1925年(大正14年)に起きた北但大震災の復興建築の一つ「豊岡劇場」(兵庫県豊岡市元町)が、今月末で閉館されることになった。但馬で唯一の映画館だったが、劇場の完全デジタル化など映画興行の変化を前に継続を断念したという。
北但大震災で焼けた花街の一角に27年(昭和2年)ごろ、芝居小屋としてオープンした。戦時中は軍の倉庫として使用されたが、昭和20年代の後半に客席を改装し、洋画を中心に上映する映画館になった。一時は周辺に計4館の映画館があったが、豊岡劇場以外はいずれも閉館していた。
オーナーの山崎浩作さん(49)は3代目。東京で会社員をしていた2006年、副業をしながら映画館を存続させていた父盛男さんが他界し、帰郷を決意。全国的に個人経営の映画館が閉じられる中、同劇場で約半世紀勤める映写技師らと共に上映を続けてきた。近年は約200席と約70席ある劇場にそれぞれ観客が1人という回も少なくなく赤字状態が続いていた。
決定的だったのは、配給会社が完全デジタル化する意向を固めたこと。映写機の買い換えや営業形態の変更なども検討したが、見通しは立たなかった。浩作さんは「但馬に映画館を残せずつらい。最終日まで気持ちよくお客さんを迎えたい」と話している。豊岡劇場TEL0796・22・2062(長嶺麻子)
(2012/03/16 09:15)
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