2009-05-20
レイプゲーム規制問題について「まじめに」考えるためのまとめ1
※最初一つの記事だったんですけど、文字数が上限を超えたので3分割しました。
レイプゲーム規制問題について「まじめに」考えるためのまとめ2 - 斜め上から目線
レイプゲーム規制問題について「まじめに」考えるためのまとめ3 - 斜め上から目線
Equality Nowが日本のレイプエロゲ―を批判し、それが報じられて以来、ネット上ではそれについて様々な意見に基づいた議論がなされてきました。
その中には、もちろん真面目で説得力のある議論もあったのですが、しかし一方で、自分の意見を他人に理解してもらい、他人を説得しようとは一切考えず、ただ自分たちの自尊心の保持だけのために文章、ブックマークコメントや2chへの投稿を書く、いわゆる内向きの人々も多く、そしてソーシャルブックマークの性格*1から、そのような意見ばっかりが脚光を浴び、結果「悪貨が良貨を駆逐する」という言葉通り、真摯に真面目な意見が注目されなくなるということが、生じてしまいました。
しかし、それがインターネット上で公開される以上、その様な内向きの意見であっても「外の人」、つまり反エロゲ―規制論者ではない人にも見られるわけです。そしてid:yuubokuさんもid:yuuboku:20090509:1241856965にて
あと、これについては苦言を呈さねばなるまい。
Thsc サブカル 我々は悪魔の証明を要求する気違い女性様共に対して立証責任を負うし、創作物に対する偏見・ステレオタイプは一切合財正当、という主張だな/モノを踏みにじっても何とも思わないと指摘しておく。要はモノ化してない
挙証責任については前の議論を参照してください。それよりも心配なのは、「公開ブックマークにつけられたコメントは世界のどこからでも読める」という至極当たり前の事実はどこにいっちゃったんだろということです。
反ポルノ規制論者は「社会通念上よろしくないとされがちなものを擁護しようとしている」時点で重いハンディキャップを背負っています。人々の理解や共感を得にくくする言動は、いわばオウンゴールのようなもので、規制論者を利するだけです。本当に創作物を守りたいなら、「気違い女性様共」などという文言は即刻削除すべきです。
(略)
- 自分たちの言動が「世界中の人から見られている」ことを意識しよう。どんなに論理的でも、他人を悪し様に言う人と仲良くしようという人は少ない。味方を増やす工夫と努力が大事。*2
と示唆するように、そのような内向きな人々の意見が目立ってしまえば、そうではない外向きの人々の人々が真面目な議論をさんざんやっても、それは顧みられず、結果的に「反ポルノ規制論者はあんなことを言う奴らばっかりなんだから、やっぱりポルノ規制に与しよう」というような人々が増えてしまう現象が生じてしまうのです。これは、真面目に反ポルノの議論をしている人たちにとって、余りに不幸なことでしょう。
そこで今回は、そういう内向きな発言ではない、外の、「エロゲ―を規制したい」と考えている人にもきちんと伝わる真面目な議論だけをとりあげ、そこでどんな議論がなされてきたのか、それについての僕の考えも公表したいと思います。このような記事により、反エロゲ―規制論者ではない「外の人」に、きちんとネット上には、そういう内向きの議論ではない、まじめで説得力を持つ議論もあるということが、伝われば幸いです。そして、そのような議論が注目され、それぞれの人が取り上げる議論と同じように外向きな議論をし、それにより、内向きな発言より外向きな議論が注目されるようになれば、更に良いなぁと、僕は考えます。
そのまえに
僕が何か意見言うのがそもそも気にくわないという人もいるかもしれないので、最初に今回の議論で参照する「まじめ」な記事の一覧を貼っておきます。僕の意見に興味なくても、これらのページを読めば、今回の事件に対しどのような「まじめ」な議論が為されたかよく分かりますから。
- Equality Nowのエロゲに対する声明を訳してみた。(更新あり) - yuubokuの日記 - 断片部
- 実際に性犯罪が増えるか減るかは(あまり)問題じゃないんだってば - Chambre Resonnante
- 自分がどう見られているかには注意を払ったほうがいいよね(若干改) - Chambre Resonnante
- 某エロゲ問題へのブクマコメントが怖い
- 元増田です
- 404 おさがしのページは見つかりませんでした - はてなハイク
- 404 おさがしのページは見つかりませんでした - はてなハイク
- その「少女」は本当にいないのか? - OAF
- 現実の差別も私的なファンタジーに基づくのだし - OAF
- 大人のための有害情報規制について - 児童小銃
- 『レイプレイ』事件について - 児童小銃
- レイプ・妊娠・中絶というプロットがムカつくというだけの話ですが何か - 包帯のような嘘
- エロゲが日の当たるところに出ちゃってみんな困っているらしい - あんとに庵◆備忘録
- 鬼畜に愛はいらぬ - 枕流亭ブログ
- 鬼畜を調教すべきか - 枕流亭ブログ
- 例のゲームの件について。結論はないよ! - U´Å`U
- 例のゲームの件について2・あんまりにも長いので自分でも驚いた。 - U´Å`U
- 酷いゲームの話 - blacksorceryの日記
- にがにが日記
- ヴァーチャル児童ポルノの問題 - キリンが逆立ちしたピアス
- 性暴力表現と規制 - good2nd
- はてなダイアリー
- 404 Not Found
- 404 Not Found
そもそもEquality Nowはどのようなことを主張しているのか
さて、本題に入る前に、そもそも今回の問題の発端であるEquality Nowという団体の抗議とは、どのような抗議なのでしょうか。id:yuuboku氏がEquality Nowの声明文を翻訳してくれているので、それを読んでみることにしましょう。
Equality Nowのエロゲに対する声明を訳してみた。(更新あり) - yuubokuの日記 - 断片部
特に重要だと思うところを引用していきます。
【日本:レイプ・シミュレーター・ゲームと性暴力の正当化】
12歳前後の女子学童が通勤電車に乗っている。後をつけていた男が彼女の体に触り、彼女に性的いたずらを試みる。やっとのことで電車は停まり、恐れをなした彼女は公衆トイレに駆け込むも、追って来た襲撃者は彼女の腕を縛り、レイプする。襲撃者は彼女を監禁し、様々な状況下で彼女を何度もレイプする。彼女の母親と、10代の姉妹もまた同じ運命をたどる。この一家は以前、かつてこのレイピストが別の女性に対して性犯罪を図った件について、姉妹の姉が警察に通報したことにより、その報復としてレイプの標的とされたのである。
以上が、イリュージョン・ソフトウェアが開発したレイプ・シミュレーター・ゲーム「レイプレイ」のあらすじである。このゲームは日本で販売され、Amazonでも取り扱われている。
漫画の形態をとる過激なポルノグラフィーはhentaiと呼ばれ、漫画本やアニメーション、コンピューター・ゲームやオンライン・エンターテインメントなど様々なメディアで配給されており、日本では簡単に入手可能で、またその使用は広く受容されている。hentaiの主なテーマとしてはレイプ、輪姦、近親相姦また女子学童に対する性的虐待が含まれる。後者の類のhentaiはLoli-Conとも呼ばれ、少女が教師のような力のある大人にから性的虐待を受ける描写をしばしば行う。日本ではこれまで、レイプやセクシュアル・ハラスメント、女性または少女に対するストーキングを含むコンピューター・ゲームが数多く生産されている。これらは、プレイヤーの操作によって何が起こるかをプレイヤーが制御できるという点で、他の形態のhentaiの一歩先を行くものである。例えば「レイプレイ」では、画面上に表示されるペニスや手によってレイプならびに性犯罪を再現している。
(略)
日本は、CEDAW第五条(a)「両性のいずれかの劣等性若しくは優越性の観念又は男女の定型化された役割に基づく偏見及び慣習その他あらゆる慣行の撤廃を実現するため、男女の社会的及び文化的な行動様式を修正すること」に従う義務を有する。加えて、日本国憲法第十四条では法の下の平等を保障し、「人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において」差別があってはならないと述べている。「レイプレイ」のようなコンピューター・ゲームは、性に基づく差別的振る舞いやステレオタイプを許容するものであり、これは女性に対する暴力を維持する。日本政府は、このようなものをはびこらせず、女性の平等を妨げるこれらの振る舞いや行為に打ち勝つための有効な指針をとるべきである。
推奨される行動
イリュージョン・ソフトウェアに対し、「レイプレイ」を含む、レイプやストーキングなどの形態の性的暴力を含んだり、女性を貶めるようなすべてのゲームの販売を即刻中止するよう要求する書面を出してください。当該の会社には、よき商行為として、彼らの営為が社会また公共の利益に対して与えうるあらゆる負の影響について考慮する責任があるということを示してください。同様の書面をAmazon Japanにも出してください。以下に示す日本政府機関にも、彼らがCEDAWに対する日本の義務および日本国憲法に従い、女性に対する差別の撤廃、特に「レイプレイ」のような、女性や少女に対する性暴力を正当化し、増長するようなコンピューター・ゲームの販売を禁止するよう要請してください。
この声明文はかなり重要です。というのも、このEquality Nowが主張しているようなポルノ規制の要求は、日本でなされる「わいせつ規制」とは全く違う観点からなされてるんですね。
今までの日本のポルノ規制というのは、主に「わいせつ規制」という観点からのものでした。
わいせつな文書、図画その他の物を頒布し、販売し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役又は250万円以下の罰金若しくは科料に処する。販売の目的でこれらの物を所持した者も、同様とする。
ここでいう「わいせつ」の定義は、裁判所によれば
- 通常人の羞恥心を害すること
- 性欲の興奮、刺激を来すこと
- 善良な性的道義観念に反すること
というようなことです。ここで重要なのは、この定義は、あくまでそれが「恥ずかしいもの」、「性的なもの」であるかが重要であるという点です。ヘアヌードで、性器が見えればわいせつだが、見えなければわいせつではないというように。だからこそ、例えレイプであろうが、合意の上でのセックスであろうが、単なる性器写真であろうが、十把一絡げに「わいせつ」だという風に規制されるわけです。
しかし一方でそれ故に、それは余程のことが無い限り適用されません。だって今どき、性的描写ごときが、そんな人の捕まるほど出してはいけないものと考える人はあまり居ないですから。わいせつを広く捉えて少々の性的描写で逮捕していたりしてたら、国民感情*3が許さないでしょう。
しかし、今回Equality Nowが提示した問題点は、そのような「わいせつ」という概念に基づく物ではありませんでした。Equality Nowは、今回のエロゲ―を批判するときに、非難されるべき点として、次のような表現を使います。
- レイプ、輪姦、近親相姦また女子学童に対する性的虐待
- レイプならびに性犯罪
- 性に基づく差別的振る舞いやステレオタイプ
- 女性に対する暴力
- レイプやストーキングなどの形態の性的暴力を含んだり、女性を貶める
これらにおいて問題となるのは、それが「わいせつ」であるかどうかではなく、それが「女性に対する暴力」を維持するようなものであるかどうかなのです。今回のようなレイプゲームが問題となったのは、それが性的なものであるからではなく、女性に対する差別を維持するものであるからなのです。
この様な視点から規制を行うというような政策は、これまであまり取られてきませんでした。しかしこれは今までの「わいせつ規制」に比べて、かなり国民感情の支持を得やすい規制ではあるでしょう。大多数の人は、「レイプ」を憎き犯罪だと捉え、そのようなことは悪だと考えています。故にそのようなレイプを肯定的に描く、そんな作品は別に規制しても良いんじゃないかと思うのは想像しやすいでしょう。
ネットでも巻き起こる規制擁護論や、レイプゲーム批判
事実、今回の事件を受けて、ネット上でも、そのような規制だったらしてもいいのではないかという意見や、そこまではいかなくても、現在のこのレイプや痴漢を楽しむようなゲームが溢れかえっている現状を憂慮・非難する声が上がりました。
痴漢で強姦で中絶させるゲーム、って、誰からの顰蹙も買わずに堂々とできるもんだと思ってるのか? やってることがバレた後でなお同じマンションに住む隣のおねえさんやおばさんから普通の近所付き合いをして貰えると思ってるのか? 実の息子でもたたき出したいと思う親はいる筈だぞ。立派な家父長なら裏の窪地に連れ出して射殺するだろう。一家の恥だ。そういうものなんだから、やるならそういう覚悟でやればいい。どっからどう見ても反社会的エロ妄想を商品化したり消費したりしている癖にお国に守って貰いたがってる連中って一体何なんだ? 地下に潜れよ。情けない。
言論の自由っていったいなんだろう。そんなに声高にいうことなの?それがいちばんの正義なの?
(略)
だけど、フィクションならいいわけじゃないよ。
フィクションは誰も傷つかないわけではない。そういう嗜好の人の発散場所になりうるけど、一方で、「そんな嗜好はたいしたことない、わりとメジャー」っていう土壌を作りだすんだよ。
だからそんなフィクションが存在するならせめてもっともっと潜ってほしいよ。
痴漢被害について理解を示していたようなブックマーカーたちが、この件では創作の自由とかいうことを声高に述べていて、ああやっぱり駄目なんだ、わかってもらえないんだ、と思った。
男性嫌悪のつもりはないんだけれど、でももしごく一般の男性が、そんなゲームが簡単に買えることを是としているのなら、何か、とてもショックです。
これらの声はとても大事だと思う。というのも、とかくはてなのような場では、自称「理性的な人」の、自称「理性的な意見」ばっかりが語られてしまう。けど、それが理性的であるかどうかはともかく、少なくともそれは国民の多数とはやはりかけ離れている。そして、物事は多数派の移行によって動くことが多いわけだ。だから、もし愚痴だけを言いたいのではなく、本当に多数派に働きかけ、物事が動くのを何とかしたいとするならば、まさにこういう意見をありがたく思い、それに誠実に対応することが必要になるからです。
しかしそのような誠実な対応は、はてなブックマークのコメントではあまりなかったです。けれど、それでも一部には↓のように
はてなブックマーク - 某エロゲ問題へのブクマコメントが怖い
- id:complex_cat human rights イヤ,本当にわかんねえわ。自分も。/真打登場 http://h.hatena.ne.jp/isikeriasobi/9234280627615912948 2009/05/16
- id:kowyoshi 性, 増田 女性からしたらそうなのかなあ/規制に関しては、規制派が突き進むとどうなるか見てきたから警戒はしてしまう 2009/05/16
- id:kanose エロゲー アングラでいて欲しい、こういうゲームは気持ち悪いという気持ちはわかるけど、あの記事は「非合法化しろ」なので、あそこまで反発を受けたんだと思う 2009/05/16
- id:welchman 「弁えてくれ」という話と読んだ。同意する。 2009/05/16
- id:Ryoui ネットってわりとホモソーシャルだから、女の人からしたら怖いよね。 2009/05/16
- id:bookmarker98 「だけど、フィクションならいいわけじゃないよ。」これも、その手の情報が気軽に流通する事を問題にしている話。せめて、フィクション位は自由にさせてくれ・・・と言いたいところだけど。うーん。分からんでもない 2009/05/16
- id:koisuru_otouto レイプレイ騒動, 抑圧の構造, 露出狂の自由, sexual abuse 増田乙。私はrape創作はギャグで扱えるしrating以上の単純規制はいらんと思うけど。暴力を楽しむ側が規制反対の名分で反抗の声を更に抑圧し正当化するのは卑怯だと思う。←な反応を見ると増田の懸念は合ってるんだなと 2009/05/16
- id:Mossa コメント, 増田, 性, 文化, ゲーム, 社会 一度知ってしまった増田の頭の中にまではゾーニングは届きませんので。/性暴力的表現(etc)への不快には配慮するべきだが、しかし非対称性に権力関係を持ち込むことは認めるべきでないと思う。 2009/05/16
- id:Cuz-orz 表現の自由, 表現規制, 社会 ゾーニングや審査などをもっとちゃんと行うべきだとは思う。けど、感情的には分かるけど、感情で自由を奪うようなことはあってはならないだろう 2009/05/16
- id:akarimisakine 嫌悪感は理解できる/しかし嫌悪感だけで文章を書いてはいけない。見せることに責任は当然あるが、見ることにも責任はある/増田の行為は増田が嫌悪するブクマコメの増田と変わりはない/反面教師の姿勢で見るべき 2009/05/17
- id:n_pikarin7 性 女性は、エロゲとかそういう趣味に対して、怖い!キモい!ありえない!おぞましい!信じられない!ってかキモい!訳分かんない!やめれ!自重!キモいし!って、もっと言ったほうがいいと思う。表現の自由の範囲で。 2009/05/17
- id:Lhankor_Mhy 社会 おおむね同意。ただ、まあ、もうちっと落ち着こうぜ。誤解されそうな書き方だよ。 2009/05/17
- id:libraworks 増田 創作物には何らかの力があって、ネガティブな波及をもたらすこともあるとは思うんだ // だからこそちゃんと仕切り作って、整理しなきゃあかんと思う。 2009/05/17
- id:more_white 気持ちは分かる。/良くも悪くもネット上はいろんな情報が乱雑に載せられているカオスな場所なので、たぶんリアルでは滅多にこんな問題に触れないだろう。/特殊な性癖であることを本人達が自覚しないのはまずい。 2009/05/17
- id:ohnosakiko 嗜虐的(or被虐的)な欲望を満足させるツールがなくならないでほしいという気持ちも、フィクションであってもレイプで抜くんだと考えただけでげんなりする気持ちも、どっちもわかってしまうので困る 2009/05/18
- id:kilrey 言葉, リテラシ "凌辱とか性暴力、「レイプして妊娠させて堕胎させる」なんて話"は下品だし、たぶん芸術価値もないと思う。でも、道徳をルールにするのは危ないんだよね。 2009/05/18
- id:y_arim anonymous, エロ, gender, 言及されました まずは、ありがとうございます。*4そのうえで、id:lisagasuのコメントに付け加えるなら、「レイプして妊娠させて堕胎させる」なんて話が「そういう用途(だけ)」を離れて何らかの意義を持ってしまうほうが危険なんです。 2009/05/18
- id:natukusa 社会 あなたが書いてくれた素直な心情吐露は、少なくとも私には一つの解放でありました。だから感謝しています/最終的な解決およびそれらの認知達成レベルはきっとここだ。 2009/05/20
相手を「バカ」しかいう風に罵倒せず、かといって子ども扱いもしないで、きちんと礼を尽くして相手の気持ちを理解し、そしてその上で自分の意見を言う、素晴らしいブックマークコメントもありました。
問題点の整理
さて、このような暴力エロゲー批判に対し、どのような「まじめ」な議論が出来るだろうか。
まず、僕が思うに今回の問題は3つの問いに分けられると思う。
- レイプエロゲーは差別的かどうか。差別的だとしたら、その程度はどうであるか
- レイプエロゲーが差別的、あるいはそうでなくても何かの社会的問題があるとされるとき、それに人々はどの様に対応すべきか
- 法的規制(販売禁止など)
- 法的ゾーニング
- どの程度厳しくするか?
- 本当にゾーニングは可能か?
- 自主規制(販売自粛、ゾーニング、シナリオへの配慮など含む)
- その他(性差別イメージの撤廃をより訴えていくetc...)
- 上記二つのようなことは、どのような手順で決められるべきか。
もちろん、それら3つの問いはそれぞれ密接に関係しているわけだが、しかしここでは考えることを分かりやすくするために、3つに分けて考えてみる。
1.レイプエロゲーは差別的かどうか。差別的だとしたら、その程度はどうであるか
まず一つ目の問いについて考えてみよう。レイプエロゲーは果たして差別的かどうか。
まず、Equality Nowの考え方について。id:yuubokuが詳しく書いているのでそれを参照しよう。
実際に性犯罪が増えるか減るかは(あまり)問題じゃないんだってば - Chambre Resonnante
YOMIURI ONLINEの記事に対するブックマークコメントでも何件か見られたのが「実際の性犯罪の件数が少なければいいじゃないかメソッド」。
(略)
おそらくこれではEquality Nowのような人たちとは議論がかみ合わないであろう。
(略)
お気づきだろうか。この部分で問題とされているのはレイプ描写そのものでも、この描写に惹起されるかもしれない可能的な性犯罪でもない。そう、ここでは、性差や性犯罪といった物事に向けられる視線こそが問題なのだ。
(略)
「女性を男性の従属物とみなしたり、ステレオタイプな役割を持っているものとみなすような」行いこそが問題視されているのである。平たく言うと、女性への偏見→女性を性的なモノとして扱う描写→女性への偏見→……というデススパイラルが懸念の対象である。この悪循環のプロセスで、女性に対する性的暴力が軽んじられたり、ないことにされたりするのが恐ろしいのだ。これは、「レイプするゲーム→影響されてレイプするようになる」などという素朴思考では決してない。
このあたりを踏まえないで議論しても、おそらくは空回りのままだろう。
わざわざ要約してくれているのを更に要約したってしょうがないので、何も付け足さない。
件のレイプエロゲーは差別的であるかどうか
そして、Equality Nowに同意するかはともかくとしても、件のレイプエロゲーが差別的であるということ自体には、多くの論者が賛同しているわけです。
404 おさがしのページは見つかりませんでした - はてなハイク(id:isikeriasobi)
後者も、現実のレイプにくらべればエロゲーのほうが害が少ないのは認めるでしょうし、前者も、こうしたゲームの価値観が女性蔑視につながるかどうかはともかく、そうした価値観にもとづいていることぐらいは認めるでしょう)。
性暴力表現と規制 - good2nd(id:good2nd)
例えば仮に、被差別部落出身者に暴力や嫌がらせをするシミュレーションゲームが流通していたら間違いなく問題視されるだろうと思いますが、そういったものに近いのではないかと思います。問題はそうした表現が実際の犯罪につながるとかいうことではなくて、そうしたものが大規模に流通しているとき、流通し消費されていること自体がある種の社会的合意の現れとなってしまうということです。
もしも日本が性差別などとは無縁の社会であれば、逆にこうしたゲームはさして問題とならないかもしれません。ところが現実には、性差別は存在するし、「レイプする人は元気がある」などと政治家が発言してしまうような社会なわけです。あるいは性暴力の被害者に責任があるといって非難する人が少なくない社会なわけです。このような社会において「性暴力を肯定的に表現する」ことが「性暴力を容認する」ことに繋っていると考えるのは、それほどおかしなことだとは思いません。
酷いゲームの話 - blacksorceryの日記(id:blacksorcery)
では、今回の陵辱を主体のゲームの場合の描写はどうか。
最初は嫌がっているけど、何度も無理矢理やられるうちに、身体が感じて、行為を受け入れてしまう、調教される、堕とされるとかが楽しいんでしょ。
女性の感情は無視。人格も無視。肉体の奴隷。
嫌よ嫌よも好きのうち?
その上で妊娠させ、堕胎させるシチュエーションまで付いたらまさに差別だろう。
相手の自由を奪い支配しているのに、差別でないと言うのは無理過ぎ。
男の子牧場の家畜扱いに差別的な匂いを感じれた人なら理解できると思う。
差別じゃないという、説明があるなら教えてほしい。
想定できる意見としては「ゲームの登場人物は実在の女性でないから差別じゃない。問題ない」というのがある。
確かに実際の女性ではない。
けど、これは実在の女性の代替だ。
だってそれで性欲の処理するんでしょ。
その手のゲームの主人公、自分の名前いれたり出来るし、プレイヤーの指示に従うよね?
自身の投影だよね。
代替品に対して行う差別的行為は、代替の元である実在の女性に対しても差別的と取られるのは当たり前だと思う。
女性が嫌悪するのも、全くおかしいとは思わない。
今回のレイプエロゲーは差別的であるという話をするとき、必ず出てくるのが、id:blacksorceryが批判したような「ゲームの登場人物は実在の女性でないから差別じゃない。問題ない」という議論である。
しかしid:blacksorceryが言うように、もし全くの架空ならば、では何でゲームで表現される被害者は人間の、しかも女性なのか?もし全く現実と関係ないのならば、それこそ別に人間の女性である必要なんか全くない。レイプエロゲーというゲーム自体、実在するレイプという、女性に対する差別的な性暴力に由来するものではないのか。もし人々の心に「レイプしたい」=「女性を屈服させたい」という差別心がなければ、そもそもレイプゲームなどというものは存在しない。
このことについては、id:cmasakさんも僕と同じようなことを述べています
例のゲームの件について2・あんまりにも長いので自分でも驚いた。 - U´Å`U
でもやっぱりレイプ・妊娠・中絶っていうセットは、明らかに女性差別に根をさすものでしょ。歴史的に見て女性のリプロダクティブ・ライツがどれだけ蹂躙されて来たか(というか蹂躙されて来た種々の権利を主張するために「リプロダクティブ・ライツ」っていう言葉が生まれたんだけど)を考えたら、ってそういう言葉を使うと脊髄反射的に反発されそうだから砕くか。歴史的に見て女性が自分でセックスする/しないを選ぶことができなかった/できない時代・文化、妊娠する(時に、妊娠するであろうというだけの)ことで社会活動から追いやられて来た時代・文化、そして中絶の選択を常に女だけが背負わされて責任も良心の呵責も社会的制裁も身体的苦痛も押し付けられて来た時代・文化というのは、少なくとも近代国家においてはそこら中にあったし、未だに無くなっていない。そういう社会的背景がある、という文脈の中で、このゲームがあるわけだもの。ムカつかない方が難しいわ。
たった一つの表象の形態が問題なんじゃなくて、それがいかに社会構造と結びついているかが重要なの。「 Three Women's Texts and a Critique of Imperialism 」*1でガヤトリ・C・スピヴァクは帝国主義の時代のイギリス文学が当時の植民地主義と無関係ではなかったと言っている。だからって当時の植民地主義的な文章を全て焼き払ってしまえば植民地主義的な精神が途絶えたかと言えばそうではない。だからやっぱり検閲は答えとしては間違いだと思うのだけれど、でもやっぱりずっと「ムカつく」「ムカつく」って言い続けないと負けるんだ(何に)。
そしてその他にも、id:Domino-Rさんも
CG画像は単に記号に過ぎないが、現実の性的虐待もやはりかなりの部分記号的な行為なわけで、だからこそそれは単に暴力であるだけでなく「差別」である訳だ。その意味で本人達がいくら識別可能だと言い張っても、両者に本質的な差は無い。現実の性的虐待もファンタジーに基づいているからだ。*1
だからこの種のエロゲは性関係に関する差別的なファンタジーを助長/擁護するものだと言われて仕方ない。
無論そのようなファンタジーであったとしても個々には勝手に持っていいものだが、エロゲは「商品」だ。大量生産される商品として市場に提供され、売買関係(無論社会関係である)が成立しているということは何を意味してしまうだろう?
現実には、差別的な商品=メッセージが存在し、それを消費=支持する人がいる、と見られるわけだ。それは一般的な商品市場に対する我々の印象に基づくもので、誤解とは言い切れない。
この売買関係をどう解釈しようが、「児童ポルノ」自体とそれを成立させる背景を肯定する社会的なメッセージだとしかならない。自由市場における態度表明は、個人のファンタジーの問題に過ぎないわけでないからだ。それは市場で行われる社会関係の一部であり、カネ=支持が支払われている以上、購入者はこの差別的なメッセージの社会的な再生産/流通に積極的に加担していると言われて仕方ない。
(略)
実際、私的なファンタジーといいながら、エロゲ等かなりメディアとか流行とか外部情報に依存した嗜好だよね。これってぶっちゃけると相当程度社会的なものだと思う。
なのに「私的」とか言っちゃうのは、「性的虐待を否定」する態度を社会的に流通させる回路を持たずに、消費だけはしたい、という手前勝手な態度を正当化したいためか。
無論それも仕方ないといえるし、やっぱ妄想したいわけだが、外部のリソースによってのみ駆動されるような妄想を「私的な妄想」と言われてもね、というのはあるだろう。
ということを述べ、やはり件のレイプエロゲーは「差別的」であると述べている。
「差別的」の程度はどのようなものなのか。人の行動に影響を与えるのか
しかし一方で、「差別的」であることはみなさん認めても、ではその「差別的」というのが具体的に酷いものなのか、という点については意見が分かれています。
- 差別に根ざしているが、差別を維持もしないし、増強もしない
- 差別に根ざしており、差別を維持はするが、それを増強はしない
- 差別に根ざしており、差別を維持し、差別を増強する
- 差別に根ざしており、具体的にレイプなどの、差別的な性暴力を誘発する
- もともとレイプをしようとしていた人が、レイプエロゲーを契機に実際の行動に走る
- レイプなんて一切考えたこともない人間が、レイプエロゲーをやって実際にレイプを行う
このような、様々な「差別的」の程度があるわけです。この内、Equality Nowが根ざしているのは、id:yuubokuの記事の引用で示したように、2、3番なわけです。
ここでよく「強力効果論は否定されているから、フィクションは現実に何の影響も与えないんだよ」という反論をして、レイプエロゲーは差別的ではない、ないし、差別的であったとしても何も人に影響は与えないという主張をする人が居ます。しかし、例え強力効果論が否定されたとしても、フィクションが何も現実に影響を与えない、というわけではないということについて、id:gkmondさんが説明しているので引用します。
例のゲームの件について2・あんまりにも長いので自分でも驚いた。 - U´Å`U
もっかい弁護士さんの反論を引く。
? エロゲーはただのフィクションです。女性差別や女性に対する暴力を助長するものではありません。
http://yama-ben.cocolog-nifty.com/ooinikataru/2009/05/post-0c01.html
抗議に怒っている人の反論の基本はこれだろう。そうした主張の論拠になりそうな話はたとえば、メディアの影響――見てはいけない見せてはいけないに書かれているこの辺りかと思う。
(略)
これはつまり、暴力的なメディアの影響を例にあげるなら、暴力的なメディアに触れた人間は番組などに影響されて一時的に暴力性が+αすること(ついついアチョーとロッカーを蹴りたくなったり)はあっても、根本的な暴力性が変化する(人間として凶暴化する)ことはないということだ。言い換えれば、元々暴力的な人間が実際の暴力行為を起こす引き金にはなっても(メディアの影響による+αで暴力行為発生の閾値を越える)、穏やかな人間の性質を暴力的に変えることはない、ということになる。
これを踏まえて成人ゲームは「女性差別や女性に対する暴力を助長するものではありません。」と言えるかと言えば、言えるのかもしれないが、この主張は「だから無害です」と読まれかねない(っつーか、そのつもりでこう主張する人もいるんじゃないかと思われる)。
しかし、たとえば今回の抗議団体の声明の日本語訳を見ると、
「レイプレイ」のようなコンピューター・ゲームは、性に基づく差別的振る舞いやステレオタイプを許容するものであり、これは女性に対する暴力を維持する。日本政府は、このようなものをはびこらせず、女性の平等を妨げるこれらの振る舞いや行為に打ち勝つための有効な指針をとるべきである。
Equality Nowのエロゲに対する声明を訳してみた。(更新あり) - yuubokuの日記 - 断片部
と言っているので、助長するかしないかだけが問題なわけではないし、助長しないけれど維持する(「メディアの影響――見てはいけない見せてはいけない」引用文5パラグラフ目参照)*5のであるならば、無害とは言えないだろう。
強力効果説が否定されたとしても限定効果説は否定されるわけではない。
僕が更に付け加えるとするならば、そもそも社会学の通説では別に強力効果説は立証されなかっただけで否定されたわけではないし、また更に言うならば、今回問題となっているのは強力効果説や限定効果説のように、ある表現が転機的にある行為を引き起こすというものではなく、そのような「レイプ表現」が当たり前に存在することで、女性を従属させるのが当たり前になるという、世界観への無意識の刷り込みなのではないかという考えもある。僕はその考えを支持するが、しかしその根拠にしたって「多くの研究ではそうだったから」としか言えないわけです。
といっても、どーせ僕が何言ってもみんな信用してくれなさそうなので、社会学の教科書を引用しよう。
……かりに暴力の描写が視聴者に影響を及ぼすとすれば、どのようにしてであろうか。F・S・アンダーソンは、テレビに登場する暴力が子供の攻撃性向に及ぼす影響を調べる目的で、1956年から76年までの20年間に実施された67の研究の調査結果を収集、整理している。これらの研究の4分の3は、両者の間にかなり関連性を認めることができると主張していた。こうした研究の内2割で、明確な結果を見いだすことはできなかったとされている。一方、調査結果のうち3%で、研究者は、テレビに登場する暴力の視聴が実際には攻撃性を低下させていると結論づけていた。
とはいえ、アンダーソンが調べたこれらの研究は、用いた方法や明らかになったとされる関連性の度合、「攻撃的行動」の定義といった点で、かなり食い違っていた。暴力を売り物にする犯罪ドラマには(また、多くの子供向けアニメ番組でも)、正義と報復という主題をその根底に見いだすことができる。犯罪ドラマでは、悪党は、現実の世界で警察の捜査が引き起こす以上に高い比率で裁判にかけられているし、アニメ番組でも、他人に危害や脅威を及ぼす登場人物は、通常、「当然の罰」を受ける傾向がある。必ずしも過度の暴力描写が視聴者の間に模倣を直接もたらすのではなく、おそらく視聴者は、その根底にある道徳的主題からの影響を受けている。一般的に、テレビが視聴者に及ぼす「影響」の研究は、視聴者を―子供でも大人でも―自分が見ているものに、受動的な、識別力のない反応をおこなう存在とみなす傾向があった。
テレビゲームやテレビ、映画の暴力的題材がそれを見た人びとのなかに暴力的性向を直接生み出すかどうかは確定できない。……
アンソニー・ギデンズ、1992-1998『社会学(第三版)』而立書房、p428-429
……いうまでもなく、マスコミ内容が受け手に対してなんらかの程度まで画一的な影響力を行使しうると仮定しなければ効果研究は成立しない。これに対して、受け手が一定程度までマスコミ内容を独自に解釈し、それを自分なりに利用しているものと仮定しなければ、「利用と満足の研究」は成立しない。はたしてどちらがいっそう真実に近い受け手像でうるのか?1940年代以後およそ半世紀の研究機関を経て明らかになった事実は、実際にはきわめて確定的であるとは言い難い。
第1に、マスコミの短期的な内容が直接の態度変容や行動変容をもたらす事は比較的まれであり、むしろマスコミへの接触は、既存の態度または先有傾向を補強する傾向にある。第2に、マスコミの長期的な効果は主として受け手の世界観に影響をみたらし、直接の個別の態度変容や行動変容には至らずとも、基本的な世界認識の枠組みを形成する際に多大の効果を発揮する。第3に、受け手がマスコミの内容を主体的に解釈して、そこから独自の満足を引き出していることは事実である。しかしながら、どの程度まで個々人が得る主観的な満足の種類を分析上特定化しうるかはなお議論の余地を残している。……
「第9章 社会の情報化とメディア」p192-193、後藤将之(宮島喬編、1995-2005、『現代社会学』有斐閣)
もちろんそこで、社会学が半世紀掛けて解けなかった問題を俺が解いてやるぜって言って、強力効果説も限定効果説もみーんな嘘であることを、誰しもが納得できる形で提示できたら、それは議論の決定打となるのだろうけど、少なくとも今の社会学ではまだ、議論の参考になる資料は提示できても、決定打としてそういう差別的なメディアが人を差別的にするかしないかという効果を立証できるような研究はないのです。
では社会学的研究方法で考えなかったらどうなるか?例えばid:nagaichiは次のようなことを主張します。
そもそも鬼畜ゲー擁護論者には都合良く忘れられているのかもしれないが、「監禁王子」と呼ばれた人物が調教系エロゲーのまねをして女性を自宅に監禁した事件があったことを思い出してほしい。
http://www.yukan-fuji.com/archives/2005/06/post_2489.html
鬼畜ゲーはフィクションだから「具体的被害者」がいないという議論の立て方は、たった1例の反例で崩壊してしまうのである。それは危ういとは思わないか。
つまり「実例」があるじゃないかと、そういうことです。これは結構説得力があります。が、しかしもちろんこれも決定打ではない。
結局、もし確かなことのみを言おうとするならば、id:rnaさんの様に
さて、Equality Now の主張は、暴力的なポルノは性暴力を正当化し増長するから女性差別であるというものだった。争点は、暴力的なポルノによって本当に性暴力は正当化され、増長するのか? というところになるだろう。
僕の考えは、それはポルノに触れる際の文脈に依存し、社会の状況によっては法的規制も正当化されうる、特に脱文脈的にポルノに触れてしまいがちな未成年者についてはゾーニングが必要であろうというものだ。
状況に依存するとしか言えないわけです。では一体今の日本はどのような状況なのか?といえば、これも様々な研究があり得るわけで、断定的なことは言えないのです。
断定的なことを言えないとしたら、どうするべきなのか
しかし断定的なことが言えなかったとしても、「じゃあ何もしないべきだ」ともいえないのです。これについてもid:rnaさんが同記事で説明していますので引用します。
そもそもそのような政策はなんらかの形で合意されないといけないのだが、そこでは統計的な根拠はまだ使えない。そうなると現実的には既存の知見と矛盾しない範囲で仮説を立てて、その中から市民が失敗しても妥協できる程度のゆるやかな政策を選ぶしかないだろう。要するに実験、あるいは投機的実行だが、実社会でやる以上は外れた時の損失が大きいものは選べないわけだ。
メディアの影響は証明されてないので推定無罪(?)で何の対策もするべきではない、という意見もあるかもしれないが、我々は既にメディアの影響力を前提とした社会で生きているわけで、推定無罪を言うならば表現規制の諸制度をひっくり返すか、二重基準に甘んじるしかないのではないか。
更に推定無罪の原則だけを主張、言い換えれば差別的なレイプゲームが人々に及ぼす影響が立証されるまで何もしないでいろと主張するのにはこんなデメリットもあるとid:yuubokuさんは指摘します。
自分がどう見られているかには注意を払ったほうがいいよね(若干改) - Chambre Resonnante
挙証責任について正しい知識を持ち合わせている人は少ないからです。少なくとも高校まででは習いませんし、Wikipediaの「証明責任」の記事を読んでサラッと理解できる人は稀でしょう。そのようなものの存在すら知らない人が(ともすれば為政者の中にも!)相当数いるのではないでしょうか。そのような状況下で、「挙証責任は向こうにある」と言ったとしても、それは見る者にとって「自らの公正性を立証することを放棄した態度」にしか見えない恐れがあります。
「論理的に正しい」ことが必ずしも受け入れられる訳ではないという当たり前の事実ですね。
まとめ
- 今回のレイプエロゲーが「差別的」、つまり差別に基づいたゲームであることはやはり様々な論者が認めている。
- しかし一方で、その「差別的」の程度がどの程度のレベルなのかは諸説ある。
- しかし「差別に基づいた差別ゲーム」が、個々人の差別心に何も影響をもたらさないというのは説得力がないように思われている。
- 社会学も決定的なことは言わない。むしろ研究では、Equality Nowが主張したような長期的な影響は是認する研究が多い
- 実例があるという事実もある
- 事実が分からなくても、私たちは何らかの立場を投機的に決断し、支持しなければならない。少なくとも、市民はそう考えている
もちろん、これらの議論は一つの議論で、このような議論に反対し、「今回のレイプエロゲーと女性差別は全く関係ない」、「レイプエロゲーが差別心に何の影響も与えないことはむ証明されている」と主張する立場もあるでしょう。しかしその場合は、これまで挙げたような議論に具体的に反論し、そしてそれらの議論を唱えている論者たちを納得させることが、必要なのではないでしょうか。
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