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福島女子高生追った小説 悲しいけど実話

 福島第1原発事故の影響を受けた福島県の女子高生4人の苦悩と葛藤の日々をつづったノンフィクション小説「ピエロ~夜明け前~」(近代映画社)が注目を集めている。先月18日にセブンネットショッピングなどで先行発売したところ、ツイッターなどを中心に大反響。約2週間のネット販売で1万部以上を売り上げた。出版関係者は「ネット販売で1万部は異例」と驚く。また、関係者によると、既に民放キー局によるテレビアニメ化や大手出版社からの漫画化が検討されているという。

 東日本大震災が発生したあの日が全てを変えてしまった。作品は、震災後も放射能汚染が懸念される中、福島県内の女子高に通う親友4人(ともに3年)を追った物語。昨年5月から今年3月までの出来事がリアルに描かれている。小説とうたっており、登場人物などは仮名だが、描かれている内容は事実だ。現実と将来の不安を抱きながら生活する4人の姿が描かれている。

 昨年6月、その中の1人、福島県議会議員の娘竹中萌さん(17=仮名)は両親の勧めにより、都内へ一時避難した。そしてある日、婚約者で国会議員の息子の大学生から人的な風評被害を受けた。「この街に住んでいた女は、健康被害が出るかもしれない。影響を受けた子供が生まれるかもしれないから…この話(結婚)はなしにしてくれ」。その1カ月後。竹中さんは自宅の湯船で手首と首をカミソリで切り、大量出血による失血死で死亡した。ただ、地元では竹中さんの死因は「病死」と伝えられているという。

 同作の発売後、ツイッターやフェイスブックなどのインターネットを中心に大きな反響や波紋が広がった。特に高校生ら10代の反響が多く、ネット販売では約2週間で1万部以上を売り上げた。出版関係者は「ネット販売で1万部は異例。現在、増刷中です」と話した。

 震災から1年以上が経過した今も、福島県民の16万317人(2日現在)は避難生活を強いられており、風評被害と闘いながら先の見えない不安な日々を送っている。出版関係者は「震災後、福島で何があって、どういうことが起きているのかということを全国の中高生に再度考えてもらいたい」と訴えた。原作者の小林照弘氏は「真実を伝えたかった。明けない夜はない。必ず夜明けは来る」とコメントした。

 また、関係者によると、同作は既に複数の民放キー局がテレビアニメ化、大手出版社が漫画化を検討しているという。同作には同県いわき市出身の歌手Lucy(23)が歌う小説初の主題歌「夜明け」が挿入されている。【峯岸佑樹】

 ◆福島第1原発周辺の町村の現状 同原発が立地する大熊町(警戒区域)の約7割は、年間放射線量が50ミリシーベルト以上の「帰還困難区域」に指定される見通しで、早期帰還は難しい状況。全町民約1万人は全国に避難。双葉町(同区域)の町民約7000人も41都道府県に避難し、役場機能を移転した埼玉県加須市の旧県立騎西高で約500人が避難生活を続ける。富岡町(同区域)は帰還困難区域以外の除染終了予定の14年3月まで帰還は困難とみている。

 [2012年5月4日8時53分 紙面から]







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