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第四話 訓練(実戦)




「それでは、これより訓練を始める!」

腕を組んだ大柄な男は、校舎から遠く離れた訓練施設の前でその口を開いた
その言葉を聞いた生徒達は、ゴクリと唾を飲み込む
これから行われるのは、魔物の討伐訓練である
対象はゴブリン三匹と、一見簡単そうだがそうでもない
だいたい、集団を率いているゴブリンを討伐するのだから、三匹と言う単位は可笑しかった
ゴブリンが運良く集団から離す。それが今回の訓練の目的でもある
それは、いかに魔物を各個撃破するかが鍵を握っている
特に今回は一人の戦力に依存するのではなく、全員の協力が必要不可欠なのだ

「校長、ご挨拶をお願いします」

「うむ、それでは諸君。まもなく訓練が始まる」

筋肉の塊のような大柄な男は校長と呼ばれる老人に頭を下げると、即座に後ろに下がる
その男の隣に現れたのは、この生徒達の通う学校の校長だ
白い髪をオールバックにし、その黒い瞳で生徒一人一人の顔を見ていく
外見では老人だが、その顔つきと態度から相当の実力者である事が分かる

「今回の訓練はゴブリン。彼らは単独では弱いが、集団では我らが不利になる。しかし、討伐する数はたった三匹だ。それと、生徒諸君。ナイフは持っているか? それで自らが倒したゴブリンの鼻を削げ。それを三つ持って帰れば良い。それでは・・・・訓練開始!!」

校長の声と共に、生徒達は訓練施設Aの中に入っていく
そんな中、フィーはおろおろとしながら回りを何かを探すように見回している

「ん? どうした?」

フィーを偶然見つけた校長は、彼女のそばに寄って疑問を投げ掛ける

「いや、その・・私のパートナーがいないんですけど・・・・」

そう、彼女は自分のパートナーであるヴェルフェスを探しているのだ

「そうか、パートナーが消えたのか。だったら二匹でいいから討伐してこい」

「えぇっ!? そんなの無茶ですよ!」

「なんだ、貴様校長に逆らうのか?」

校長はその鋭い眼光でフィーをにらめつける
フィーはその眼光を受けた途端、体が金縛りになるような感触を味わう

(な・・・嘘・・でしょ・・・体が、動かない・・)

自分の体がまるで固定された感覚になったフィーは自分の状況に驚く
そのフィーの様子に校長はフッと笑うとフィーをにらめつけるのを止める

「貴様はCランクの生徒だぞ。ゴブリンの二匹や三匹余裕なはずだ。そうではないか?」

「で、でもゴブリンは集団ですよ!」

「だから二匹にしたのだ。とっとと行かんか小娘」

校長はフィーを見下す様に言葉を投げ掛ける

「・・・・・・分かりました」

フィーは自分の右手に握られている弓を強く握ると、トボトボと訓練施設の中へと入っていった













「・・・・・・・いた。あれがゴブリンね」

あれからフィーが訓練施設の中で、緑色の小人を見つけた
ちなみにこの訓練施設は森である
木々が生い茂っており、フィーはその木の枝の上に乗っているのだ

(数は・・・・三匹か。大丈夫かな・・・)

フィーはスゥっと息を吸うと、ゆっくりと吐き出す

(大丈夫。これでも弓には自信があるんだから・・・)

フィーは背中に備えてある矢に手を伸ばし、矢尻を指で掴む
弓を構え、狙いをゴブリンに定める
そして、ゴブリンに矢を放った
矢は一直線に風を切りながらゴブリンの頭を貫く
頭を貫かれたゴブリンは、そのままドサっと地面に倒れる

(よし、まず一匹ね)

フィーは弓を構え、次のゴブリンに矢を放つ
しかし、仲間を殺された事に気づいたゴブリンはフィーの存在に気づいており、その矢がゴブリンを貫く事は無かった

(まずい、はずした・・)

フィーが背中にある矢を手に取ろうとするが、ゴブリンが手に持つ鈍器を木の上のフィーめがけて投げられる
フィーは腰にあるナイフで鈍器を弾くが、すでに木の根元にはゴブリンが集まってきている
ゴブリン達は手に持っている鈍器で木の根元を叩き、フィーを落とそうとしている
まずいと思ったフィーは矢を放つが、それはゴブリンを殺せる程の致命傷にはならない
そして、フィーの乗っている木がゴブリンによって傾けられる

「嘘! きゃあ!!」

フィーはバランスを崩すとそのまま地面に叩き落とされる
そのフィーをゴブリン達は取り囲んだ

「に、逃げなきゃ・・・」

フィーは立ち上がろうとするが、木から落とされた時に足を捻ったようだ
その証拠に、彼女の足首は赤く腫れている

(このままじゃ・・・私・・)

ゴブリン達は彼女に一斉に飛びかかる

(ああ・・・・私・・ここで死ぬんだ・・・)

フィーは諦めたように、ゆっくりと目を閉じる










そして、訓練施設の中に、断末魔が響いた・・・・・・・・・そう、ゴブリンの



(・・・・・・え?)

フィーは自分が死ぬと思っていたため、目元には涙がついていた
そして、フィーは目の前の光景に息を呑んだ








そこには、フィーに飛びかかったゴブリンの死体と・・・・・・・













そのゴブリンを一瞬にして切り伏せた、ヴェルフェスがいた








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