麻帆良学園にとある場所で、ある会議が行われていた。

「やっぱり、ネギ君の様子はおかしいよ」

「そうだね。昼間のパートナー発言とか」

「あぁ、ネギ先生、この雪広あやかがいつでもパートナーになって差し上げるというのに」

「はいはい、パートナーの話は今は置いといて、やるの?やらないの?」

「もちろんやるよ。ね、みんな!」

「「「「オオッ――――――――!!」」」」

かくして動き出すのは、小さな小さな陰謀。





赤い丘より新たな世界へ17





少し暖かくなってきた午後の昼下がり、
俺はエヴァンジェリンの後ろを少し距離をついて歩いていた。

「貴様は何時まで、私の後をついてくるんだ?」

「む、そんな事言われても、俺には位置が分からないし、それにエヴァンジェリンが危ないかもしれないだろ」

「くっ、何処までも真祖を馬鹿にして」

「……君より凄い真祖をしってるからな」

絶倫メガネLOVEの真祖、猫真祖、その名もワルクエイ…もといアルクェイドという真祖を。

「なんか言ったか?」

「いや……」

エヴァンジェリンが侵入者を感知して、既に30分が経っていた。
とりあえず、侵入場所に行き、そこから痕跡を辿っているところだ。

しかし、ゆっくりとした歩みでいいのだろうか。

「エヴァンジェリン、もう少し急いだほうがいいんじゃないか? 侵入者なんだろ」

「衛宮先生。マスターは魔力を封じられて、索敵能力が落ちています。
 そのため痕跡を探るのに時間をとられているのです」

「おわっ! ど、何処から出てきたんだ!」

突然、エヴァンジェリンの魔法使いの従者である絡繰茶々丸が、エヴァンジェリンと俺の間にヌッと現れた。

絡繰茶々丸、エヴァンジェリンとドール契約を交わしたロボットらしい。
正確にはガイノイドタイプのロボットとの事。
学園長から貰った資料によると麻帆良学園内の大学部で作られたそうだ。
見た目は普通の女の子なので、本当にロボットなのか?と思ってしまう。

こちらに茶々丸はチラリと視線をやると、俺の驚きに反応は見せず、エヴァンジェリンに尋ねた。

「マスター、何故衛宮先生がいるのですか?」

「……勝手についてきてるだけだ。ほっとけ。
 それより侵入者だ。ここまで辿ってこれたが、どうも妖精みたいなのだ。魔力が小さくて痕跡が消えかけている。
 できるか?」

「はい。では、索敵に入ります」

カシャという音とともに、茶々丸の頭の上にニョキとアンテナが生え、クルクル回りだした。

「……うん。確かにロボットだ」

その光景を目の当たりにすると、納得してしまう俺だった。





「ネギ――――――ッ」

明日菜は夕暮れの学園を走り回っていた。
さっきまで昨日の件があり、ネギのことが心配だったので一緒に寮まで帰っていたのだ。
ところがちょっと目を話した隙にいなくなってしまった。
明日菜の脳裏によぎるのはエヴァンジェリンの悪魔のようなニヤリと笑う顔。

「……まったく。世話を焼かすんだからっ!」

そんな事をぶつぶつと言いながらも足は止めず、視線をそこら中に飛ばす。

「ネギ―――――――ッ」

「何をやってるんだ神楽坂?」

とそこへ士郎がやって来た。

「あ、衛宮先生。ネギが…て、何でエヴァンジェリンと一緒にいるの!」

明日菜が視線を横にずらすと衛宮士郎の隣にエヴァンジェリンと茶々丸がいた。

「ほう、たいそうなご挨拶だな神楽坂明日菜」

「衛宮先生とエヴァンジェリンが一緒にいるいると言うことは…グルだったの!?」

「はぁ……なんだその安直な考えは」

余りにも短絡的な考えにため息しか出ない士郎。

「だれがこんな男と……この男が勝手に私についてきているだけだ」

フンッと顔をそむけながらエヴァンジェリンが明日菜に言う。

「エヴァンジェリンに勝手についてくる……」

信じられないと言う目で明日菜は士郎を見る。
その目はやっぱりこいつは…という猜疑心に満ちた目だった。

「あんたついにロリコンストー「違うからな。勘違いするなよ神・楽・坂!」…じゃ何で?」

「お前には関係ない神楽坂。それよりネギ君を探していたんじゃないのか?」

そこでようやく明日菜はネギのことを思い出した。
エヴァンジェリンのほうに向き、噛み付くように言う。

「そうだった。あんたネギをどこにやったの!」

髪を逆立てながらビシッとエヴァンジェリンを指さした。
その手を鬱陶しそうに払いのけて、即答する。

「しらん」

「ほんとに?」

「しらんと言ってるだろう。嘘じゃないぞ。そこの男に聞いてみろ。今日一日ずっと私の後ろからついてきていたからな」

すかさず明日菜は士郎に視線を移す。その視線の中からは猜疑心の色は落ちていない。
げんなりしながらも正直に士郎は答えた。

「ああ、今日はエヴァンジェリンは何処にも行ってないぞ。昼間からずっと俺が見ていたからな」

「じゃあネギは何処へ……」

心配そうにつぶやく明日菜に、エヴァンジェリンがからかう様に言った。

「ふふっ、やけに、あの坊やのことを気にかけるじゃないか。情が移ったか神楽坂明日菜?」

「な…あんたには関係ないでしょ!とにかくネギには手を出したら許さないわよ!」

そう言って顔を赤くした明日菜はネギを探しに別の場所へ駆けていった。
それを見送った後エヴァンジェリンが言う。

「ふん、ガキだな。で、衛宮士郎、貴様はどうする?いつまでも私の後をつけても意味が無いぞ。もう今日は帰るからな」

「え、侵入者はいいのか?」

「まぁ、侵入者といってもこの感じからして妖精が迷い込んだのだろう。害は無いが悪戯をするから気をつけることだな」

「わかったよ。忠告ありがとう」

士郎はなんとなく頭に手を置き、なでなでしようとする。
その手を強引に払いのけながら、エヴァンジェリンは士郎を睨みつける。

「ッ!子ども扱いしおって……衛宮士郎、爺から何を言われているか知らんが、私の邪魔をするのなら力ずくで排除するぞ。
 私は『闇の福音』。数多くの人を殺した賞金600万ドルの真祖だ。あまり舐めるなよ」

そう言い放つとエヴァンジェリンは茶々丸を伴って家に帰っていった。
その後姿を眺めながら士郎が思い出すのは、白い少女と自身の罪。

「ふふふ、ついイリヤを思い出して頭を撫でるところだった。
 ……数多くの人を殺した600万ドル賞金首か。
 エヴァンジェリン、俺はたぶん君以上に人を殺しているよ」

寂しそうにに呟く士郎の言葉は、だれにも届かない。





衛宮家


「ただいま〜」

シーンと家の中は静まりかえっていた。
気配が少しもしない。寝ているはずの遠坂の気配さえもなかった。

「あれ?どこかに出かけたのかな」

一応遠坂の部屋も覗いてみたがいなかった。

「何処に言ったんだ?」





女子寮


「あ〜広いお風呂はいいわね〜」

ここは麻帆良学園女子寮大浴場である。
その広大な浴場で、遠坂凛は足を伸ばしてリラックスモードで湯に使っていた。

目の前で行われている3-Aによる『ネギいじり』を眺めながら。

なんでも「ネギ先生を元気づける会」らしい。
実際は生徒による担任へのセクハラにみえる。

「あはは、ネギ君のちっさくてかわいい〜」

「おっきくしてみよっか!」

「え、10歳やしおっきくならんやろ」

セクハラの度を越している目の前の光景を見ながら、クラスの中でおとなしい人達の中の長谷川千雨が、凛の側にやってきて声をかけた。

「なぁ、遠坂さん。あんたネギ先生と同居してるんだろ。私が言うのも何だが、あれ、止めなくていいのか?
 なんかもう、元気づける会を通り越してすげー逆セクハラだし」

「いいじゃない。若者は激しいのがいいの。貴方も行ってきたら?」

「若者は……て、あんたも同い年だろ。大体なんで私があんなお祭り連中とかかわらなきゃいけないんだ」

「だったらほっときなさいよ。その内しらけておさまるでしょ。
 大体10歳の男の子が女の子の水着姿で恥ずかしがることはあれ、普通は喜ばないわよ」

「まぁ、それはそうだが……」

だが、長谷川千雨は思った。目の前で繰り広げられている光景。
どっちかと言うと女子が異常に興奮して喜んでる気がする。特に委員長とか鼻血を大量に出してハァハァしながら、ネギににじり寄っている。目が怖い。

「いっか。私は関係ないからな」

そんな光景を見ながらも、長谷川千雨は自分に害は及ばないと判断し、ほっとくことにした。自分に不利な事がない限り人間そうは動かないのだ。


「ちょっとー、何処触ってんですか! あ、見ないでください〜!突かないで〜!」



エヴァンジェリン家


「茶々丸、準備は」

フリルがたくさん付いた漆黒のゴスロリファションに身を固めたエヴァンジェリンが茶々丸に尋ねた。

「計画は順調です、マスター。このままで行けば数日内で実行に移せます」

「そうか……」

「? どうかしましたか、マスター」

何かを考えるかのように虚空を眺めだしたエヴァンジェリンに茶々丸は尋ねた。

「茶々丸、衛宮士郎と遠坂凛をどう思う?」

その質問に数秒、間をあけて茶々丸は答えた。

「わかりません。彼らの力は未知数と考えます。衛宮士郎、遠坂凛両名ともあらゆる手を使って調べましたが、情報がまったくありません。
 また、マスターのご指示通り衛宮士郎と桜咲刹那の退魔の仕事を監視しました」

「それで?」

「前回マスターが衛宮士郎と戦った時と同じくアーティーファクトを使用しました。
 ですが、アポーツによる物体移動の空間の捩れは観測されていません。
 恐らく、あれは魔力で1から造った物かと思われます」

「馬鹿な! あれだけの魔力を帯びた物を1から一瞬で作り出すだと!そんなことありえない……」

エヴァンジェリンは茶々丸からの報告に驚愕した。
アーティーファクトとは、術者とその従者とで交わされた事により得るか、職人が魔力を得物自体に練りこんで長い年月をかけて作り出すしかないのだ。

「いや、私との戦闘の時、剣を爆発させていたな。熟練した戦士が自身の武器を壊すことは、そうそうにない。
 つまり、壊しても構わないぐらい剣を所持しているか、作り出すか。
 しかし、媒体もないのにどうやって造ってるんだ? まさか本当に1から全部魔力を練って造っているのか? いや、それでは効率が悪い。それにいくらなんでも、あの速度で魔力で1から造るなど……
 呪文も唱えていなかったようだし、系統は錬金術よりか」

ぶつぶつと自分の思考に嵌るエヴァンジェリンに茶々丸が言った。

「マスター、衛宮士郎の呪文は記録済みです。「trace on」が恐らく始動キーで、「I am the bone of my sword.」が呪文かと」

エヴァンジェリンはポカンとして、開いた口が閉まらなかった。

「……一体何処に英語の呪文を唱える魔法使いがいる。奴のことがますます分からなくなった」

魔法使いが英語で詠唱するなど聞いたことがない。大抵の魔法使いはラテン語または古典ギリシア語で詠唱する。
始動キーは詠唱前のパスワードみたいな物で英語、フランス語、キリル文字など幅広いが……

「私が生きてきた中で英語の呪文など……新しい系統の魔法使いなのかも知れんな」

「遠坂凛のほうですが、彼女はまったくの未知数です。無詠唱でかなり強力な魔法は使えるようですが……」

「あぁ、正直私もあの女があの程度の魔法しか使えないなどありえない。だいたい爺が連れて来た奴があれだけの力しかないなど、もっとありえないな」

「いかがいたしますか、マスター」

茶々丸がエヴァンジェリンに指示を仰いだ。

「……監視を続けろ。特に遠坂凛の監視を強化しろ。衛宮士郎の攻撃方法は大体把握した。後はあの女だ。
 攻撃方法さえ分かればこちらも対策は練れるからな」

「了解しましたマスター」





あとがき

正直ごめん。話伸ばしすぎだorz
なかなか話が進まない。
今度からプロット作成時より原作削りをかなりしようかな。

目標は原作1話につき小説1話で進めよう。

これならいいかなと思います。
最近、新人の世話で忙しいので不定期更新が続いていますが、がんばります。
皆様末永いお付き合いをお願いいたします。

アルベール・カモミールごめんな。また君は出てないよ;;




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