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【賢者に学ぶ】哲学者・適菜収 素人の暴走と価値の錯乱
最近の若者の言葉遣いで気になるのが、すぐに《神》を持ち出すことだ。ネット上には「神だと思うロックバンド」「神だと思うアニメ」みたいな記事が溢(あふ)れている。「神動画」に「神アプリ」…。
カリスマは「神の賜物(たまもの)」という神学上の概念だが、今では「カリスマ・シェフ」がコンビニ弁当をプロデュースしている。《神》もずいぶん安くなったものだ。
19世紀ドイツの哲学者フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェは「神は死んだ」と言った。その意味は、西欧において価値の根拠とされてきた《神の視点=普遍的真理》を設定することが理論上不可能になったということだ。にもかかわらず、《神》は平等主義や民主主義といった近代イデオロギーに姿を変えて私たちを支配している。その根底にあるのは「神との距離において人間は等価である」という信仰だ。
近代大衆社会はこうしたキリスト教本能をもつがゆえに、あらゆる格差、階層的なものを破壊する。また、《本当に価値があるもの》《偉大なもの》《美しいもの》は貶(おとし)められ、《つまらないもの》《新奇なもの》《卑小なもの》が評価されるようになる。その結果、芸術家気取りのゲテモノ、半可通、あらゆる領域における素人が権力をもつようになってしまった。
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