まき絵の体を掴んだのは、あのゴーレムだった。






赤い丘より新たな世界へ11






「どうしたんですか!てっ、あ〜!」

騒ぎを聞きつけたのか、ネギと夕映、木乃香がやって来た。
3人ともゴーレムに驚いている。

「ネギ君助けて〜!」

まき絵の叫びにネギは即座にゴーレムに攻撃しようとした。

「ラス・テル マ・スキル マギステル 光の精霊11柱 集い来たりて敵を射て。『魔法の射手』!
 くらえ、魔法の矢!!」

詠唱してゴーレムを指差すネギ。しかし

し〜ん

「「ま・・・・・・まほうのや?」」

何も起こらなかった。ホッと胸を撫で下ろす明日菜と遠坂。ゴーレムもなぜかホッとしている。

『ふぉふぉふぉふぉ、ここからは出られんぞ。もう観念するんじゃ』

仕切りなおしにふぉふぉふぉと笑って言うゴーレム。

「大丈夫です皆さん!僕のまほ・・・・・ふがっ」

「ちょっと待った!先から何モロに言ってのよ、この馬鹿ネギ!」

また魔法が〜とか言いそうになったネギの口を、あわててふさぐ明日菜。

「まほ何アルか?」

「なんでもないわよ。とにかく、テストまでにはここから脱出するわよ!」

「そうね。急いで出口を探しましょう」

「どうでもいいから、早く助けてよ〜」

ゴーレムの腕に掴まれたままのまき絵を目にとめた時、夕映はゴーレムの首筋に、あの本があることに気がついた。

「みんな、ゴーレムの首筋にあの本があるです!」

すかさずクーフェイと楓が行動を起こす。

「中国武術研究会部長の力、見るアルよ」

まずクーフェイがゴーレムの足に一撃を食らわせて、ゴーレムの重心を崩すと、すかさずまき絵を握る腕にも一撃をくわえた。
ゴーレムの手から離れたまき絵を楓がキャッチする。さらにまき絵がリボンで首筋の本を巻き取った。

「撤収です」

夕映の指示に皆一斉に駆け出した。

「見事な連携ね〜。それに長瀬さん達の動きは半端じゃないわね」

「バカレンジャーは私以外、体力馬鹿ですから」

遠坂の言葉に夕映が答える。

「そんなことはどうでもいいから、出口探して〜!」

のんきな二人に明日菜が叫ぶ。
後ろからはバルタン笑いのゴーレムが追いかけてくる。かなり不気味だ。
すると木乃香が何かに気づいたのか皆を呼んだ。

「みんな〜こっちに非常口があるえ〜!」

木乃香の方に集まると、滝の裏に非常口と書かれた人の絵がついている緑の看板があった。
それを見てずこっとこける遠坂。

「一体学園長は何を考えてるのよ・・・・・・」

『待つのじゃ〜』

すぐ後ろにはゴーレムが近づいてくる。

「早く入って!」

遠坂の叫びに、明日菜は扉を開けようとして気づいた。

「何よこれ〜!」

扉には【問一 英語問題 Readの過去分詞の発音は?】と書かれていた。

「つまり、これに答えないと扉は開かないということですか」

「ええ〜何よそれ!」

あたふたとするバカレンジャーに遠坂が喝を入れた。

「そんなの簡単じゃない!昨日やった事を忘れたの!」

ハッとするバカレンジャー達。昨日やったこと・・・・・・遠坂先生のスパルタ授業とネギの授業。

「そうよ。昨日アレだけやったんだからわかるはず」

むむむっと問題をにらむバカレンジャー。

「分かたアル、答えは『red』アルね」

クーフェイが答えると扉が開いた。

『しまった〜。待つんじゃ〜』

「よし、この調子で行くわよ!」

遠坂の号令にみんな一気に扉に駆け込んでいった。





「いいわよ。みんな、その調子!」

バカレンジャー達は非常口に入った後、奥のほうにあった螺旋階段を上りながら、扉に書いてある問題を次々と答えていった。

「凄いです皆さん!いつの間にこれだけ勉強したんですか?」

大喜びのネギの質問に誰も答えない。
全員、顔色を変えて滝の様に汗を流しながらうつむく。

「み、みなさん〜どうしたんですか?」

「・・・・・・ネギ、おこちゃまのあんたは知らなくていいのよ」

妙に達観してささやく明日菜。

「?」

よっぽど遠坂の授業を思い出したくないのか、誰もネギの質問には、はっきりとは答えなかった。

「何があったんですか遠坂さん?」

「いいのよ。そっとしておきなさい。彼女達は大人の階段を登ったのよ」

一体どんな授業をしたらそんな言葉が出るのか、恐るべし遠坂先生。
こんな会話をしている間も、後ろからはふぉふぉふぉふぉと笑いながらゴーレムが追ってくる。
しかしなぜかゴーレムのスピードが落ちてきている。なんか笑いと笑いの間に、ごほっごほっと咳してるし。

「・・・・・・じじぃの癖にハッスルするからよ。いい気味だわ」




「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・いつまで登るですか?」

「あかん、もう疲れてもうた〜」

すでに階段を登り始めて1時間、夕映と木乃香は疲れきっていた。
他のメンバーは体力馬鹿なのでまだいけそうである。
ヘロヘロ〜と歩く2人、もはや限界だった。
ゴーレムは追ってきているが問題を順調に解いた事と、ゴーレム自体のスピードが遅くなったことで、少し差が開いている。

「2人ともがんばってください」

ネギが励ましの言葉をかけるが、もうダメ〜と2人は座り込む。

「先に行ってくださいネギ先生」

「私達のことはええから、みんな早よ行き」

完全に座り込んでしまった二人にネギは近づくと

「だめですよ。みんなで行きましょう。僕が背負って行きますから」

「ネギ先生・・・・・・」

「うちは?」

「木乃香は私が背負うから。ネギ大丈夫?」

夕映を背中に背負うと立ち上がるネギ。
しかし身長がほとんど変わらない夕映を、魔法で体を強化していないネギが背負うのは無理があった。
すぐにペチャッと倒れるネギ。

「拙者に任せるでござる」

見かねた楓が夕映をヒョイと抱き上げた。

「すみません、長瀬さん」

「いやいや。それよりもそろそろ追いついてきたでござるよ」

後ろからゴーレムが「ふぉふぉ・・・ごふぉ・・・ふぉふぉ・・・」と笑いながら追いついてきた。

「急ぎましょう」

遠坂を先頭にまた登り始めた。


地上

「遅いな〜」

もうすぐ夕日が沈む時間だ。
俺は学園長から連絡を貰い、早乙女たちと一緒にネギ君たちを迎えに来たのだが

「ホント遅いね〜。あ、そう言えば士郎先生さぁ桜咲さんと何かあった?」

「いや、別に何もないぞ。そうだな、しいて言えば、仕事を少し手伝ってもらったぐらいかな?なんでだ?」

「なんか、刹那ちゃんが『士郎さん・・・・・・』とか呟きながら顔赤くして歩いていたの見たんだよねぇ〜。ラブ臭をプンプンだしてさ」

ニタ〜と笑いながら俺に顔を近づける早乙女。

「ラブ臭って何だよ・・・・・・。というか知らないぞ俺は」

「んふ〜本当かにゃ〜。実は〜手を出したりして」

「ばっ、馬鹿いうな!」

その後ニヤニヤ笑う早乙女に俺は苛められた。
地下から何かが上ってくる音を聞き逃して・・・・・・



数分前

「あっ!携帯の電波が入りました。地上は近いです」

「よっしゃーこのまま行くわよ!」

その時、前を走っていたネギが叫んだ。

「あ!地上への直通エレベーターですよ!」

「やったーこれで帰れる〜」

「こんな物まで作って・・・まったく学園長は!」

そこには1階直通作業用と扉にかかれたエレベーターがあった。
いかにも「使ってください」な感じで、場違いさにさすがの遠坂も怒りを忘れ、学園長の考えに呆れた。

「みんな早く乗って乗って!」

ドカドカと駆け込んでエレベーターに駆け込む。
少し下にはゴーレムが近づいてきている。
しかし全員が乗るとブブーと警告がなり

《――――重量OVERデス》

合成音声のアナウンスがなった。

「くっ!みんな着ているものとか、持っている物を捨てて。少しでも軽くすれば行けるかも!」

すぐさま服を脱ぐバカレンジャー達。しかし遠坂は躊躇していた。

「遠坂さんも早く!」

「え〜と人前で裸になるのはちょっと〜」

「大丈夫よ。女の子しかいないんだから。ネギはまだ子供でしょ」

明日菜の言葉に渋々と服を脱いで捨てる。
しかしそれでも警告音は鳴り止まない。

「きゃーゴーレムが来たー!」

すぐ側までゴーレムが来ていた。
するとネギがエレベーターを降りてゴーレムと対峙する。

「僕が降ります!皆さんは先に行って明日の期末試験を受けてください」

ゴーレムはもう目の前。立ちふさがるネギの足は震えていた。

「行ってくだっぐえ!」

後ろから明日菜がネギの襟首を掴むとエレベーターに引きずり込んだ。

「あんたが残んなくても・・・・・・本を置いていけばいいのよ!」

そう言うとゴーレムにメルキセデクの書を力いっぱい投げつける。
カコーンとゴーレムに本があたると同時にエレベーターのドアが閉まった。

上昇中のエレベーターの中

「よかったんですか、あの本がなくて?」

「いいのよ。散々勉強したし、それにアレに頼らなくても何とかなるわよ。ねっみんな!」

明日菜の言葉にみんなが頷く。

「みなさん・・・・・・」

「よかったわね。ネギ君」

「はい!」

そして一行を乗せたエレベーターは地上へと向かっていった。


地上

「だから違うって言って・・・・・・ん?」

「どうしたの先生?」

扉から何かが登ってくる音が聞こえた。

「帰ってきたみたいだぞ」

チンと音が鳴りエレベーターの扉が開いた。

「よーお帰り。どうだっ・・・・・・た」

俺の目が点になる。
扉の中には、なぜか下着姿の遠坂たちがいたからだ。
向こうも俺に気がついたのか固まっていた。

「え〜と・・・・・・なんで裸?」

「見るなこの変態!」

ボグッと神楽坂のストレートが俺のこめかみにヒットした。

「な、なんで?」

崩れ落ちる俺。
そんな俺を無視してハルナ達と再会を喜ぶ生徒達。ついでに服を借りてる。
すると遠坂が近づいてきた。
俺はコートを脱ぐと遠坂に渡す。

「お疲れ。どうだった?」

「散々だったわ。・・・・・・でも楽しかったかな」

「そうか。それはよかった」

そうして俺達も再会を喜んだ。



「あーテストまであと15時間しかない!」

突然まき絵が叫ぶ。

「大丈夫よ佐々木さん。みんな、今夜も寝かせないわよ」

「「「「えー」」」」

ニタリと笑う遠坂にバカレンジャー達は涙目だ。

こうして遠坂先生とネギ先生の地獄の一夜漬けにより、2−Aは無事に最下位脱出を果たした。
5人組の屍を残して・・・・・・。



第十一話終了!図書館島編終了です。オチが弱いですね。
こう改めてみるとタモの小説は会話が多いですね。これは改良しなくては。
次回はほのぼのを挟んでエヴァ編に入っていく予定です。



おまけ


学園長室


「と、遠坂君。す、すこし落ち着いたらどうじゃろ」

「大丈夫ですよ学園長。私は落ち着いてます。ちっとも怒ってなんかいませんから」

「そ、それじゃその手にもっとるバットはなんじゃろか?」

遠坂の手には所々血がついた年季があるバットを持っていた。

「うふふ、少し野球がしたくて、うふふ」

コツコツとゆっくりと学園長に近づいていく。

「た、たのむ。わしが悪かった。許してくれ」

必死に頭を下げる学園長。
そんな学園長の目の前に立つとバットを振りかぶる。

「ま、まって。頼む。許してくれ」

「死ね」

ぎゃ――――――

その日、学園長室から凄まじい叫びが聞こえたそうだ。
さらに後日、学園長から大金をせしめた遠坂さんはホクホク笑顔だったそうな。

終われ







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