第二話 転校生
キーンコーンカーンコーン
ルーオブ剣魔術育成学校のチャイムが鳴る
そんな事も気にかけず、ヴェルフェスはのんびりと歩いていた
なんせ、今日は月に一度の朝礼があるからだ
彼にとっては、かなり胸くそ悪いため、こうやってわざと遅刻をするのだが・・・・
「ちっ。まだ終わってねぇのかよ。朝礼・・・」
ヴェルフェスは舌打ちをすると、そのまま校門を飛び越えて、学校の敷地内に入る
この学校の朝礼は、基本外の巨大グラウンドで行われる
今日も外で朝礼を行っていたため、ヴェルフェスにはすぐに分かったのだ
校舎に入ると、彼はヘッドフォンをはずし、首にかける
この学校はランク別にクラスがある
まず、F~Dまでが一階の教室。つぎにC~Aが二階の教室。最後にSランクは三階全てが教室である
なぜSランクの生徒がここまで待遇が良いのかと言うと、将来の優秀な冒険者を育成するためなんだとか
ヴェルフェスは二階へ向かう階段をのぼると、Cランクの教室へ足を運ぶ
教室の前につくと、ヴェルフェスは勢いよく扉を開けた
・・・・・・・・・・そこには、先に先客がいた
外見からして、恐らく女性なのだろう
銀色に輝く滑らかな髪に、まるで空を思わせるような色をした蒼い瞳
肌は病的に白く、汚れのない様に見える
顔も整っており、まさしく美少女の名に相応しいと思わせる
(珍しいな。俺より先に先客がいるなんて・・・・)
ヴェルフェスはその少女の様子を伺った後、自分の席に着く
その少女は何か言いたそうにしていたが、すぐに行動をやめた
首にかけていたヘッドフォンを耳にかけなおすと、カバンから教科書を取りだし、机に入れる
そんな作業をしていると、学校にいつものざわめきが戻ってきた
(朝礼が終わったようだな・・・)
ヴェルフェスは教室の中にある時計を見る。丁度朝礼が終わる時間だ
そうこうしているうちに、ヴェルフェスの教室にも生徒が入ってくる
その生徒達はヴェルフェスを見ると、一瞬ピクっとしたが、特に何もしてこない
そしてこの教室の担任、マリア・ケリアーズが入ってくる
「はい、それでは皆さんに転校生を紹介しますね~」
マリアの特徴であるこののんびりとした声がヴェルフェスは嫌いだ
だから今、彼はその声を耳に入れないようにヘッドフォンをしている
「それでは紹介しまぁす。フィー・レベンシアさんでぇす! どうぞ!!」
まるでテレビの司会のような口調で、マリアは扉に手をかざす
それとほぼ同時に扉が開く
(・・・・・・・・さっきの奴か)
教室に入ってきたのは、先程ヴェルフェスが教室で遭遇した少女だった
「は、はじめまして。フィー・レベンシアです・・・」
ビクビクとまるで何かに怯える小動物のように挨拶をするフィー
ヴェルフェスはヘッドフォンをしているため分からないが、男子が全員歓声を上げている
女子の方も、黄色い声を出して喜んでいる
「えー、それではフィーさんの席は・・・・・ヴェル君の隣です」
マリアがそう言った途端、教室の中に響いていた声が消えた
もちろんヴェルフェスにはそんな状況になっている事はまだ把握していない
「おい、今の聞いたか?」
「ああ。あの劣等品の隣だって」
「うわ~、かわいそう」
「センセー! 私それ反対です!」
「先生、俺もー!」
教室の生徒達が一斉に反対の意見を出す
「み、みんな落ち着いてくださぁい」
マリアがみんなに声をかけるが、生徒達は一行に反対する事を止めない
フィーもこの状況に何がなんだか分からないようだ
「みんな、落ち着いて。これは、先生が考え抜いた結果なんですぅ。だから落ち着いてぇ」
「だめだよセンセー! そんなの絶対ダメ!」
「フィーちゃん、君はほんとにそれでいいの!?」
「そーだよ! フィーちゃんはどう思ってるの!?」
どうやら生徒達はマリアからフィーにターゲットを変えたようだ
「わ、私はどっちでも・・・・・」
フィーはおどおどとした表情で意見を述べる
「いーやダメだ! そいつはフィーちゃんに悪影響を与える!」
「そうよ! あの劣等品の隣なんてだめなの!」
もはやこの騒動は中々収まらなくなってきているようだ
マリアも頭を抱えているし、フィーも困った表情をしている
その時、マリアは何かひらめいた様な表情をした
「ねぇ、フィーちゃん。フィーちゃんはどう思うの?」
「え、ええ! わ、私ですか!?」
「そうだ! フィーちゃんはどう思ってるの!?」
「まさかとは思うけど、そんな事はないわよね!?」
クラスの男女はフィーの意見を聞くために、フィーに注目する
「わ、私は・・・・・その・・・・」
フィーが視線をどこに向けていいのか分からずクラス全員の生徒の顔を見ていると・・・・・
・・・・・・・偶然、ヴェルフェスと目があった
目があった途端、フィーは目を逸らした
・・・・・・・・・・・・・・・・そして
「わ、私。そこでいいです」
小さく、そして何か覚悟を決めた様に、そう呟いた・・・・・・・
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