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関税・外国為替等審議会 第18回外国為替等分科会議事録

国際局調査課

平成23年12月8日(木)

財務省本庁舎4階 第3特別会議室

議 事

−事務局報告−

  1. 最近の国際金融情勢について
    • マーケットの動き
    • 欧州各国の現状と債務危機への対応
    • 最近のG20等における議論
    • 開発に関する最近のトピック
    • アジアにおける金融協力
    • 中国経済及び韓国経済
  2. 国際収支マニュアル第6版への移行に伴う報告省令改正について
  3. 事業仕分けを踏まえた外国為替資金特別会計の対応

関税・外国為替等審議会 第18回外国為替等分科会

午後1時02分開会

○伊藤分科会長時間が参りましたので、ただいまから第18回外国為替等分科会を開催させていただきます。

早速でございますけれども、前回の分科会からこれまで審議会委員を務めていただきました奥正之委員、川島千裕委員が御退任され、新たに永易克典委員、遅れてお見えになりますが、仁平章委員が御就任されましたので、御報告申し上げます。

また、事務局の側も人事異動がございましたので、木下国際局長より事務局を御紹介させていただきます。

○木下国際局長国際局長の木下でございます。よろしくお願いいたします。

これまでも委員の皆様から非常に貴重な御意見を伺ってきたところでございますけれども、今年も8月以降いろいろな話題が多く、国際局も例年になく忙しい思いをしておりまして、ほとんどみな夏休みもとれていない状況かと思います。

大変遅くなりましたけれども、この場を借りて簡単に御紹介させていただきますと、私の左から、調査課長の目黒、この審議会を担当させていただいております。それから、山崎国際局次長、主にG7、G20を担当しております。それから、高岡審議官、バイの国際関係や、マネーローンダリング・テロ資金供与対策などを担当しております。宮原国際機構課長、市川為替市場課長、赤松参事官、柴田国際調整室長、それから和家外国為替室長でございます。

右に移りまして、審議官の門間、主にアジアとの関係や開発関係を担当しております。それから、総務課長の土井、栗原地域協力課長、岡村開発政策課長、下田国際機構課企画官、田原資金管理室長でございます。

何とぞよろしくお願いいたします。

○伊藤分科会長ありがとうございました。

本日は、事務局の説明はなるべく短く、議論の時間を半分ぐらいはとるようにお願いしておりますので、後ほど皆さんから活発な御質問、御意見を期待しております。

では、最近の国際金融情勢について、簡潔によろしくお願いいたします。

○市川為替市場課長それでは、まずマーケットの動きから御説明させていただきます。配付資料2のマーケットの動き、2ページから御覧ください。ドル円相場を書いてございます。前回6月の審議会以降、幾つかの重要な局面がございました。まず、7月初に米国の雇用統計に、一時的ではあるのですが、大幅な落ち込みが発生しました。欧州ではギリシャのプログラムや既存の救済スキームにてこ入れが必要とされ、さらには、アメリカでも政府の債務上限問題の解決がぎりぎりまでもつれ込んだ。7月はこういう月でございまして、こうしたことが市場の思惑を呼び込みまして、1カ月間で、こちらに御覧いただきますように、ドル円相場は81円前後から77円前後に急速な円高が進みました。このため、当局は8月4日に4兆円規模の円売り・ドル買い介入を実施したところでございますが、その直後に米国債の格下げという予想外の事態があったため、すぐに介入前の水準に戻ってしまった。ただ、市場には一定の牽制効果を残すことができたと考えております。その後、財務省は8月24日に円高対応緊急パッケージを発表、これは後ほど御説明します。9月以降は、G7、G20と一連の国際会議において欧州債務問題について欧州の取り組みを促すとともに、投機的な円高が我が国経済に与える悪影響について説明に努めたところでございます。

こうした流れでございますが、4ページに主要なイベントを日程表として整理してございます。これは後ほど御覧いただければと存じます。

また、5ページは8月の円高対応緊急パッケージについての資料でございますが、柱は2つでございます。すなわち、最初のほう、1つは上から4行目の「基本枠組」というところにありますとおり、外為特会はドル資金を国際協力銀行に融資し、活用してもらう。国際協力銀行は、これを企業の海外資産取得プロジェクトにコ・ファイナンスするという、1,000億ドル(8兆円)の緊急ファシリティでございます。これは、円高メリットを活用するとともに、この融資によって民間セクターによる円資金の外貨転換を促す。すなわち、円安効果も期待するという施策でございます。もう1つの下のほうの柱は、東京市場の主要な金融機関に自己ポジションの報告を求めてモニタリングを強化するものでございます。これについて、2カ所点線で囲ってございますが、下の自己ポジション報告は12月末まで延長いたしました。また、上の円高対応緊急ファシリティは、反響が大きかったため、10月末に取りまとめられました政府全体の円高対策の中では8兆円規模から10兆円に拡大されることとなりました。

次に、欧州債務問題につきましては、この後で柴田室長から詳しい説明がございますが、ざっと申し上げれば、10月26日には欧州の首脳会合において銀行の資本増強やEFSF(European Financial Stability Facility)のレバレッジなど重要な決定がなされております。しかしながら、8ページを御覧いただきたいのでございますが、これは10月半ばからのドル円の動きでございます。このように、10月26日の欧州首脳会合などユーロ関連の進展で、ユーロは値上がりする一方で、ドル円は75円台までドル安となり、戦後最安値を更新してしまいました。こうした背景の下、8ページにありますとおり、当局は10月31日に今年3度目となります為替介入に踏み切りました。それ以降の相場の動きは御覧のとおりでございます。今回の介入は、市場で輸出勢のドル売りをかなり吸収したというふうに評価されております。また、11月以降の介入効果の持続につきましては、ユーロ売り・ドル買いというユーロの流れに助けられているだけではなくて、短期的な円高期待をかなり弱めることができたのではないかという感触がございます。

なお、今回の為替介入につきましては、31日の朝、安住大臣から、先ほどから為替介入を開始したということだけを発表していただいておりまして、11月に入ってから市場では覆面介入が続いているのではないかという疑問が呈されているのですが、これについて一切ノーコメントを続けております。介入規模につきましては、11月末に、10月28日から1カ月分の介入円建て金額として9兆1,000億円弱であるということを明らかにしております。データは次のページにありますが、実施日や通貨ペアについては2月に予定される四半期公表分までは開示しないことになっております。

今後の為替市場への対応でございますが、これはまさに動向を注視して適切に対応することに尽きるわけでございまして、安住大臣からは、記者会見等の折に質問があれば、引き続き投機的な動きに対しては躊躇なく行動するというお答えをいただいているところでございます。

資料はほかにも多々つけてございますが、これは後ほど御覧いただければ幸いでございます。

以上でございます。

○伊藤分科会長ありがとうございました。

続いてお願いします。

○柴田国際調整室長よろしくお願い申し上げます。

それでは、ページ16に行っていただきたいと思います。「U.欧州各国の現状と債務危機への対応」とある部分でございます。

早速ですが、1枚おめくりいただき、17ページに行っていただきたいと思います。現在の欧州債務危機のそもそもの発端はギリシャでございました。2009年10月に政権交代が起きまして、その政権交代の結果と申しますか、財政が公表されている数字より思った以上に悪いことが発覚した、それが契機でございます。その後、ギリシャの国債に対する信認が大きく低下して、紆余曲折あった末、ここにありますような第1次ギリシャ支援が決定されたということでございます。それが2010年5月でございまして、真ん中の図柄にございますように、3年間で計1,100億ユーロの支援でございまして、2013年までの支援を見込んでいるということでございます。これは、IMFとユーロの加盟国2者の共同の支援でございまして、左側、ユーロ加盟国、バイのそれぞれの国が拠出するものでございますが、これが合計で800億ユーロ。それから、IMFが300億ユーロということで、合計1,100億ユーロでございます。その支援の見返り、対価といたしまして、下の枠にございますように、ギリシャでも大幅な財政再建策等を約束しているということでございまして、GDP比マイナス15.4%の赤字をマイナス2.6%にまで引き下げることを約束しているということで、付加価値税の引き上げ等をやっていこうということでございます。また、成長促進策は、持続的な財政のためには成長という観点も重要であることから、労働市場の改革、それから公営企業の改革等に取り組んでいくことを約束しているということでございます。

続きまして、次の18ページはこれを細かくしたものでございますので、簡単に一言だけ。上の枠の2つ目のポツですが、この支援の前提となっている見通しでございます。ギリシャは2012年初めまで国債による資金調達は不要と。言いかえれば、2012年からは自前である程度国債で資金調達ができることを前提としていたプログラムでございます。このことが後で御説明します第2次支援とも関連してまいりますので、その点だけここのページについては御説明させていただきます。

続きまして、19ページでございます。このギリシャ支援自体はヨーロッパ全体の仕組みというものがない中で決められたわけでございますが、やはりユーロ圏、ヨーロッパの仕組みが必要だろうという議論が同時並行的にございまして、その結果作られたのがここの図柄にあるような仕組みでございます。具体的には、真ん中にございますEFSFというものでございますが、これはユーロ圏17カ国の仕組みで、融資額が最大で4,400億ユーロという枠を確保してございます。その左下にございますように、その4,400億ユーロというのはEFSFが債券を発行して資金調達をすることによって得られるものですが、その際にユーロ加盟各国が政府保証を出し、その保証を裏付けにトリプルAの格付で資金調達ができる、そういう仕組みでございます。EFSFで4,400億ユーロ、それから、左にございますEU、これは27カ国の仕組みでございますが、それで600億ユーロ、合わせてヨーロッパ全体で5,000億ユーロ。それに、右側にございますが、IMFで2,500億ユーロまで出すということで、合計7,500億ユーロの枠組みを2010年5月に打ち出したということでございます。

続きまして、20ページですが、このEFSFを使って支援している国はアイルランドとポルトガルがございます。現在この両国についてプログラムは順調に行われている状態でございます。簡単に御説明いたしますが、アイルランドにつきましては、20ページの真ん中ほどにございますように、3年間で675億ユーロの支援を決定しているところでございます。

続きまして、21ページは飛ばさせていただきまして、22ページのポルトガルでございます。こちらは本年に入りましてから5月頃に決定したものでございます。実を申しますと、この頃には既に先ほどのギリシャはプログラムが組まれたにもかかわらず状況がさらに悪化する事態になっておりまして、そういったヨーロッパの情勢の中でポルトガルのプログラムが作られるに至ったということでございます。3年間で約780億ユーロの支援ということで、EUとEFSFが260億ユーロずつ、合わせて520億ユーロ、それにIMF分が260億ユーロ乗っかって780億ユーロという姿でございます。

続きまして、23ページを飛ばしていただきまして、24ページに移らせていただきたいと思います。先ほど若干申し上げましたが、2011年の4月、5月ごろにはギリシャの状況が再び悪化した。これは、2010年5月に決められました財政再建策等が本当にちゃんと実施できるのかという市場の疑惑、疑念が高まってきたことを受けたものでございます。その結果、ギリシャの国債利回りがどんどん高まる中にあって、先ほど申し上げた2012年から自前である程度国債で資金を調達できるという前提条件が到底達成できないのではないかという雲行きになってきたということでございます。こうした中で、ここにございます第2次支援パッケージが7月21日のユーロ圏の首脳会合で合意されたということでございます。その内容を下段の枠に書かせていただいてございますが、1つは、IMF、ユーロ圏加盟国による公的支援で1,090億ユーロを出す。それに加えまして民間金融機関の貢献ということでございますが、これはドイツが非常に強く主張して入ったと言われているものでございまして、この分で370億ユーロ程度でございます。その中身は下に矢印の後に書いてございますように、ギリシャの国債を持っている投資家が割引現在価値ベースで21%のヘアカットに相当する新債券と旧債券を交換する、そういう債券交換でございます。そのギリシャ第2次支援パッケージと合わせまして、下の枠の下段にございますEFSFの機能強化もあわせて7月21日の首脳会合では合意されてございます。ポイントは、ここにありますように3つでございまして、1つは、EFSFというユーロ圏の救済基金と申しましょうか、救済システムがイタリアとかの国債を流通市場で買えるようにすること。それから、現実のファイナンシングギャップが生じる前であっても予防的に対応できるようにすることが2点目。3点目でございますが、プログラムのない国も含めて、政府を通じて金融機関への資本増強をできるようにする。そういう内容でございます。

次ページ、25ページをおめくりください。ただいま申し上げましたような第2次ギリシャ支援策等を決定、打ち出して、しばらくマーケットは安定していたところでございますけれども、結局、民間の貢献を含めたこともございまして、それがほかの国にも及ぶのではないか、具体的にはイタリアとかスペインにも及ぶのではないかという危惧感、疑念が高まってきたということでございます。その結果、8月に入りますと、イタリア、スペイン、ひいてはフランスといった大き目の国にまで動揺が波及したということでございます。これを受け、これらの国は、ヨーロッパで言えばバカンスシーズンであるにも関わらず大統領が戻ってくるとかいたしまして、緊急の財政緊縮措置を発表したということでございます。中身といたしましては、ここにあるとおり、イタリアにつきましては財政均衡目標年次を1年前倒しするとか、スペインについては、2つ目のポツにございますように、財政均衡規定を憲法に盛り込むでございますとか、フランスにおいても120億ユーロ程度の財政再建策を発表しているということでございます。下段の参考でございますが、こうした財政再建の動きは足元でも引き続いておりまして、10月以降も、イタリア、フランスなどで追加的な財政再建策を発表しているということでございます。

26ページをおめくりください。先ほど第2次ギリシャ支援を打ち出したと申し上げましたが、その後ヨーロッパ経済の減速感等も見られる中で、この7月の2次支援パッケージではちょっと古い、ちょっと足りないということになりまして、修正したギリシャの支援パッケージ等を打ち出したのが10月26日でございます。枠の中に「1.ギリシャ支援」、その(2)第2次支援プログラムとございますが、これが修正したバージョンでございます。2つ目のポツでございますが、2020年までにギリシャの債務残高を対GDP比120%にまで下げる。ここを目指して、民間投資家の債券交換の債務ヘアカットが21%とされていたものを50%にすることを呼びかけてございます。これは自発的な債券交換という形でございまして、いわゆるデフォルトを避けるための措置でございますが、この自発的な債券交換を2012年初頭には開始するということでございます。

それから、危機がイタリア等にも広がる中で、いかに危機を遮断するか、ファイアウォールを築いていくかということが重要でございまして、2.にありますようなレバレッジでございます。これは、EFSFのお金を種銭にして民間資金を呼び込んで資金の総額を増やしていこうというものでございまして、2つの策に合意してございます。1つは、イタリア等が国債を発行する際にEFSFが20%とか30%の部分保証を出すことによって普通の投資家が買い易くする狙い。2つ目でございますが、特別目的事業体(SPV)を作って、そこにEFSFと金融機関、投資家の資金を集めるということで、EFSFが劣後分を引き受けることによって投資家の資金を集めようというものでございます。

もう1つ合意されたことが銀行の資本増強でございます。ヨーロッパ、フランスの銀行等がイタリア等の国債をたくさん持っている中にあって、銀行に対する信頼も揺れてきた状況で、ここにありますような資本増強策を打ち出したということでございます。Core Tier1ベースで9%という自己資本比率を2012年6月30日までに達成することを掲げたということでして、暫定値ではございますが、1,065億ユーロ程度の額が必要ということでございます。どうやって自己資本を増強するかということですが、まず民間資金によって調達、それができなければ各国政府、それでもだめだったらEFSFの融資を使う、こういうオーダーで資金調達することが決められております。あわせて、銀行による貸し渋りを防ぐために、銀行の資金調達に各国が保証をつける措置も検討していくということが合意されています。

以上が概ねこれまでの流れでございます。ヨーロッパ時間で本日、そして明日にかけて首脳会合が予定されておりまして、ここでどのような具体策を打ち出していくことができるか。それが足元の関心事項といいますか、注目を持って市場が見守っている状況にございます。

簡単ではございますが、以上で御説明とさせていただきます。

○伊藤分科会長ありがとうございました。

続いて、どうぞ。

○宮原国際機構課長それでは、35ページ以降、「最近のG20等における議論」ということで、これもできるだけ簡潔に御紹介を申し上げたいと思います。

36ページを御覧いただきますと、今年のG20サミットはフランス・カンヌで行われましたが、この主要議題ということで、やや大ざっぱな整理ですが、5つ大きな議論があったかと思っております。

次の37ページへ行っていただきますと、1番目の「強固で持続可能かつ均衡ある成長」に関してですが、カンヌ・サミットの成果文書の主要なもののうちカンヌ・アクションプランがございまして、そこに成果がまとめられたということでございます。御覧いただきますとおり、まず短期の対応が37ページに引用している部分でございますが、38ページに引用させていただいております中長期的な措置と2つに分けて整理されました。それぞれ短期においては、パラグラフ2の引用に御覧いただけますように、G20メンバーがやるべきことということで、先進国、ユーロ圏の国々、それから米国、日本と、主なところは御覧いただくような内容のコミットをしているということでございます。今年はユーロ圏の危機に大きな影響を受けたG20であったと思います。その反映で財政の健全化に非常に大きな焦点が当たりまして、短期のコミットメントにおいても財政に関するものが相当盛り込まれたということでございます。それから、パラグラフ3の引用にありますように、為替レートシステムについてはこのような合意でした。中国については、柔軟化の取り組みを続ける、より加速する、そういう中国の決意を歓迎するという表現になっております。

38ページは中長期的なもの。ここは、当然でございますが、財政の健全化の話。それから、均衡ある成長という議論の始まりであった、リーマン・ショック後、世界経済のリバランスを進めようという議論、そういった点についての記述が(2)「経常収支黒字国」云々以下でございます。日本につきましては、下のパラグラフ2のb)にございますように、近年において民間需要が相対的に弱いことを認識しつつ、民間の消費、投資を促進するというコミットになっております。ポイントは、経常黒字の大きい国という位置付けとして、先進国にはドイツがありまして、一方で我が国は、近年のデータを見ましても、むしろ問題は経常黒字ではなく民需が弱いということなので、きちっとそこにフォーカスを当てて、そういう問題意識で内需喚起の取り組みを進めるというコミットになっているということでございます。

続きまして、39ページ、40ページは、国別コミットメントというプロセスで日本が何をコミットしたかということでございます。昨年のソウル・サミットのときと同様、加盟国がそれぞれ自分の国は何をするかという少し具体的なコミットメントを1ページぐらいの表にまとめて、それを成果の一部にするという作業を今年もいたしました。そこにおいて日本が何をコミットしたかというのを御紹介としてつけさせていただきました。新成長戦略でありますとか財政運営戦略、そういった日本政府が昨年来決定をしている中核的な政策運営方針、内容的には財政があり、金融規制、それから構造改革とございますけれども、そういったものを確認的にコミットしたということでございます。

41ページ以降は、参考となっておりますが、カンヌ・サミットのコミュニケを中心に御紹介しております。41ページは経済成長に関するコミュニケの抜粋でございます。サミット直後に各種報道に出ました主たる文書としては、このコミュニケがございました。このコミュニケの裏にカンヌ・アクションプランがあり、それから首脳宣言という文書がありまして、それらのポイントを抽出してまとめたのがコミュニケ、そういう文書の構成になっておりました。コミュニケで成長に関して合意されたのがここに書いてあるような内容でございます。

次の42ページが先ほど5つ御紹介申し上げました議論の柱の2番目、国際通貨システム改革で、これにつきましても均衡ある成長の作業と同じで、国際通貨システムについてG20のワーキンググループを作りましてずっと作業を続けてきたことのまとめ、成果になっております。この国際通貨システム改革につきましては、コミュニケのパラグラフの8、10あたりにこういうことでまとまっております。資本フローの管理、IMFと地域金融取極の間の協力のための原則、現地通貨建て債券市場、このあたりにつきましては一応こういう方針でやっていこうという総論的なものでありますが、文書がまとまりました。SDRの構成の話につきましては、パラ8の中ほどにありますように、構成の評価は既存の基準に基づくべきであり、我々はIMFに対してそれらのさらなる明確化を求めるということで、作業はオンゴーイングでありますが、一つ考え方の区切りがついたということでございます。あと、サーベイランスの強化につきまして、統合された公平的なサーベイランスをさらに進めるべきということになってございます。後のほうにそれぞれ関連の資料をポイントのみつけさせていただいておりますが、こういう内容であったと。

それから、パラの10、グローバルな資金セーフティ・ネットをどうしていくかという点は、ちょうどIMFが新しい危機予防的なツールを検討しており、それがほぼまとまる段階に来ておりましたので、ここに書いてあるような、いわゆる予防・流動性ライン(PLL(Precautionary and Liquidity Line))、これらの提案を歓迎する、支持するという中身になっております。これにつきましては、今年の春以来、我が国がIMFのツールキットとして、このような予防的なものであって、さらに使い勝手のよいもの、現実のニーズに即応できるようなものが必要ではないかと主張しておりまして、我が方の主張を受けてIMFが検討してきたその成果でもあると考えております。

43ページ以降は、先ほど申し上げた点の結論文書のポイントでございます。時間の関係で省略させていただきますが、43ページが資本フロー、44ページが地域金融取極とIMF、45ページが現地通貨建て債券市場で、46ページがSDRの構成通貨の件です。ここは現状の復習のような内容でございます。

47ページがサーベイランスの強化についてということで、2番目の「○」の最後にございますが、今年10月、ラガルドIMF専務理事がサーベイランスの強化に関するステートメントを公表しております。今後どういうふうに強化を進めていくかという考え方のポイントを、以下に専務理事の考え方として紹介を申し上げております。

48ページがIMFの融資制度改革で、これは先ほど申し上げました主に危機予防を目的とした融資制度をどう改善するかという件です。一言申し上げますと、これまでもFCL(Flexible Credit Line)、PCL(Precautionary Credit Line)という2本立てがあったわけでございますけれども、PCLを先ほど出てまいりましたPLLという新しい仕組みに衣替えをしたというのが成果でございます。カンヌ・サミットの後あまり日を置かない時点でIMF理事会が開かれ、この新制度を作ることが正式に決定されております。その新しいPLLのポイントは2番目の「○」にございます。実際の国際収支の資金ニーズがある場合でも利用が可能になるというシステム。逆に申しますと、これまでのPCLは現実に国際収支上の資金ニーズがある場合には利用できない制度になっておったわけですけれども、その利用要件を緩和したということでございます。もう1つは、PCLについては1〜2年のプログラムだったものを、短期の利用もできるように、そのような選択肢を追加したということでございます。

めくっていただきまして、49ページはIMFの融資制度の比較でございます。御参考でございます。

大きな3つ目の柱で為替制度・為替市場でどういう議論があったかというのは50ページ、51ページに御紹介を申し上げております。いずれもコミュニケの抜粋でございます。G20でこれまで議論していた為替制度に関する議論については、今年は、特に大きくこれが追加されたとか、変わったという点は恐らくなかったのではないかと思います。これまでのコミットメントをある種再確認する内容になっております。

51ページはアクションプランからの抜粋ですが、このパラグラフの5の引用、アンダーラインを引きましたところの表現は、今夏のG7電話会談後のコミュニケですとか、10月のパリで開かれましたG20財務大臣・中銀総裁のコミュニケの表現を再確認している。過度の変動、無秩序な動きは経済に悪影響を及ぼすことをきちっと認識共有するという内容でございます。

それから、52ページ、4.ユーロ圏の政府債務危機の話ですが、内容としては、イタリアがIMFに四半期ごとにモニタリングを受け入れることを決定したというのはカンヌ・サミットの1つ大きなイベントだったと思いますけれども、それを文書で確認したということ。

53ページがアクションプランでのユーロ圏問題の取り扱い。下の小さいパラのd)でイタリアのコミットメントがまとめられております。

最後、5.でIMFの資金基盤強化の件であります。今朝も日本経済新聞の一面などに出ましたけれども、カンヌ・サミット以降、引き続き残された大きな課題としては、ユーロのクライシスですとか、それがほかの地域に波及した場合、IMFはどう対応するか。そのための必要な資金基盤があるのか、こういう議論が喧しいわけでございますけれども、カンヌ・サミットの時点では、54ページのパラ11、後段でありますが、IMFが加盟国全体の利益となるよう、システム上の責任を果たすために十分な資金基盤を持ち続けることを確保することを首脳間で合意をしているということでございます。カンヌ・サミット時点では、具体的にこの資金基盤について何をどう検討していくかということにつきましては、今後の議論ということになりました。次回の財務大臣会合までに作業することが合意されております。次回のG20の財務大臣会合は今のところ2月下旬に予定をされておるところであります。

あと、55ページ以降は御参考ということでつけさせていただきました。1点だけ申し上げると、55ページにはIMFの資金の状況をまとめてございますけれども、真ん中のIMFという四角の中の上のほうに、現在の貸付可能資金残高がございます。赤くシャドーしてあるところで約4,000億ドルとございますけれども、カンヌ以降、時々報道にもIMF資金の今の利用可能残高3,900億ドルとか4,000億ドルなどと出ておると思いますけれども、それがこの数字だということでございます。

大変駆け足で恐縮ですが、以上でございます。

○伊藤分科会長ありがとうございました。

続いて、開発に関する最近のトピックをお願いします。

○岡村開発政策課長開発からも一言ということで、最近の動きにつきまして簡単に御報告をさせていただきたいと思います。資料は58ページ、1枚おめくりいただきまして、59ページからでございます。全部で3点御報告申し上げます。

1点目が援助効果向上に関するハイレベル・フォーラムで、11月の末から12月の頭にかけまして韓国の釜山で行われております。これは、御案内のとおりでございますが、2002年のモンテレイ合意を受けまして、援助効果向上に関するハイレベル・フォーラムという名前で、ローマ、パリ、アクラと3回行われてきているものの4回目でございます。一貫して、中国とかインドなどの新興ドナー、新しく力をつけてきたドナーを巻き込んだ枠組みをいかに作れるかということが議題となっております。今回も実際の現場では、中国などに対して、これまで伝統的なドナーの間で共有されてきたような援助についての原則を適用できるか、共有できるかということについての交渉と言いますか、巻き込みについて、水面下での交渉に時間が割かれてきたものでございます。

成果文書のポイントというところに書いてありますが、1つ目、2つ目のチェック、実際にはこの間に真実というか、最も重要なポイントがあろうかと思います。1つ目のチェックのところが今申し上げました伝統的ドナーに供与されてきた援助についての原則でございまして、2つ目のところに新しい開発者、南南協力などについての言及がございます。枠組みとして巻き込むことは成功したということではございますが、成果文書では実際には、これらの原則は南南協力のパートナーによって任意で参照されるものとする、ボランタリーに適用されるものだということで、南南協力のもと、要するに中国とかインドとかの自主性が尊重されるような決着になっているというのがポイントでございます。

次のページはその経緯、今申し上げましたモンテレイ以降の会議でございます。

第2点目が61ページの気候変動の話でございまして、これも今報道されておりますが、ダーバンでCOP17の会議が行われているところでございます。この資料の上にありますとおり、京都議定書は主要排出国が含まれていない。したがって、すべての主要排出国が参加する公平で実効性のある新たな枠組みが必要だというのが我が国の立場でございまして、単純に京都議定書を延長するということではなく、新しい枠組みを作る。主要排出国を巻き込んだ枠組みを作らなければいけないということでございます。併せまして、下のほうの緑の気候基金は、気候変動についての途上国を支援するためのファイナンスの枠組みでございます。既に議論されておりますけれども、ここにつきましては、基金の制度設計の議論は継続していくのですが、全体の枠組みについて、主要排出国を巻き込んだ新しい枠組みを作っていくこととのバランスが大事で、基金のファイナンスの話だけが先行して進んでいくことであってはならないというのが私どもの立場で交渉に臨んでおります。

3点目が次のページでございますが、62ページ、GEF(Global Environmental Facility)の次期CEOは来年6月頃に、現在の方の任期が終わるということでございまして、選挙がございます。今、副財務官をしておりまして、現在ダーバンに出張中であります石井副財務官を日本からの候補ということで、先般、立候補をしたところでございます。これから立候補者の締め切りが行われまして、実際に投票に向けての動きが行われるというタイミングでございます。財務省のホームページの抜粋をここにつけてございますが、GEFというのは、開発分野の中での重要性を増していきます環境分野の中で、これから国際的な枠組みなどもできていくようなタイミングにあるところで、我が国からマネジメントを出すことに極めて大きな意義があるであろうということで立候補しているところでございます。御指導、御支援をお願いしたいと思います。

以上です。

○伊藤分科会長ありがとうございました。

続いて、アジアにおける金融協力。

○栗原地域協力課長地域協力課長の栗原でございます。私からは最近の動きの2点、1つ目が日韓スワップについて、2つ目がASEAN+3財務大臣プロセスの最近の協力の進捗状況について簡単に報告させていただきたいと思います。

まず、64ページ、日韓スワップでございますが、既に報道等で御案内のとおり、10月19日に日韓首脳会談がソウルで行われまして、その際に現行の130億ドルのスワップを700億ドルに枠を拡大するという合意がされました。この700億ドルは大きく3つから成っておりまして、まずは現行の日本銀行と韓国銀行間の金融市場の安定のための流動性供給というスワップを30億ドルから300億ドルに上げる。ちなみに、これはリーマン危機のときも暫定的に30億ドルから200億ドルに引き上げたことがございました。2番目に、これを補完し、また為替市場を含む金融市場の安定のために、財務省の外為特会と韓国銀行の間で300億ドルのスワップ枠を設ける、こういう合意がされました。3番目、これはいわゆるチェンマイ・イニシアティブの流れの中で、バイで結んで、まさに危機対応で、実際に国際収支困難が発生したときでございまして、今回はそういう事案でもございませんので、これまでどおり100億ドルのまま維持する、このような合意でございます。

その次、65、66ページはそれぞれの報道発表資料で、日本銀行側、財務省側が書いておりますので、御参照いただければと思います。

次に、ASEAN+3金融協力の最近の動きについて、67ページ以降で御説明させていただきたいと思います。御案内のように、ASEAN+3の財務大臣プロセスは、毎年5月に財務大臣会議ということで、そこが事務年度の始まりであり、終わりということで議論が進んでおります。今年5月ハノイでございましたが、そのときにASEAN+3マクロ経済リサーチオフィス(AMRO)という、チェンマイ・イニシアティブのもとでのサーベイランスを独立して行う組織の法的地位の強化という点や、あるいは今のチェンマイ・イニシアティブは危機対応という仕組みですが、その危機予防についても研究を開始する。先ほどヨーロッパでもこういう議論があるという説明があったと思います。さらに、財務大臣のみならず中央銀行総裁も御参加いただく、こういうことが合意されました。これを受けまして、年2回春と秋に、それぞれ春はASEAN側の共同議長、秋は+3(日中韓)側の共同議長国で代理レベルの会議をやっております。まさに先週、仙台で日本がインドネシアと共同議長ということで代理会議をやりまして、5月の大臣会議を踏まえた点について議論が行われました。中でも危機予防の導入を含むチェンマイ・イニシアティブ、危機対応の強化、特に欧州の今の動きを見ますと、アジアにおいても議論を加速化していく必要があろうという点、ASEAN+3マクロ経済リサーチオフィスの組織を強化していく点、アジア債券市場育成イニシアティブも具体的成果が出るように、より具体的なテーマに絞って議論していこうという点、それから、通称AMROも参加した初めてのサーベイランスの議論も行われました。

次の68ページですが、IMFの危機予防のメカニズムは、先ほど御紹介がありましたが、大きく危機対応と危機予防メカニズムがありまして、グローバルな仕組みですと危機対応がSBA、それに対して危機予防ということで、リーマン後FCLとかPCL――最近PLLに変わりましたが、それとかHAPASBA、こういうものがあるわけです。今アジアの枠組みはこのクライシス・レンディングに該当するチェンマイ・イニシアティブでございますので、右下の地域における危機予防を早急に進めていかなければいけないということでございます。

69ページ、ASEAN+3マクロ経済リサーチオフィスの状況でございますが、今年4月にシンガポール法人として無事法人登記等も終わりまして、もう物理的にシンガポールに設立されております。現在、中国出身のウェイ事務局長ほか11名がフル勤務体制に入っておりまして、エコノミスト6名も着任しております。今般の仙台の代理会議で、これまで2013年に18名の予定だったのですが、7名足して25名まで体制を拡大しようという合意がなされました。また、10月から毎年1回サーベイランス・ミッションも送ることになっておりまして、既に2カ国ほどやっておりまして、かつ、この12月にも来て、各国の経済状況の報告があったということでございます。また、ホームページ等も間もなく立ち上がるということでございまして、ASEANのマクロ経済については情報の集積地点に今後なっていくのかなと思っております。事務局長も来年5月からは日本の根本洋一氏に交代することが決まっております。

次に70ページ、ABMI(Asian Bond Markets Initiative)でございます。これも2003年立ち上げ以来いろいろな取り組みをしておりますが、足元の動きとして、1番目、CGIF(Credit Guarantee and Investment Facility)ということで、ADBの信託基金として社債等を保証することにより、格付を上げて投資家が買い易くするということでございますが、これも既に物理的に立ち上がり、マニラにございます。2011年10月に西村さんという日本の方がチーフ・エグゼグティブ・オフィサーに就任しまして、現在保証に向かっての具体的な業務計画や、さらにCEO以下のスタッフのリクルートメントを進めておりますので、できる限り早く第1号の保証案件が出ることを期待しております。

それから、もう1つはABMF(ASEAN+3 Bond Markets Forum)でございますが、これは官の部門のみならず民間部門の方も参加いただいて、クロスボーダーな取引を活発にするための議論をいろいろしております。第1回目の成果といたしまして、一番下にございますが、ASEAN+3各国の債券市場についての報告、ストックテーキング・レポートを間もなく完成し、ADBのアジア・ボンド・ウェブサイトがございますが、そこにアップロードされるということでございます。投資家の方にもぜひ見て使っていただきたいと思っています。これ以外に大臣会議、さらには今回の仙台で、ABMIで議論されている関心事項というのは、2008年にロードマップということで議論されたのですが、先ほど申し上げましたように、より具体的な成果が出るようにどんな議論を進めていくのかというのを今進めているところでございます。

私からは以上でございます。

○伊藤分科会長ありがとうございました。

続いて、中国経済及び韓国経済をお願いします。

○目黒調査課長時間が押して大変恐縮ですが、残り3分から5分ぐらいで中国と韓国の経済状況、それから中国については人民元の動向、このあたりを中心に御説明申し上げたいと思います。

資料は72ページをお開きいただきたいと思います。まず、成長率の動向です。中国の経済成長率は、2008年、2009年の減速の後、2010年には10.4%の成長を達成したわけですが、今年に入ってからは減速傾向が見られている。四半期ごとの数字も徐々に落ちてきている。特にここ足元では、やはりヨーロッパ経済の影響による、主に輸出の面の減速傾向が囁かれているところでありまして、恐らく今年の実績見込みの数字としては、ここの右肩にIMFとOECDの数字を載せていますけれども、OECDのほうがより新しい数字です。9%いくかいかないか、いって9%の前半。さらに来年につきましては8%の後半という見通しが今のところのコンセンサスだと思います。

資料を2枚ほど飛ばしていただきまして、75ページ、物価と金融政策について御説明申し上げます。中国は、2008年の世界経済危機の後、緩和した金融政策を採用していたわけですけれども、その後の物価の動向などを踏まえ、2010年末に金融政策を「穏健な金融政策」、物価の動向をより抑えるという意味での「穏健な」という意味でございますけれども、そこに転換してきた。右下のグラフで預金準備率あるいは貸出金利を見ていただきますと、それぞれ2010年の終わりから今年の前半にかけて引き上げがなされてきたところでございます。ただ、この夏以降の動向は、まず物価につきましては、今年8月ぐらいには豚肉の物価が前年比50%以上上がった状況だったわけですけれども、足元では物価指数も左のグラフのとおりやや落ち着きが見られてきている。さらに、上の文章の2つ目の「○」に見られるように、温州市で中小企業の混乱も見られるようになったということです。ここ足元、特に12月5日には3年ぶりに預金準備率の引き下げ、これはファインチューニング(微調整)と言われておりますが、このようなことでやや方向性が変わりつつあるのかなというところでございます。

続きまして、資料をまた2枚飛ばさせていただきまして、外貨準備から人民元の最近の動向について御説明したいと思います。78ページは外貨準備でございますけれども、中国は経常収支の黒字、資本収支の黒字を主因にしまして外貨準備が増えてきており、3兆ドル規模でございますが、足元ではやはり増え方のペースに鈍化、あるいは、これは為替レートの換算の関係もあると思いますが、一部、月によっては落ちたりもしているということでございます。世の中の見方としては、中国では熱銭と呼ばれる、いわゆるホットマネーの流入がここに来て世界的な金融情勢を受けてやや落ちてきているのではないかという見方もございます。

続きまして、79ページですが、これは人民元の為替相場の動向でございまして、通例よく見られているレートはこの赤い人民元の対ドルレートのグラフでございます。2010年6月に人民元の柔軟化を発表しまして、それまで硬直的だったものが再び動き始めたということで、その後、人民元の対ドルでの増価傾向は続いてきているところです。ただ、これも足元ではやや弱含みの傾向が見られるというのがここ数日、日本の新聞などでも報道されているところでございます。

続きまして、80ページの中国の為替制度あるいは国際資本規制ですが、ぱっと見ていただいて、簡単に申し上げますと、今の中国の国際資本移動規制の状況は日本の1970年代初頭あたりにあるのではないかというのが一般的な見方ではないかと思います。

ただ、次の81ページを御覧いただきたいのですが、最近、特に貿易取引において、あるいは直接投資において、人民元をより国際的に使われるようにしよう、こういった動きが加速している兆候が見られます。グラフは人民元建てでの中国の貿易決済の金額です。金額の規模自体はまだわずかですけれども、伸びということでは相当なペースで伸びている。特に香港との間のやりとりで人民元が使われるケースが多いと聞いておりますが、かなり急速に変わってきている。規制の面でも、上のほうに書かせていただきましたが、人民元建ての貿易決済はテスト企業に認められているわけですけれども、そこのテストの地域を全土に拡大したり、あるいは今年10月には人民元建てでの直接投資の受け入れを、ルールを明確化することで正式に解禁したりということが行われております。また、中国では、3つ目に通貨スワップと書いておりますが、貿易・投資の促進という目的の通貨スワップをさまざまな国と今結んでいるということでございます。

82ページは、アメリカの対中制裁法案の動向でございますが、これは時間の関係もございますので省略させていただきます。

最後に、83ページ、84ページで韓国経済の現状を簡単に御説明申し上げます。韓国もやはり2010年には6.2%の比較的高い成長率だったわけですけれども、今年に入ってからは減速傾向、特に夏以降減速傾向が顕著になってきているということでございまして、一番最後のポツに書いていますとおり、今年の実績見込みについては3%台の後半ではないかと見られているということでございます。

それから、84ページの物価と金融政策です。これも中国と似ているのですが、夏ごろまではインフレ懸念という見方が非常に強くて、中央銀行も金融引き締めを漸次行ってきたわけでございますが、9月以降インフレ率は相当落ち着いてきておりまして、再びインフレターゲットのレンジの中に入ってきているということで、金融政策も据え置きという状況でございます。

簡単ですが、以上でございます。

○伊藤分科会長どうもありがとうございました。

簡潔に説明いただきまして、十分議論の時間をとることができると思いますので、皆さん、活発な御議論をしていただきたいと思いますが、あまり拡散してもいけないので、まず最初は、マーケットの動き、ヨーロッパ債務危機、それからG20、そのあたりまで、最初の3つのポツについて質問、コメントを受付け、後半は、開発、アジア、中国というふうに行きたいと思います。

最近のマーケットの動き、ヨーロッパ債務危機、皆さんいろいろ言いたいことがあると思いますが、コメント、質問がありましたらどうぞ。

では、清水委員。

○清水委員きょうは貴重ないろいろなお話をありがとうございました。

最初のほうで、特に円高介入関係についてお伺いしたいと思っていたのですが、まず5ページの円高対応緊急パッケージにつきまして、1のファシリティの創設は、こちらは期間が1年間の時限措置ということで決められたわけですが、大企業にとっての1年間ファシリティというのはもちろん十分な措置だとは思うのですが、昨今、中小あるいは地方の企業に関しても海外進出が始まっているというようなことを伺っております。例えばそういったところでは1年の時限措置というのは若干短いのではないか。むしろ2年、3年ぐらいの時限措置のほうが良いのではないかと思うのですが、その点についてなぜ1年間ということで時限であったのか。あるいは、そういう地方企業あるいは中小企業に対しての時限措置で新たに期間を長目にしたようなファシリティの創設をお考えかどうかというのをお伺いしたいと思います。

第2点に、ドル円相場の動きと、それから介入についてです。コメントを私も伊藤先生と書いたりもしたのですが、必ずよく出てくる話が、名目為替相場で円高である。もちろん、名目的な円高が企業の収益に直結するというのは納得しているのですが、しかし、経済学的に見ますと、必ずそれに対する反論として、実質実効為替相場で見るとそれほど円高にはなっていない、そういう議論がよくなされていると思います。そのようなことにつきまして、もちろん介入を実質実効為替相場で見ているということはないと思うのですが、やはり長期的な視点に立った介入といったときに、財務省、通貨当局としまして名目相場以外に実質実効為替レートなどを御参考になさっているのかどうかということをお伺いしたいと思います。

○伊藤分科会長幾つかまとめてお答えいただきたいと思います。佐々木委員。

○佐々木委員幾つか重なっているところもあるのですけれども、5ページの緊急パッケージの1番のところです。すごく素朴な疑問として、実際にこれで新規の需要を喚起できるのか、あるいは全体量を増やせるのかという質問です。例えばM&Aを促進するということですが、もともと民間で資金を借りてM&Aをしようとしているところの需要を取り込んでしまうと、むしろ反対に民間のほうでドルに換えようとしていた動きをこちらのほうで吸収してしまう代替効果みたいなものが出てきてしまうのではないのかという気持ちがしまして、現実的に何か新しい需要を取り込むとか全体量を増やす。今までそうでなければやらなかった人たちを取り込めているのか、そのために何か工夫があるのか、あるいは実際そういう人たちにそういう効果があったかどうかというところをお聞きしたいのが1点です。

もう1点が7ページの総合的対応策のところです。全体としてポジティブに円高をとらえる面もあるのかなというふうに、読んでいて、スタンスがそういう方向に見えたのですが、実際は個人的に私もそういう考え方はすごくあると思っていますし、円高のもたらすマイナス効果はプラザ合意の頃からどんどん変わってきていると思うんですね。そういう意味で、これは介入にも関係あると思うのですが、実際、財務省として、円高に対して介入をするとかこういった対策を考えているときに、具体的に円高をどれぐらいマイナスと考えているか。そういうときのベースとして何を拠り所にしているか。つまり、例えばGDPにどれぐらいマイナスがあると考えて、そうすると介入するというふうに考えているとか。総合対策を見ると、比較的中小にはマイナスの効果があるけれども、大きい企業にはそれほど大きいマイナスはないような感じに読めたり、でも、介入をあれだけの金額でするということは、やはり円高はすごくGDPにマイナスだと考えているようにもとれたりするのですが、その辺、何かスタンスが変わったとか、総合的対応策を考えるに当たってどのようなお考えに基づいていらっしゃるのかということをお聞きしたいと思いました。

○伊藤分科会長亀坂委員。

○亀坂委員私は、最近の為替市場の急激な変動に関して1つ質問があるのですけれども、単純に新たに為替取引に課税するとか、そういったことは議論されていないのかどうか教えていただきたいと思います。

○伊藤分科会長嘉治委員。

○嘉治委員サーベイランスの強化というのが47ページに載っていて、関連すると思われる情報が68ページに載っていると思うんですが、私は、サーベイランス、危機予防ということに関して懐疑的であります。サーベイランスの強化、47ページのところを見ると、基本的にIMFの伝統にのっとって国際収支あるいは相互インバランスとか波及効果の話になっているのですけれども、金融政策は、物価をターゲットにするのか、マーケットをターゲットにするのか、どっちも同時に選べないという基本的な矛盾を抱えてしまっていますし、民主主義のもとで財政政策のほうは収拾のつかない状態になっているようなところで、マクロ経済政策に関してサーベイランスを行ったり波及効果の云々という議論をしたところで、所詮危機は防げないような気がするんですね。それは防げないということを前提にしても、それをあきらめて投げて、あえて、もう防げないからマクロ経済政策の話をするというスタンスなのだったら、それはそれで一つのスタンスかもしれませんけれども。68ページには、危機対処メカニズムと予防メカニズムとはっきり右・左に分かれておりますけれども、私が見ていると、予防メカニズムのところも結局対処メカニズムで、よく見ると、要するにクレジットライン、リクイディティラインということで、起きてしまってから、あるいは起きる直前に、起きる兆候があらわれたときにどうやってちゃんと貸すかという話になっておりますので、基本的に予防にはなっていないと思うんですね。予防にはやはりマクロ・プルデンシャル・レギュレーションみたいなことをきちんとやっていくしかないように思うのです。それは御担当ではないと言ってしまえばそれまでなのかもしれませんけれども、グローバルなレベルでそれをきちんと見ているのは今誰なのでしょうかということだけでも教えていただきたいと思います。

ありがとうございます。

○伊藤分科会長野坂委員。

○野坂委員ありがとうございます。私は格付会社について質問をしたいと思います。この夏にアメリカの国債が格下げになり、また今晩から始まる重要なヨーロッパの会議に先立って、ヨーロッパの国々の国債の格付を引き下げ方向での見直しということで格付会社が発表しました。非常にタイミングが良いというか悪いというか、格付会社に振り回されているようなところが見受けられると思います。格付会社の規制の問題については現在どういう取り組みをされて、また、ヨーロッパの当局者あるいはアメリカ当局者からもさまざまな発言が出ているようでありますけれども、今後、日本としてどういうスタンスで臨まれようと考えていらっしゃるのか教えていただければと思います。

○伊藤分科会長ありがとうございました。

まとめると、円高対応ファシリティの役割で、もっと長い期間が必要ではないかとか、民間の分がクラウディングアウトするのではないかとか、逆効果ではないかとか、私もつけ加えれば、何か空洞化促進策のようなもので、このようなものでいいのだろうかという気もしますが、それが一括りですね。

もう1つが介入、それから円高が本当にどれくらいマイナスなのか。それで、名目と実質実効の違い、それに課税すれば良いのではないかということ、この3つをまとめて円高と介入という括りですね。

円高対応ファシリティの方は門間審議官。

○門間審議官審議官の門間でございます。順番に御説明したいと思います。

まず、特に中小企業に限って、なぜ1年かという御指摘でございますけれども、そもそも円高対応緊急パッケージは、いわば一石二鳥を狙っておりますというか、円高のメリットを活用できないかということです。例えば日本企業が競争力を増やす上で企業買収を促進してはどうか。あるいは、原発の事故などでLNGの輸入が増えていますので、そういう資源をこの円高のときに獲得したらどうかというものと併せて、JBICがドルを融資するわけですけれども、JBICの場合、基本的に民間銀行と協調融資という仕組みになってございます。JBICは外為からドルを借りてそのままドルを出すだけですけれども、民間銀行が円からドルを調達してくれれば、資源も獲得でき、かつ円高も抑制する、そういう一石二鳥の効果があるのではないかということを期待してこのファシリティを作ったものです。そういう意味で、今足元の円高が急速に進んでいることから、やっぱり政策としては短期間でこれを何とかしたいという思いから1年という期間を区切ったものでございます。

さて、中小企業はどう考えるか、空洞化という御質問もありましたけれども、中小企業の場合は、ここにも書いていますように、基本的には輸出等の支援、あまりにも円高が激しくなってきたときに輸出をさらに支援するために、1つは海外に拠点を設けたいというような場合、特に資本が足りないときにJBICが出資もしてあげよう。この場合は基本的に民間銀行ができればファンドを創ってもらって、出資の財源を作ってもらって、そこにJBICもファンドを作って、その両方から海外へ出資してあげよう。出資ですので、例えば円をドルに換えて出資することが多いものですから、それで円高抑制を狙っているということでございます。ただ、中小企業の場合には、場合によってはあまりにも円高のために全く競争力をなくして、もう生きるか死ぬかという状況の企業もあって、そういう場合には海外に出ていってもしようがないのではないか。大企業と違って、そこまで苦しくなっているところを何とか見てあげるべきじゃないかということもありまして、中小企業にはそういう場合もある程度支援はやむを得ないと思っています。その辺はどうやって見るのかというと、結局、個々のケース・バイ・ケースで判断していかざるを得ないと思っております。

それから、代替効果が出てくると、かえって民間の方で円をドルに換えるチャンスが失われるのではないかと、全くおっしゃるとおりでございます。ですので、こちらも大変難しいのですけれども、私どもが一件一件審査する中で、このファシリティがそれなりに貢献しているようなものをなるべく推進していきたいと思っていますので、こちらも一件一件見ながらやっていきたいと思っています。基本的にはこの円高パッケージを発表した後の案件について支援をしていくという考え方で、なるべくその辺の新規の案件を増やしたいと思っていますが、物によっては、実は過去の資源の契約とか買収ですけれども、最近のヨーロッパのいろいろな困難があって、JBICの資金がないと合併を維持できないようなケースもあり得るんですね。それはそれで、破綻したら逆に円高になるところを予防的に防ぐ意味もありますので、まさにそこはケース・バイ・ケースで、いかにこのファシリティが付加価値があるかということをよく見て対応していきたいというふうに思っております。

○伊藤分科会長一件一件は誰が見ているんですか。

○門間審議官基本的にJBICのほうで審査をしていただいていまして、微妙な場合にはもちろん私どもにも御相談をしていただくことにしております。

○伊藤分科会長円高はGDPで見てどれくらいのマイナス効果があるのか、あるいは名目で見ているのか、実質実効で考えているのか、介入の判断の基準はどうなっているのか。あと私がつけ加えるとすると、介入の効果ということで、介入の仕方によって効果が異なるという分析結果を出したことがありますが、いろいろな介入の仕方をして、発表してどんとやったり、発表しないでやったり、いろいろ実験されているようですけれども、その辺を話せる範囲でお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

○市川為替市場課長介入について幾つか御質問をいただきました。

まず最初に、実質実効為替レートで見てどうなのかというお話がございます。実質実効為替レートにつきまして、資料の13ページを御覧ください。このようなものを判断基準にしているのかということでございますが、判断基準というよりは、実質実効為替レートの議論も避けられないところでございますので、このようなものも常々見てはいるところでございます。ただ、確かに過去20年の平均で見て、今の円の水準は実質実効で平均程度ではないかというコメントもあるわけでございますが、一方、実質実効ベースで見ても、07年当時から見ればかなりの円高が急激に進んでいるということでございます。名目ベースで見ればもっと急激に進んでいることは御承知のとおりでございます。そしてまた、過去90年代には実質実効ベースで100を超える円高水準というのはあったわけでございますが、今回の円高は10年以上続いているデフレ環境のもとで発生しており、さらに円高にデフレ効果があるということで非常に日本経済にとってはダメージングである。ただ単純に実質実効の水準を比べるだけではなく、そういうことも検討に入れなければならないのではないかと考えております。ですので、もちろん内閣府では、円高が1円進むとGDPに与える押し下げ効果は云々という計算結果はあるわけでございますが、全体としてやはり現在の円高の水準が震災復興にあえぐ我が国のファンダメンタルズに必ずしも合致しない。それから、景気の下振れリスクになっているというところを根本に置きつつ、そしてもう1つ、介入に当たりましては、やはりG7の中での急激な変動、過度な変動は経済にとって望ましくないということ、これに対応するためにという考え方に基づいて介入を行っているところでございます。

そして、介入の具体的な手法でございますが、これにつきまして今回の介入はどのような手法をとったかということを詳しく申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。ただ、一般的に申し上げれば、市場のセンチメント、市場の需給の動向、ポジションの動向、このようなものをよく把握いたしまして、最も効果的な方法をとりたいと常々考えております。以上でございます。

○伊藤分科会長ありがとうございました。

為替取引に課税してはという意見がありましたが、いかがでしょう。

○市川為替市場課長大変申しわけございませんでした。国際金融取引に課税すればいいのではないかというお話がいろいろなところに出ております。また、現在、ヨーロッパでも国際金融取引に課税するということが国際間の議論のアジェンダになっていることも承知しております。ただ、そのヨーロッパの議論の中でもスポットの為替取引というのは、課税のしにくさということもあるのでしょうが、案の中から除外されている状態でございます。本件について非常に難しいのは2つありまして、1つは、金融取引課税について、取引所の中の場内取引ですと割と遺漏なく捕捉ができるのですが、OTCでの取引についてどれだけの捕捉が上がるのかという問題、これは大変技術的な話でございます。もう1つは本質的な話でございますが、これだけ金融取引が国際化しているときに、1カ国において、例えば日本が円の取引について課税する、あるいはドルでもユーロでもいいのですけれども課税した場合には、為替の取引が日本を迂回してヨーロッパ、ロンドンやニューヨークで行われる、それだけになってしまいます。これはスウェーデンでも以前、証券取引で例があったようでございますが、単独で突っ込んでいって取引が迂回されると、その市場が寂れるだけでなく、結局他のところで取引が行われ、当初のいわゆる投機的な取引を抑制したいという効果も全く上がらないことになってしまいますので、そういうこともよく考えなければならない。ただいずれにせよ、広く御提起されている問題でございますので、こういう国際金融取引税とか国際連帯税については真摯に検討をしていくというのが、政府のスタンスと承知しております。

○伊藤分科会長ありがとうございました。

IMFのサーベイランス強化といっても、所詮無理ではないか。あとは、予防、クライシス・プリベンションとマネジメントというふうにきれいに分かれているけれども、現実は区分できないのではないかというあたり、宮原国際機構課長。

○宮原国際機構課長嘉治委員の御質問にできる範囲でお答え申し上げたいと思います。サーベイランスの効果、意義という点でございます。確かにIMFは、分析し提言はできても、加盟国に強制は当然できないわけですから、結局、IMFがどれだけサーベイランスの精度を上げても、それが現実に活きるかどうかというのは、受けとめる国の政府が中心かもしれませんが、政府、中銀、その他関係者がどれだけ真剣に受けとめてアクションにつなげるか、そこにかかっているわけでございますので、そういう意味ではあまり意味がないのではないかという面もあるのかもしれませんけれども、逆から見れば、加盟国の政策当局者に、こういうリスクが出始めていますよ、注意したほうがいいですよということをより効果的にメッセージといいますか、ウォーニングを発する意味でのサーベイランスの価値はあるのではないかと考えられます。恐らくG20ですとかIMFCで議論をする際に、参加者の頭の中にある暗黙の考え方というのは、そういうウォーニングを発する機能としてのサーベイランスということではないかと思っております。資料にも若干御紹介しましたけれども、これまでバイラテラルのサーベイランスが中心だったところをマルチのサーベイランス、それこそ効果的なメッセージを作れるものとするように改善しましょうということを今やっております。スピルオーバーというフレーズも出てまいりましたけれども、一国が採るマクロ経済政策が近隣あるいは世界にどういう影響を及ぼすかというところにもよく目配りをして、IMFにその分析の精度を高めてもらいましょうということをやっておるわけでございます。それから、大臣級の会議等においてもきちっとそういうサーベイランスの結果にも注目してもらうということで、IMFCの機会などでは、従来の会合以外にも大臣クラスに集まってもらって、世界経済や金融市場のどこにリスクがあるかという分析を聞いてもらう、そういうような試みも数年前から始まっているところでございます。

2番目の御質問で、危機の対処と予防というのは実際問題区別がないのではないかというところでございますけれども、時系列でものを考えますと、初めはIMFの機能、それからそのポリシーメーカーたちの関心も、危機が起きてからどう対処するかというところにほぼ限られていたところを、危機の予防にも問題関心を広げて、何ができるかというのはあるのですが、やはり対処していくべきだろうと。そういう展開というか、流れだと思いますので、危機対処の仕組みの上にアドオンして予防の仕組みを整備しつつあるところであります。区別が難しい点もプラクティスとしてはあるのかもしれませんけれども、1つ申し上げると、予防メカニズムの目指すところは、例えばクレジットラインの大きなものを引いて、それをマーケットに見せることで、これだけあれば大丈夫だという安心感を提供し、適切なエクスペクテーションを持ってもらうというのは1つ危機対処とは違う予防の話かと思いますし、そういう観点で最近の危機予防メカニズムの検討と実行は行われているのではないかと思っております。

○伊藤分科会長格付は、クライシスになったところは必ず文句を言って、アジアのときはアジアの国がとんでもないと言って、アメリカのときにはアメリカが格付機関はとんでもないと。今度はヨーロッパが文句を言っているわけですけれども、これはどなたか何か見解がありますか。

○山崎国際局次長格付は、G20で最初から一つのイシューになっており、登録制を各国へ入れろということになりまして日米欧で導入しまして、あわせて行動規範、IOSCOにもともとあったものをできるだけ法制化しろということで、各国も入れております。ただ、この行動規範というのは、その格付に当たってのデータをできるだけ公開せよとか、あるいは格付担当者の利益相反、組織の利益相反をなくせなどのいわば概念的なものであって、本来世の中を一番騒がせている政治的な格付であるとか、一気に何ノッチも下げるような格付が良いかどうかということには触れられていない。それは監督規制のイシューとしては触れられないんですね。翻って、最近の格付で多い議論になったのは、例えば8月5日のS&Pの米国債の格付であるし、あるいは一昨日の欧州17カ国のうち15カ国をこの先ネガティブウオッチにするという格付ですね。これは、どちらもそれぞれ格付会社がきちんと紙の中で政治的なものだということを自ら言っているわけです。自ら言っていてプレッシャーを与えているという意味では、いわば圧力団体的な役割を格付会社が果たそうとしている。それが良いか悪いかは別にしても、そこはある意味で政治的な話であって、監督当局が立ち入る話では恐らくないというのが少なくとも現在のG20の中の監督当局の認識であって、それに対して、ぜひそこもやるべきだという意見も幾つかの国の政治家から出ていますけれども、今のところそこはアジェンダになっていないということでございます。

○伊藤分科会長アジア通貨危機の直後は、国際金融情報センターで格付機関を格付するというプロジェクトを走らせたことがあったのですけれども、そういうようなことをまたどこかがやるといいかもしれません。

後半の議論、開発とアジアと中国、韓国というところで御質問、コメントはいかがでしょうか。大野委員。

○大野委員ありがとうございます。では、59、60ページ以降の開発に関するアジェンダを中心に幾つか質問とコメントをさせていただきたいと思います。

まず冒頭に、石井菜穂子さんが立候補されて、知人としても非常に心強く思っておりますので、応援させていただきたいと思っております。

開発の関係でございますが、最初に釜山での援助効果向上に関するハイレベル・フォーラムの結果について御説明をいただきました。そのときに、中国などのBRICs等の新興ドナーと伝統的ドナーをめぐる開発援助にかかわるいろいろなルール、枠組みをどうするかということが非常に重要な焦点だったという話でしたが、初めの段階で、中国が席を立って一時は抜けようとした、そういったような話もちょっと伺っております。差し支えない範囲で、その辺の舞台裏などを教えていただければと思います。

それから、最終的に成果文書に合意されたときに、今後はグローバルなパートナーシップという形でフォーラムを作っていくということですが、そうしますと、開発援助という援助だけではなくて、援助効果向上のフォーラムというのは今回で終わりで、だんだんと次回以降はグローバルな形でのフォーラムに移行していく。そういう理解でよろしいかどうか、これについて事実関係を確認させていただければと思います。

2つ目ですけれども、日本への示唆といったことを考えたときに、既にアジア開発フォーラムを日本の政府が韓国などと一緒になってやっていることもありますので、今後グローバルなパートナーシップフォーラムという形が、OECD、UNEPなどが取り組んでいくときに、日本としての取り組みもうまく巻き込みながら次のステップをぜひリードしていただければと思っております。

それから、日本との関係で考えましたときに、日本と中国といったバイで考えたときには、例えば円借款はもう終わっております。ある意味で中国の行動が非常に影響を及ぼす環境問題とかに対しましては、日中の環境協力という形での資金フローはなくなっているわけで、日本として中国を、国際的な公共財、あるいは中国自身の行動に対して関わっていく、エンゲージメントしていくツールが少なくなってきているのかなと、ちょっとその辺を懸念しております。そういったところにおきまして、財務省としてはどのようなツールがあり得るとお考えなのか教えていただければと思います。

○伊藤分科会長奥田委員。

○奥田委員今、大野委員が言われたことと重なってしまうのですけれども、59ページのドナーとしての新興国の配慮という話ですが、先ほどは中国だけが取り上げられましたけれども、ほかに問題があるような国はあるのでしょうか。これは情報として教えていただきたいと思います。

それから、少し飛んで、69ページのリサーチオフィスの話ですが、ここでエコノミストが、だんだん体制が充実してくるということだと思うんですけれども、AMROとADBの関係はどういうふうにされているのでしょうか。もしかしたらADBのエコノミストが来られているのかなと思っているのですけれども、この辺の関係がもしわかれば教えていただきたいと思います。もう少し踏み込むと、ADBはどういうふうに見ているのかというのも教えていただきたいと思います。

それから、70ページですが、ここでいわゆるABMFの話が出ているんです。各国の規制と市場慣行の調和化という話で、前からやっている話だと思うのですけれども、なかなか実効が上がっていないのではないかという感じがしているんです。このメンバーの中で一番これに熱心に取り組んでいる国はどこなのでしょうか。多分、温度差があるのではないかと思うのですけれども、調和化に対して積極的に提案するとか何かしている国があれば教えていただきたいと思います。

それから、格付の問題が多分その中の1つのポイントだと思うんですけれども、格付機関は域内の格付手法、手法は似ているのですけれども、調和化することに対してどのくらい協力的なのでしょうか。私が個人的に聞くと、要らぬお世話みたいなことを言う人が多いのですけど、どんな感じでしょうか。それに関連して、去年、21世紀政策研究所で提言をやったのですけども、結局、各国の格付機関の調和を図るよりは、独立の格付機関を域内で作ったほうが早いのではないかという話があって、ACRAA(Association of Credit Rating Agencies in Asia)を制度化するとか、いろいろな話が出ているんですが、この辺については日本の政府としては何か議論をされているのか、何かそういう話があれば教えていただきたいと思います。

最後は本当に情報として知りたいのですけども、一番最後の87ページで一番最後のマルポチです。韓国が各種のマクロ健全性規制措置、資本規制を発表したということですが、これは具体的にどういうことなのでしょうか、教えていただければと思います。

○伊藤分科会長嘉治委員。

○嘉治委員81ページ目で、まず、決済金額の中で人民元建てのグラフがございますけれども、できれば総貿易額の中のパーセンテージが出ているともうちょっとイメージがつかみやすいのかなと思いました。

それから、3つ目のポイントで、貿易・投資の促進のため、通貨スワップを締結ということですけれども、相手国通貨が大きく取引されていないために、中国人民元の利用を拡大するために結んだものでしょうか。それが理由で日本はこういうものを結んでいないのでしょうかということをお聞きしたいと思いました。

それから、先ほど格付の話があったのですけども、ヨーロッパで既に自分たちの格付機関を作ろうという話が出ていますので、ちょっとつけ加えます。

○伊藤分科会長清水委員。

○清水委員嘉治先生の御質問と少し似ているのですが、人民元の国際化の動きについて、私は貿易建値通貨の研究をしておりまして、日本企業が人民元に対して、特に近年、為替リスク管理などの不備を考えていて、しかもそれでもやはり人民元を取り込んでいかなければいけない。しかし、それがなかなか難しいといった声を大きく集めております。そういったことに対して、もしかしたら的外れなのかもしれないのですが、日本が積極的に人民元の通貨スワップに手を上げる。あるいは、ナイジェリアとタイが発表しておりますが、日本が積極的に外貨準備として人民元を保有するという話を発表したりすると、人民元の国際化に非常に拍車がかかるのではないかと思うのですが、例えばそういうことはお考えではないでしょうかということをお伺いしたいと思います。

○伊藤分科会長松本委員。

○松本委員2点ですが、1点目は大野委員と近い、援助効果の今回の釜山ですが、ちょっと追加になりますけれども、バイのレベルでは、先ほど大野委員がおっしゃったように、確かにいろいろ難しいところもあるかもしれませんが、財務省の場合はマルチを抱えていますので、マルチの枠組みの中でもう少しこういう働きを目に見える形でできないのか、先ほどの大野委員の質問に追加的ですが、お聞きしたい。

2つ目は、私も石井副財務官の立候補は大変心強い話だと思っているのですが、一方で、こういう形で日本政府が国際機関のトップというか、そこに候補を擁立する場合に、どのようなことを考えているのかというのが気になりました。私自身は環境系のNGOにいたこともあって、もちろんGEFを日本政府がこれから非常に重視するということであれば、それは歓迎ですけれども、本当に国際機関がやることと何か日本政府の考えというのをマッチさせているのか、それとも、適材適所、人材が要るところに人を割り振っているのか。こういう国際機関に人を出すときの何か考え方について教えていただければと思います。

○伊藤分科会長ありがとうございました。

釜山について非常に多くの方から質問が出ましたけれども、いかがでしょうか。岡村開発政策課長。

○岡村開発政策課長釜山の会議の御質問を幾つかいただきました。

まず、新興ドナーを巻き込むというところで、舞台裏でどんな苦労があったのかということでございますが、釜山の現場に至るかなり前から、つまり事務方のやりとりの間から、かなり難しい交渉をしております。また、実際の現場でも、これはこの間来られたDFID(英国国際開発省)のミッチェル大臣がおっしゃっていたのでわかったということもあるのですけど、DFIDのミッチェル大臣が北京に行かれて根回しというようなこともされていらっしゃったこととか、あるいは、現場で中国代表団が欠席するという局面もあったということ。私自身が現場で確認したわけではないというのが正直なところですが、奥田先生からも御質問がありました中国もインドも比較的同調して、むしろレシピエントとしての立場を主張するような議論を展開して、議論は難航したということです。深夜にわたって相当長丁場の交渉をした上で、結局、枠組みの中には入るけれども、やっぱり自主的に、つまり、先ほどちょっと御紹介申し上げましたボランタリーに参照するというような成果文書の合意で決着したということが結論でございました。

2点目は、グローバルパートナーシップを設立することで次の場に移行するということで、効果向上についての会議という枠組みが移行するのか、なくなるのかということでございます。この枠組みがどうなるかということについてはオープンであります。ただ、成果文書の中あるいは実際議論の中で、さまざまな援助の効果向上に向けてのいろいろな場、例えばG20の開発作業部会についても成果文書で言及がございますし、開発について議論をしていく、あるいは効果向上の取り組みの重層的なさまざまな場と共同、コラボレーションしていく、work togetherしていくようなことについての言及、合意がございますので、そういう意味ではこれからでございますけれども、幾つかの場が重層的に継続していくということではないかと思っております。

3点目に、日本への示唆という点で、アジアのドナーを集めてアジア・ドナー・フォーラムを6月に日本で開催しました。その枠組みはもちろん継続しておりまして、次回はタイがホスト、アジアのドナーということで中国やインドも中に入れた上で継続していくということでございますので、次のステップについても、日本として積極的にその議論あるいはこの流れをリードしていける立場で努力を継続していきたいと思っております。

○門間審議官援助効果の関係でその他のことについて私から御説明したいと思いますが、日本と中国との関係というか、日本が円借款を出せなくなって、どうやってツールとして中国を説得するのかというような御質問だったと思います。あるいは、松本さんからも、マルチの場なんかでうまくやるべきじゃないかという御示唆をいただきましたけれども、まさにいろいろな場面でそういう働きかけを私どもはやってきています。バイの中で、例えば地域金融協力とかでもいろいろ中国と一緒になりますけれども、そういう場でいろいろな経験を共有していくというのが1つございます。

それから、マルチの場ですと、中国がいない場という意味ではパリクラブとかG8とかで、例えばアフリカの国がものすごく債務残高があってこのままでは開発できないとき、みんなで債務を削減した後に、そういう国が、しかも商業ベースのローンを出したりなんかすることについて、それはやっぱり問題だよねということで、みんなで手紙を出したりとか、そういうことをいたします。それから、中国も入っているマルチの場、例えば今アジア開発銀行でソフトローンのADFの増資交渉をやったりしています。それから、IDAの増資交渉、アフリカ開発基金の増資交渉などで、援助の効果について、増資をするからにはどうやって援助効果を高めるかというのは必ず議論いたします。そういった中で、当然、中国の代表団も来ている中で、こういうことはやめようとか、こういうところにもうちょっと協力しようというような話もしていますし、商業的なローンだけではなくてもっとソフトローンにも中国は貢献すべきではないかみたいなこともいろいろ働きかけておるところであります。

○伊藤分科会長時間がなくなってきたので、全部お答えできるかどうかわかりませんけれども、その他の質問について、どなたか。

○門間審議官その他のアジアの地域金融協力等いろいろございました。

1つはAMROでございますけれども、AMROのスタッフはアジア開発銀行と独立のエコノミストを雇ってございます。アジア開発銀行はメンバーシップがアジア全体でございます。AMROはASEAN+3、ASEAN10カ国+日中韓という13カ国ですので、基本的には今のところこの13カ国の職員を採用して域内のお互いのサーベイランスに資するということでございます。他方で、今回の仙台の会議でも、AMROからも各国の経済政策の評価について発言がありますし、それからアジア開発銀行のアジア担当のエコノミストからもいろいろ指摘をいただきます。また同時にIMFからも参加していただいて、いろいろ御指摘いただくということで、相互補完的にやっております。

それから、ABMFで諸外国の規制などの解消にどこが一番熱心かというと、それは日本です。それ以外でどこかというと、マレーシアとか、やはり市場が発展しているところほど比較的積極的であります。いずれにしても、規制を規制として解消させるのも一つの案ですけれども、具体的に例えばこういうクロスボーダーの債券の発行をしたいのでここの規制を直してくれと、両方からやるのが正しいと思っていまして、実は人民元建ての債券の発行をアジア開発銀行にやってもらいましたけれども、このときなどはまさに、これを発行したいからということで、中国政府がわざわざそのため政令とか規制を作っていただいたということで、両面から進めていこうと思っています。

それから、格付機関ですけれども、アジア債券市場イニシアティブを始めた2003年のときからアジアの格付機関の問題は私どもとしても議論していまして、まずはACRAA、域内の格付機関の協力体がございますので、こちらといろいろ交流をしております。今またこの交流を活発にしておりまして、まずはこの格付機関の中での活動を支援していこうと。彼らは何をやっているかというのは、1つは、お互いに格付のためのコンペンディアムといいますか、モラルみたいなルールを作っていって、そういう意味で向上しよう。それから、域内でもまだあまり発展していない格付機関もあります。そういうところに対しては自分たちで技術指導をやっています。例えばセキュリタイゼーションの格付をどうやってやるかというのはトレーニングコースなどを自分たちでやっています。さらに、まさに各国の格付は比較可能性がない。この国のトリプルAがほかの国のトリプルAとどういうふうにリンクするのか。例えば、タイの格付とほかの格付とどういうふうに比較していいのか、今のところ何もない。まさに比較可能性を高めないと意味がないので、そこを今ACRAAにおいて研究をしていただいております。それについてはアジア開発銀行も含めて技術協力をしていまして、彼らに対しては、来年5月のASEAN+3の財務大臣会合までに何かそれについて1つ大きな進展をしてほしいというふうに言っています。アジアの格付機関も、例えばグローバルな格付機関と提携なんかしていて、大体手法はほとんど同じですが、問題はデータの蓄積とその評価だと思っていまして、このデータについてある程度域内で共有することを今進めてもらっております。

それから、域内で格付機関を作ってしまったほうが早いのではないか、そういう御指摘もあると思います。ただ、作っても、結局マーケットの方がそれを信頼してくれるかどうかが大事ですので、先ほど申し上げたように、まずはアジアの格付機関が共通でできるような、いわばインフラを整備していくのが必要ではないかと思っております。決してそういう可能性を排除するわけではないのですけれども、今のところは各国の格付の比較可能性をまず進めていこうと思っております。

とりあえずは以上であります。

○木下国際局長それでは、私の方から、人民元の国際化となぜ石井副財務官かという御質問についてお答えいたします。

人民元の国際化については、円の国際化を蔑ろにしてけしからぬではないかという意見がもちろんあり得ることは十分意識しているものの、これだけ日中間の貿易取引が拡大してきた中で、いわば円を除けばほとんどドル建て取引ということを考えれば、できるだけ使い勝手をよくすることは考えなければいけない。そういう意味では、やはり人民元の国際化と円の国際化は両方進むようにすることが重要だと思います。それがまたひいては東京市場の活性化にもつながるという観点から、これはいろいろなことを考えなければいけないというふうに我々は今思っていますし、いろいろ検討しているというのが第1点です。

それから、そういう中で人民元との通貨スワップの拡大が今すぐテーブルの上にあるかというと、ないわけです。あとは、外貨準備として人民元を持てば良いじゃないかという御指摘については、我々も勉強すると、IMFの基準だと人民元は厳密にはまだ外貨準備にならないそうです。ただ、中国は日本にとって最大の輸出入の相手方であるし、現実問題として中国が日本の国債を取得していることも考えれば、我々もそういう点について思考停止してはいけないと思っておりまして、考えていきたいと思います。

それから、石井さんの件については、1つは、環境の世界に日本人がいて指導的役割を果たすことは、広い意味では日本の国益にかなうのではないかということ。2つ目には、最近、開発援助の世界で環境という観点が非常に重要になってきていることを考えると、学会にはそういうことを研究されている方は多いのかもしれませんけれども、行政の世界では如何せんそこら辺の知識が不足しておりますので、そういうところに日本人が行っていただいて、我々にもそういう知見をフィードバックしていただくということであれば非常に意味があることであろう。そういう中では、石井さん本人の御希望、経歴等々、そういうものが総合勘案されてこういう結論になったということでございます。

○伊藤分科会長人民元の国際化は、4週間前に北京でコンファレンスがあって、そこに出した論文が私のホームページからリンクが貼ってありますので、御覧ください。

残りの国際収支マニュアル第6版への移行に伴う報告省令改正についてと、事業仕分けを踏まえた外為特別会計の対応について、お願いします。

○市川為替市場課長資料3と4をまとめて説明させていただきます。

資料3でございます。

1ページおめくりください。IMF国際収支マニュアルの改訂、これは2年ほど前にこちらの審議会に御説明いたしましたが、IMFは各国が作成する国際収支統計のマニュアルを定めておりまして、その第6版が3年前に発表されました。

2ページ目でございます。この第6版の特徴でございますが、1、2、3とございます。まず、経済のグローバル化にあわせて証券投資の区分や直接投資の定義を厳密化しました。2番目、GDP統計との整合性を高めております。3番目、その他、「現行統計の資本収支を」云々というところは、次の3ページ目にポンチ絵をつけてございます。上の箱に入っておりますように、左右のバランスが、今までの経常収支+資本収支+外貨準備増減=0という教科書によく載っているequationが、新形式になりますと、経常収支+資本収支=金融収支、その中には外貨準備増減も入ります。物の移動と金融資産の移動が左右でバランスするequationに変わるということでございます。

さて、この新しい統計への対応でございます。4ページ目でございますが、我が国としては新統計への移行を平成26年に予定しております。しかしながら、これは報告をしていただく企業や金融機関に対応準備期間を十分とっていただく必要があるため、本年11月3日から12月2日の間、既に新たな報告省令案をパブリックコメントにかけてございます。その省令改正の内容としては、(1)が今申し上げたマニュアル第6版への対応に係るものでございます。もう1つが、この際、報告書の簡素化など規制緩和というか、負担軽減を図るものでございます。意見募集にかけまして、今意見が出てきているところでございます。

最後、5ページでございます。今後のスケジュールでございますが、寄せられた意見に対する対応を年内に取りまとめて、改正報告省令の公布としたいと考えております。そして、年明けになりますと、報告書の簡素化部分を先にやるということでございます。それから、26年1月、マニュアル改正に係る部分の実際の施行になるということでございます。

これが資料3でございます。

次に、資料4について、また駆け足で御説明させていただきたいと存じます。資料4は、昨年の事業仕分けで取り上げられました外為特会の経理の仕組みについてですが、今般、対応方針やスケジュールが固まりましたので改めて御報告させていただくものでございます。

1ページをお開けください。昨年の事業仕分けでの指摘は主に3点でございます。既に6月に詳しく報告しておりますので簡単に振り返りますが、まず剰余金でございます。これは、外債の利子収入とFB(政府短期証券)の利払いとの差額の問題でございます。

2ページの左側の参考のところに書いてございますが、御承知のとおり、外為特会は過去60年間営々と外貨資産の運用をやっておりました。その中で50兆円の剰余金を稼いできたわけでございますが、30兆円強は一般会計に繰り入れてきた。この結果、外為特会に積み立てられているのは20.6兆円。これが為替差損より小さいものですから、外為特会は現在14.2兆円の債務超過となっているわけでございます。仕分けのときの指摘は、特会にとめおく部分はきちんと残して債務超過を解消できるよう、一般会計繰り入れのルールをきちんと作りなさいというものでございます。

また1ページに目線をお戻りいただきまして、2番目は資金のあり方(積立金の取り扱い)、これは財投預託の問題でございます。

これも2ページ目のポンチ絵を見ていただきますと、先ほどの剰余金が積立金、紫になりまして、制度上これと同額をオレンジの財投預託金、財投預託しなければならないことになっております。ただ、右側の絵を見ていただくと、外為特会には政府短期証券という借金が財投預託20兆円に対応する分も含めて大量にある。そこで、仕分けでは、財投に預けていてもしようがないでしょう、これを借り方、貸し方両方から落とすほうが合理的ではないかという指摘でございました。

3つ目、これはまた1ページに戻っていただきまして、3番目の項目でございます。外為特会は多額の外貨資産を保有していて、その運用益も外貨で入ってくるのですが、今の制度では円貨で経理するために、入ってくるのと同額のFBをまた発行しなければならない。これによってバランスシートが左右ともに水膨れする仕組みになっておりまして、これを改めろというのが仕分けの指摘でございます。

さて、これにどうするかでございますが、3ページは飛ばします。4ページを御覧ください。左側に評価結果、右側に対応案を取りまとめてございます。

まず最初の剰余金の問題でございますが、剰余金というものは長期的に外貨資産の30%分の積立金を積み立てていくという目標を立てております。これだけ持っていれば、いろいろな為替の変動、金利の変動に対応できるだろうということですが、そのためには毎年毎年の剰余金について30%以上の留保が必要だということになりました。これを新たなルールとするのですが、一方で、今、一般会計も大変苦しい状況でございまして、中期財政フレーム期間を定めてございます。この期間は一般会計も特別会計もみんな歯を食いしばって頑張るということでございますので、この一般会計への繰り入れにつきましては財政事情にも配慮して運営したいということでございます。

2番目、積立金の取り扱いの対応でございますが、右側、やや技術的ですが、当面、現行制度のもとでは財投預託金の満期分が返ってくるものを、繰替使用という仕組みがございますので、これを使って繰り替えることでFBの圧縮に使うことを考えてございます。

3番目と申しますか、ただ、この繰替使用というやり方ですと、入ってくる分だけしか消えていかない。上積み部分しか手当てできませんので、最終的には、下の方でございますが、法律改正を行って、財投預託分を根っこからFBの相殺のために使いたいというふうに考えております。

それから、左側の最後、一番下、外貨建て運用収入の問題でございます。同額のFBを発行しなければならないという点に関しましても、やはり法律改正をして改善していきたいと考えてございます。

このように、仕分けに対応するためには法律改正が必要なのでございますが、5ページでございます。実は今回の特会仕分けで、外為特会だけでなくほかの特会につきましてもいろいろな指摘がありました。今回の通常国会では、いろいろな特会を横串に刺した法改正を考えているようでございますので、この中で外為特会分も手当てさせていただきたいと考えてございます。

以上、御報告でございました。

○伊藤分科会長どうもありがとうございました。

どうしても質問したいということがなければ、時間を超過しておりますので。松本委員。

○松本委員すみません。民間評価者としてはちょっとだけ聞いておかなければいけないことがあるものですから。一番気になっているのは運用面のルールです。これは、仕分けのときにも議論になったと思うのですが、30%というのは平成16年のときのシミュレーション結果を出されています。しかし、仕分けのときには、これがわかりにくいという議論になって、30%以上というのをこのまま残すということは、当時の枝野さんの最後のまとめのところでも、素人一般の方にもわかりやすいような形で見せていってくださいというコメントがついていましたけれども、この30%の維持で本当に大丈夫なのか。つまり、説明ができるのかというところが私は気になっているので、これは19年度のシミュレーション以外の何か方法が必要なのではないかということがコメントです。

○田原資金管理室長そちらの件につきましては、その場でそういう御指摘をいただいて、これについては継続的に検討していくということでございます。仕分けの場で一番強く言われたことは、ストックについてはこういうルールがあるけれども、毎年の繰り入れ方は非常に場当たり的ではないかということでございましたので、昨年まずはそういう対応をとらせていただいたということでございます。

○伊藤分科会長一般会計にそもそも繰り入れるのはおかしいんじゃないかというのが私の持論ですが、時間が超過してしまいましたので、これにて今日は散会にしたいと思います。どうも御協力ありがとうございました。

午後3時04分閉会

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