つながる:ソーシャルメディアと記者 誤解多い「放射線の影響」=斗ケ沢秀俊
毎日新聞 2012年05月05日 東京朝刊
2月下旬、「週刊文春」が「福島県から北海道に避難した子ども2人が甲状腺がんの疑い」という記事を掲載した。私はツイッターで「福島第1原発事故から1年で放射線に起因する甲状腺がんが発生することはない。文春の記事は、事故と関連があるかのように印象付けている点で、勉強不足、または売らんがための記事だ」と批判した。私のツイートを見てくれているフォロワー(現在5900人)の何人かがそれをツイートしてくれ、一気に広がった。フォロワーの医師がすぐに、甲状腺がんの詳細な説明付きで「原発事故とは無関係」と断じる連続ツイートを返してくれた。一連のツイートは誰かの手によって、誰もが読めるようにまとめられた。ツイッターの魅力である「双方向性」と「情報拡散の広さと速さ」を物語るエピソードだ。
ツイッターを始めたのは昨年3月下旬。政府が放射線の影響について「ただちに健康に影響しない」と紋切り型の説明しかしなかったため過剰な不安が広がっていた。3月18日に「記者の目」で「現時点では健康影響はない」と書いたものの、本業は環境活動を実践する部署の責任者だから、通常の記事は書けない。そこでツイッターでの発信を思い立った。