ご存じですか? 外国への輸出や技術提供に関する新ルール
外国為替や外国貿易などの対外取引に関するルールを定める「外国為替及び外国貿易法(外為法)」。外為法に基づき、対外取引が自由に行われることを基本としながら、国際社会の平和と安全を図る観点から、「安全保障貿易管理」が位置付けられており、日本をはじめとする主要国では、武器や軍事転用可能な物や技術が、安全保障上懸念のある国家やテロリストの手に渡ることを防ぐため、協調して厳格な管理を行っています。
平成21年4月、外為法が一部改正されました。今回の改正では、安全保障上懸念がある技術取引の規制強化や罰則強化が行われたことなどに加え、物の輸出や技術の提供を継続的に行う者に対する新しいルールがスタートします。
国際社会の安全を守る「安全保障貿易管理制度」の仕組み
外為法の目的は、貿易などの対外取引の正常な発展並びに日本又は国際社会の平和及び安全を期し、もって国際収支の均衡及び通貨の安定を図るとともに日本経済の健全な発展に寄与することです。その目的の一つに「安全保障貿易管理」が位置付けられており、大量破壊兵器などの開発などのために利用・転用されるおそれのあるものとして政令で定められた物と技術について、輸出や提供などの対外取引を行う場合は、経済産業大臣の許可を得る必要があります。
外為法では、大きく分けて「リスト規制」、「大量破壊兵器キャッチオール規制」、「通常兵器補完的輸出規制」があり、それぞれ次のとおり規制されています。
| リスト規制 | 国際的な合意に基づき、武器や大量破壊兵器の開発などに用いられるおそれの高いものをリスト化(※)。その性能(スペック)に該当するものの輸出や技術提供について、用途や需要者に関係なく、経済産業大臣の許可が必要。全地域向けが対象。
(※)輸出貿易管理令別表第1の1の項から15の項及び外国為替令別表の1の項から15の項。 |
主なものの例としては、以下のとおり。 (1)武器 鉄砲、火薬類、軍用車両 (2)原子力 数値制御工作機械、炭素繊維、周波数変換器、真空ポンプ、直流電源装置、測定装置 (3)-1 化学兵器 弁、ポンプ、バルブ、毒性物質の原料(塩化ホスホリル、シアン化ナトリウムなど)、耐食性の熱交換器、反応器、貯蔵容器など (3)-2 生物兵器 クロスフローろ過器、凍結乾燥機、密閉式発酵槽 (4)ミサイル 人造黒鉛、二軸式混合機、アルミニウム粉、ジェットミル、加速度計、振動試験装置 (5)先端材料 炭素繊維成型品、ニッケル・チタン合金 (6)材料加工 軸受、ロボット (7)エレクトロニクス コンピュータ、集積回路、半導体製造装置 (8)コンピュータ 高性能電子計算機 (9)通信関連 光ファイバー、暗号装置 (10)センサー・レーザー レーダー、赤外線カメラ (11)航法関係 慣性航法装置、衛星航法システムからの電波受信装置等 (12)海洋関連 水中用のカメラ・ロボット等 (13)推進装置 ガスタービンエンジン、人工衛星 (14)その他 粉末状の金属燃料、電気制動シャッター等 (15)機微品目 電波の吸収材、水中探知装置等 |
|---|---|---|
| 大量破壊兵器キャッチオール規制 | リスト規制には該当しない場合であっても、相手先の用途、需要者の情報などから判断して、輸出しようとする物や提供しようとする技術が大量破壊兵器の開発などのために用いられるおそれがある場合は、経済産業大臣の許可が必要。食料品や木材などを除くすべて(※1)が対象。ホワイト国(※2)を除く全地域向けが対象。
(※1)輸出貿易管理令別表第1の16の項及び外国為替令別表の16の項。 (※2)アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、大韓民国、ルクセンブルク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、アメリカ合衆国。 |
(用途要件) 物や技術が、大量破壊兵器の開発などに利用されるおそれがあるか。 (需要者要件) 相手先や最終利用者が、大量破壊兵器の開発などを行っている(又は行った)か。「外国ユーザーリスト」(※)なども参照。 (インフォーム要件) 経済産業大臣から許可の申請をすべき旨の通知を受けたか。 以上の要件に当たる場合は、経済産業大臣の許可が必要。 (※)物や技術が大量破壊兵器の開発などに用いられるおそれがある場合を示すため、経済産業省が公表しているもの。このリストに掲載されている需要者が関与する場合には、特に慎重に確認・組織内審査されることが必要。 |
| 通常兵器補完的輸出規制 | リスト規制には該当しない場合であっても、輸出しようとする物や提供しようとする技術が通常兵器の開発などのために用いられるおそれがある場合は、経済産業大臣の許可が必要。食料品や木材などを除くすべてが対象。国連武器禁輸国・地域(※)向けが対象。ただし、特定の品目については、ホワイト国を除く全地域向けが対象。 (※)アフガニスタン、コンゴ民主共和国、コートジボワール、イラク、レバノン、リベリア、北朝鮮、シエラレオネ、ソマリア、スーダン、エリトリア |
(用途要件) 物や技術が、通常兵器の開発などに利用されるおそれがあるか。 (インフォーム要件) 経済産業大臣から許可の申請をすべき旨の通知を受けたか。 以上の要件に当たる場合は、経済産業大臣の許可が必要。 |
なお、外為法では、手作りの携行品、旧式や無償の資機材を、ハンドキャリーで持ち出すことも「輸出」と見なされています。
改正外為法により技術取引に関する規制が見直されました
近年は、グローバル化や情報技術の発達が進み、留学生の受け入れや外国との共同研究なども頻繁に行われるようになっていますが、そうした日常的な活動の中にも、外為法の規制対象となり得る技術提供が含まれています。例えば、外国に向けて、設計図や仕様書、マニュアルなどの技術情報を電子メールやFAXなどで送ったり、CD・USBメモリなどに記録提供したり、研究指導や施設見学などで知識や技術を教えたりすることも、外為法では「技術提供」と見なされています。このように、「技術提供」は日本国内でも発生する可能性があります。提供する技術がリスト規制に該当している場合や、相手が外国において大量破壊兵器の開発などのために用いられるおそれがある場合は、経済産業大臣の許可を得てから提供する必要があります。
北朝鮮によるミサイル発射や核実験など、国際的な安全保障をめぐる環境が厳しくなる中、国際連合安全保障理事会決議などにおいても安全保障貿易管理の厳格化の要請が高まっています。国境を越えた人の移動の活発化や情報化の進展により、安全保障関連の物や技術が外国へ流出する懸念が増大し、また、我が国企業等による不正輸出の事案が続発していました。
そこで平成21年4月、技術取引規制の見直しや罰則強化などを図るため、外為法の一部改正が行われました。平成21年11月までは、居住者(※1)から非居住者(※2)に対する技術提供のみが規制対象でしたが、同年11月以降、外国に向けて安全保障上懸念のある技術を提供する場合はすべて規制対象となりました。
また、安全保障上懸念のある技術の対外取引に伴って行われる技術の持ち出し行為自体も補完的に規制対象となっています(ただし、取引の許可を取得していれば除外されます。)。
これらは、国際的な人材交流がますます活発化していくことを前提として、我が国の対外経済活動の健全な発展のための基盤を整備すべく、安全保障上機微な技術の懸念国への流出を防止するために導入された枠組みです。
※1 居住者とは、日本に居住する日本人、入国後6か月以上経過した外国人、日本にある事務所に勤務する外国人、日本にある日本法人・外国法人の支店など
※2 非居住者とは、外国に2年以上滞在する日本人、外国にある事務所に勤務する目的で出国し外国に滞在する日本人、外国に居住する外国人、外国にある外国法人、日本法人の外国支店など
平成22年4月1日から輸出者に対する新ルールがスタート
外為法の改正により、平成22年4月1日から、新たなルールとして「輸出者等遵守基準」がスタートしました。これは、継続的に輸出等を行う輸出者等が遵守すべき事項を経済産業大臣が定め、当該事項に従って輸出や技術提供を行うことを輸出者等に求める仕組みです。近年の外為法違反に加え、物の輸出や技術の提供に係る該非判定に際してデータを改ざんするなどの不正な行為が発生していることを背景に、違法な輸出・技術提供の未然防止のために導入されました。
海外の自社工場や得意先に自社の製品を輸出している、あるいは、外国の研究機関との間で共同研究を行い、図面やデータを送付しているなど、反復継続して輸出や技術提供を行う企業・研究機関などは、下記のIの基準を遵守することが求められます。また、特定重要貨物等(リスト規制品・技術)を扱う輸出者等は、大量破壊兵器などに転用されるおそれが大きいので、Iの基準に加え、IIの基準についても遵守する必要があります。
輸出者等遵守基準
| I すべての輸出者等が遵守する基準(輸出者等遵守基準を定める省令第1条第1項) |
(1)該非確認(輸出しようとする物や提供しようとする技術がリスト規制品・技術に該当するか否かを確認すること)についての責任者を定めること。
(2)輸出や技術提供業務に従事する者に対し、最新の法令の周知、その他関係法令の規定を遵守させるために必要な指導を行うこと。 |
|---|---|
| II 特定重要貨物等(リスト規制貨物・技術)を扱う場合に遵守する基準(輸出者等遵守基準を定める省令第1条第2項) |
(1)組織の代表者を輸出管理の責任者とすること。 (2)組織内の輸出管理体制(業務分担・責任関係)を定めること。 (3)該非確認に関する手続を定めること。 (4)リスト規制品・技術の輸出や提供に当たり、用途確認、需要者確認を行う手続を定め、手続に従って確認を行うこと。 (5)輸出や提供時に、輸出又は提供しようとするリスト規制品・技術が該非を確認した物や技術と一致しているか確認を行うこと。 (6)輸出管理の監査手続を定め、実施するよう努めること。 (7)輸出管理の責任者及び従事者に対して、輸出や技術提供の業務の適正な実施のため必要な研修を行うよう努めること。 (8)関連文書を適切な期間保存するよう努めること。 (9)法令違反をしたとき又は違反したおそれがあるときは、速やかに経済産業大臣に報告し、再発防止のために必要な措置を講ずること。 |
知識不足や注意不足による「法令違反」に注意
規制対象となっている物や技術を、無許可で輸出・提供してしまうと、外為法違反となり罰せられる場合があります。
| 刑事罰 | ・最大で1,000万円以下の罰金・最大で10年以下の懲役 |
|---|---|
| 行政制裁 | ・最大で3年以内の、輸出・技術提供の禁止 |
外為法の罰則は、実際に違反行為を行った関係者(個人)のみならず、法人自体も対象となり得ます。万が一、外為法違反に問われた場合は、組織にとっても大きなリスクとなるおそれがあります。さらに、実際に核兵器、生物・化学兵器やミサイルの開発などのために用いられた場合、組織のみならず日本に対するダメージは、計り知れません。
輸出者等遵守基準は、違法な輸出・技術提供を招かないためにも遵守することが必要です。適正な輸出や技術提供が行われることを確保するため、輸出者等に対して経済産業大臣が指導・助言を行うことがあります。その上で、輸出者等遵守基準に違反していると認められた場合は経済産業大臣が勧告を行い、勧告に従わなかった場合は命令を行います。命令に従わなかった場合は、最大で50万円以下の罰金、最大で6か月以下の懲役に罰せられる場合があります。
皆さんの会社や大学の輸出管理体制を見直しましょう
国際的な平和や安全の維持を妨げるおそれのある輸出や技術提供となるものを事前にチェックし、懸念のある行為を行わないこと。それは、輸出者等の皆さんと皆さんの家族や友人が安心・安全に暮らせるために、会社、大学、日本、世界のために、一人一人の意識と行動によって成立する取組です。
大量破壊兵器の開発国やテロリストは、輸出管理が不十分な組織を狙うかもしれませんし、中小企業や大学・研究機関であっても例外ではありません。外為法や安全保障貿易管理について、「知識」として知っているだけでなく、組織として「実際に運用・対応」していく必要があります。外国との間で物の輸出や技術提供などのやりとりがある輸出者等の皆さんは、輸出者等遵守基準を満たす自主管理体制作りに取り組んでいきましょう。
経済産業省では、中小企業、大学・研究機関を含む輸出者などの安全保障貿易管理の適正化を一層推進し、輸出者等遵守基準などに対応した輸出管理体制の構築に向けて、各地で「適格説明会」や「輸出者等遵守基準説明会~輸出者等遵守基準等の導入に向けて~」を開催している他、各種手続を支援する様々な情報・サービスを経済産業省安全保障貿易管理ホームページなどで提供していますので、ぜひ活用してください。
輸出管理体制作りのステップ ~あなたの会社や大学はどの段階ですか???~
<第1段階:すべての輸出者等が最低限満たすべき段階>
(1)該非確認責任者の選定
(2)経済産業省が提供する情報
・各種サービスの利用
・各種説明会への参加
・経済産業省安全保障貿易管理ホームページのチェック
<第2段階:リスト規制品・技術を扱う輸出者等が最低限満たすべき段階>
(1)組織を代表する者を輸出管理の責任者に選任、組織内の輸出管理体制(業務分担・責任関係)の明確化
(2)該非確認、用途及び需要者の確認の手続の明確化と実施
(3)輸出管理体制の自己確認・自己改善(監査・研修・文書保存)の実施
(4)経済産業省への報告及び再発防止措置への実施
<第3段階:輸出者等遵守基準より高レベルの輸出管理体制を整備した段階>
(1)輸出管理内部規程の策定・経済産業大臣への届出(※1)
(2)包括許可制度(※2)の取得
(3)子会社・関連会社への指導
(※1)公表を希望する場合は、自主管理体制を整えた組織(企業、大学・研究機関など)として、経済産業省安全保障貿易管理ホームページにて公表。
(※2)許可を一件ごとに取得することなく、一定の範囲について包括的に取得できる制度。
最終更新平成23年12月8日
(取材協力:経済産業省 文責:政府広報オンライン)
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