブは描いておらず、直剣の様に真っ直ぐの形質をしている
まさしく、直剣の片刃みたいな物だ
それを腰のベルトに着けると、カバンを背負い、部屋からでる
(っとと。忘れるとこだった)
ヴェルフェスはカバンからヘッドフォンを取り出すと、早速装着する
起動ボタンを押すと、耳にロックの音楽が流れ始める
(さて・・と。行くか・・)
ヴェルフェスがヘッドフォンを着け、階段へ向かおうとした時、彼はある異変に気がつく
(・・・・・・八人か)
そう、人の気配がするのだ。それも一人や二人ではない。八人だ
(まったく、今日もかよ・・・)
「おい、出てこいよ腰抜けども」
ヴェルフェスが軽く挑発すると、彼を取り囲むようにゾロゾロと人が出てきた
彼らの手には、それぞれ木刀などの鈍器が握られている
「集団でしか能力が発揮できないクズが、俺になんかようか?」
ヴェルフェスが彼らをさらに挑発すると、彼らは一斉に構える
「僕らは、君のような奴をネリス様の弟とは認めない! いくぞ!!」
その声と共に彼らは一斉にヴェルフェスに飛びかかった・・・・・・だが
「はっ、そんなんで俺倒せると思ってんのか?」
ヴェルフェスはまず正面の敵の顔に右の拳を入れる
次に右から来る敵に蹴りを入れ、背後と左から来る敵は刀の鞘で弾き飛ばす
(あと四人か・・)
ヴェルフェスは今倒した敵の足を掴むと、片手で持ち上げる
それはまるで、魚を釣った漁師の様だ
「さあて、悪く思うなよな!」
ヴェルフェスは持ち上げた敵をそのまま振り回し、残りの敵を全て吹き飛ばす
「はああああああああ!!」
そして、振り回した生徒をそのまま放り投げた
振り回された敵はそのまま壁に激突し、気を失った
「ふぅ、終わったか。それにしても懲りないなこいつら」
ヴェルフェスは何度もこの様に襲撃に遇っている
その理由は一つ。自分がネリスの双子の弟だからだ
それに嫉妬した同じ学校の生徒がこうやって襲いかかってくるのだ
(まったく、朝から迷惑なこった)
ヴェルフェスは気を失った生徒を置いて、そのまま階段へ向かった
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