ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第三話 訓練(説明)


「はい、それでは授業をはじめまぁす」

マリアの声が、教室の中に響き渡る
フィーは自己紹介が終わった後、ヴェルフェスの席の隣になった
無論ヴェルフェスはそんな事も知らず呑気に音楽を聞きながら教科書をペラペラと捲っている
フィーは不安で仕方がなかった。なぜなら、隣の人物がみんなに嫌われているからだ
なんせ、授業中も誰も注意をしないからだ
この学校の校則は、基本そんなに厳しくはないが、これは異常だとフィーは思っていた
なにしろ授業中にヘッドフォンをして、そのうえ教科書を読書している様にしか見えないからだ
そして授業が終わると、フィーはマリアの所に行った
と言っても、マリアは教室の教卓にいるのですぐである

「あの、マリア先生? 質問があるんですけど・・・・」

「ああフィーちゃん。どうしたのぉ?」

マリアはフィーを見つめながら首をかしげる

「あの、そ、その。私の隣の人なんですけど・・・」

「ああ、ヴェル君がどうかしたのぉ?」

マリアが呑気に言っているので、フィーは一瞬驚いたが、すぐに元に戻る

「先生、どうして彼は授業中にあんな事をしているんですか?」

「ああ、そんなことぉ? なんだぁ~」

フィーの質問に、マリアは肩をがっくりと落とす

「先生、なんでそんなに落ち込むんですか?」

「ああ、なんでもないよぉ。ヴェル君が授業に参加しないのはいつもの事なのぉ」

「ええ!? そ、そうなんですか!? けど、それって・・・」

「ヴェル君はねぇ、もう勉強しなくてもいいくらいなのぉ」

「え、ええ!!?」

マリアが放った言葉に、フィーは驚きを隠せなかった

「ヴェル君はねぇ、ああ見えてすっごく頑張りやさんなのぉ。ヴェル君のお姉さん知ってるぅ?」

「い、いえ。知りません」

「そのお姉さんすっごく才能のある子なのぉ。でも彼は違ったのぉ。みんなから劣等品って言われてもがんばって、がんばって、それでも報われない。そういう子なのぉ。だから先生、ヴェル君の事応援してるのぉ。いつかきっと、彼が報われるようにって毎日神様にお願いしてるのぉ」

「そ、そうだったんですか・・・」

フィーは知らなかったとはいえ、失礼なことをしたと少し落ちこんだ表情になる

「フィーちゃん。確かにヴェル君は授業も聞かないし、いっつも一人だよぉ。けどね・・・」

マリアは教卓の位置からヴェルフェスの席を眺める
ヴェルフェスはヘッドフォンをしながら教科書をまだペラペラと捲っている

「ヴェル君は外見では悪い子みたいだけど、中身はすっごくいい子なのぉ」

「・・・私には、そう見えませんけど・・・」

フィーがヴェルフェスを見ながら感想を言うと、マリアが頭にチョップを叩き込む

「いったぁ! な、なにするんですか!」

「悪口言っちゃだめなのぉ! 反省しなさぁい!」

マリアはそう言うといつものニコニコした表情に変わる

「フィーちゃん、ヴェル君と仲良くなりなよぉ」

「・・・・・でも彼は、授業もろくに聞かないですよ」

「それはさっき言ったじゃなぁい。まあいいわぁ」

マリアはフィーの会話に終止符を打つと、教卓の前に立つ

「はぁ~い、みなさん。今日は訓練の時間ですよぉ~」

マリアの一言で、教室のクラスメイトの表情が変わる
この学校において、訓練とは魔物を狩る事を意味する
つまり、実践練習と言う事だ
訓練は基本学校の中で行われるが、度々場所を変更する事がある
今回Cクラスはこの学校の近くにある「訓練施設A」と言われる所だ

「今回のパーティーは、二人ずつ。席の隣の人とやってねぇ~」

マリアはクラスの生徒にそう告げると、黒板に紙を貼った
そこには、今回の討伐目的モンスターと、その部位が書かれてある
今回、討伐モンスターに指定されたのはゴブリンと言われるモンスターだ
外見はとても醜く、背丈はだいたい人間で言う子供サイズだ
しかし彼らは集団戦を得意とし、単独でゴブリンと戦うのは不利でもある
また、ゴブリンは武器を持っているため、怪我をしないと言う保証はなかった

クラスメイト達が集合場所へ向かうため教室からゾロゾロと出ていると、不意に

「劣等品と狩りなんて、かわいそうね」

と、周りから声をかけられた

(ど、どうしよう・・・)

フィーがあたふたしていると、ヴェルフェスが席から立ち上がった
ヘッドフォンを首にかけると、刀を持ち教室から出ていった

(あの人、そんなに弱かったりするのかな? だったら怖いな~)

フィーは震えながらも、自分の武器である弓を手に取る

(だ、大丈夫。きっとなんとかなる)

フィーは深呼吸をすると、集合場所へ向かうため、教室から出ていった




+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。