迅速に次の対応へ【丹呉 泰健・前財務次官】

復興に向けた第一次補正予算が成立。前財務次官の丹呉泰健氏は、東北新幹線の全線復旧など好条件を挙げながら、日本経済回復への期待を示す。

復興に向けた第一次補正予算が成立。前財務次官の丹呉泰健氏は、東北新幹線の全線復旧など好条件を挙げながら、日本経済回復への期待を示す。

東日本大震災からの復旧・復興のための2011年度第一次補正予算が5月2日に成立した。

予算規模は4兆153億円で、道路、港湾、空港などのインフラ復旧に1兆2千億円、学校など施設復旧に4千億円、仮設住宅10万戸超の建設に3600億円、瓦礫処理に3500億円などが主な内容である。その財源は、歳出の見直しで捻出し、今回は国債を財源としていない。

国会では、休日を返上して審議し、野党も賛成した。補正予算に合わせて税の減免などを規定する法律も成立した。震災で被災した企業のため日本政策金融公庫の融資規模も拡充した。政府は直ちに予算を執行して被災者の方の生活支援や、被災地の復旧のために全力で対応することとしている。

復活の芽を一日一日大きく

この間、東京電力が原発問題の工程表を発表した。原発のため避難されている方が一日も早く戻れることを祈りつつ、原発問題が収束できることを期待したい。

また、この連休に多くのボランティアの方が被災地に入った。日本人の連帯感の表れである。素晴らしいと思う。東北新幹線が全線復旧し、経済活動も戻りつつある。第一次補正予算の執行と併せ、日本経済の回復がこれから期待できる。マーケットも冷静さを取り戻している。

被災地の復興をどのように具体化し、どう実現するかの議論が官邸で始まっている。被災地の意向を最優先するのが基本である。このために東北を特区にするという構想もあろう。また、新しい防災対策、電力消費を効率化する対策、東京集中の見直し策も併せて考えることが必要である。いずれにしても、日程を明示して迅速に対応してもらいたい。

一時避難した外国人の方が戻り、外国人観光客も再び訪れ始めている。応援してくれた各国に感謝申し上げる。

日本は、必ず復活する。その芽が出つつある。その芽を一日一日大きくしていかなくてはいけない。このために、次の一歩を政官民と国民が協力して迅速に進めたい。

(5月3日 記す)

バックナンバー

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第2回「迅速に次の対応へ」(5月3日)
第1回「国債発行は海外の信認失う」(4月2日)

丹呉 泰健

丹呉 泰健
Tango Yasutake

1974年大蔵省(現財務省)に入り、主計局主計官、小泉首相秘書官、理財局長、官房長、主計局長を経て2009年事務次官。10年に退官後、財務省顧問に就任。読売新聞グループ本社監査役も兼任。