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安彦良和さんが、「Gメン47」のためにオリジナルイラストを描きおろしてくださいました。要チェック!!

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オリジナルイラストを描く安彦良和さんのオリジナル動画。創作の様子を間近に見ることができます。

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2011.12.20

第1回 「奇跡的によく出来たストーリー」 オリジン始動

©創通・サンライズ

©創通・サンライズ

 アニメ「機動戦士ガンダム」のキャラクターデザインを担当し、アムロ、シャアといった人気キャラを生み出した漫画家・安彦良和さん。アニメーションディレクター、作画監督として制作の中心にいた安彦さんは2001年、ガンダムをもう一度捉え直す漫画「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」(以下、オリジン)の連載をスタート。今年、シャアやセイラの過去などオリジナルストーリーを描き加えた連載を終えた安彦さんが、ガンダムへの思いを語る。

―10年の連載を終え、お気持ちは?

安彦 ほっとしてはいるんだけど、あんまり脱力するとそれっきりになっちゃう。

―捉え直して見えたガンダムの良さは、何でしょう?

安彦 奇跡的によく出来てるんじゃないかと思ったぐらい。話を作ったのは富野由悠季氏ですけど、富野氏自身がどれだけ意識していたのか、気付いていたのか、興味深く思えるくらいよく出来てますよね。いい仕事ってそうじゃないですかね。本人も気付かないで、非常によいものが形になる。それが傑作っていうんじゃないですかね。あくまで彼の作品なので、そういうことを言うと失礼かもしれないけど、そういうことってあると思うんですよね。

―テレビ版の物足りなさのようなものをオリジンのオリジナルストーリーで補っていったのですか。

安彦 われわれスタッフの責任でもあったかなとも思うんですけど、富野氏の構想した傑作をちゃんと形にできなかった。言い訳はいろいろできるんですけど、「力がなかった」、「お金も時間もなかった」、いろいろ言えるんだけど、新たな機会を与えられたので「やってみよう」と。はなはだ独断的ですけどね。

―オリジンの連載のきっかけを教えていただけますか。ニュータイプ論に疑問を感じておられ、サンライズから声を掛けられた。確か、テレビ版はご病気で、途中で制作を離れられたのですよね。

安彦 テレビシリーズなので、何話のどこかでとは言えないけど、(後半で)フェードアウトする感じで。

―ご自身が納得いかなかった部分が残ったのが、きっかけですか。

安彦 それについては、映画版のリメークでだいたい満たされたんですよ。それも幸運なことだと、当時も言ってたんですけどね。

―漫画家として1990年代に満足いくお仕事をされた。オリジンを始める最終的なきっかけは何ですか。

安彦 直接的には、前のサンライズの吉井孝幸社長(現会長)が営業的なことを言ったんだけど、「ガンダムを買いませんか」と主に海外で展開しようと思っても説明しがたいと、「これを見てくれ」と言えるものがない。「漫画というのは世界的に通りがいいので、映像で見せられなければ漫画で見せたいんだ」と、彼は非常にストレートに言ったんですよね。

 それに対して僕は「海外の営業なんか興味ない」。彼は主にアメリカをイメージして言ってたんだけど、(僕は)「アメリカのおたくなんか嫌いだ」という言い方をして、ただ、「どこでも、ガンダムってこういうものだと言えるものがない」というのが、非常に痛いせりふだったんでね。40数話の映像は非常に長いし、今の基準で言えば、お世辞にも出来がよくない。もうちょっとコンパクトになった映画版があるけど、ダイジェストなものだから、今度は見ても分からない。ファン以外の人が初見で分からない。だいたい、もともと分かりにくい話なのに、そのダイジェストですから、分からないんだと。非常にもっともな話で、そうだろうなと。

 そのころガンダム20周年で、20周年企画の雑誌が出て、それにガンダムの今日というふうなものがうかがい知れる内容が盛られていた。僕が取材対象になったものだから、たまたま見て、非常に違和感を持った。さっきおっしゃったニュータイプ論なんかがメーンですけどね。「ちょっと残念だな」というような感じがあったものですから、両方が作用したというか。

―当初、連載は何年ぐらいのつもりだったのですか。

安彦 見当は付かなかったんですけど「かなり掛かるぞ」と。あれだけの内容なので、漫画ってのはとろいもんですから、どうしても。コンテといったらいいのか、ラフなネームといったらいいのか、それを起こしてみて、途中まで始めて見当を付けたのが、単行本で9巻。9巻てのは僕のペースでいうと3年は掛かる。一番コンパクトにまとめた形でですね。それを吉井社長に言ったら、「そんなに掛かるか」と(笑い)言われて。

―3年が、オリジナルを含めてどんどん延びてしまったのですか。

安彦 ぎりぎりコンパクトに要領よくまとめてということで、さっき言った映画版3部作があって、これは富野氏が編集したダイジェスト版ですから、これが一応ひな型になるだろうと。それを基にコンテを起こしたんですよ。だから、それ自体がかなり無理なもので。実際にやるときは「あ、富野氏はあそこを落とした、あそこを省いた」というのが見えてくるので、「あれはいい話だったのに、あそこは切っちゃいけなかったんじゃないか」とか。その、彼は2時間の映画3本ということで泣く泣く切ったわけですけどね。(オリジンには)そういう縛りはないんだから、「じゃああれ復活しよう、これはやろう」ということで、編集前のテレビシリーズも俯瞰(ふかん)してですね、「これは映画版をベースにするとは単純には言えない」と。最初にこう「もうちょっと延びるぞ」と思った点ですけどね。

―テレビ版は、ご覧になって参考にされたのですか。

安彦 綿密には見てないですね。「見なきゃいけないな」というところに見当を付けて、切れ切れに見たというか。全部見るのは時間も掛かるし、苦痛なんです。見たくないというところもいっぱいある。

―当時、満足いくところまで作り上げられなかったから?

安彦 それと明らかに見るまでもなく、あそこはいらないとかありますしね。あと、どこの雑誌に掲載してもらうか当然決まってなくて、お願いして載せてもらうわけですよね。雑誌には雑誌の方針やらページの都合とかがあるわけだから、そういう意味でも、あんまり冗長なものは載っけてもらえないだろうし。多少、遠慮してたという感じもある。そこは、あとで角川書店に決まって、「全く遠慮はいらない、好きにやってくれ」ということになったので、そこでまた延びるという。

―期限を決めずに「いくらでもやっていい」と言われたのは、安彦さんにとって幸せなことでしたか?

安彦 全く予想しなかったですね。

―自由にやらせてもらえるとは?

安彦 ある出版社で断られて、「そうだろうな、やむを得ないな」と思ってたんだけど、「角川になら大丈夫だ」っていうずうずうしい読みがあった。当時の井上伸一郎って、今の社長ですけど、当時は事業部長さんか何かでかなり偉くなっていて、井上部長がやりたいと言えば社長は許すだろうと。そうすると、「彼が持っている雑誌のどれかぐらいには載っけてくれる」と、思ったんですけど、彼が「既存のものじゃなくて、作る」と言ってくれたので、非常にびっくりした。そこまでやってくれるとは思わなかった。

(次回は12/22に更新予定)

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