薬を買いたいけれど事情があって薬局まで出かけられないという人には朗報だ。インターネットを通じた一般用医薬品(市販薬)の通信販売を制限する厚生労働省の規制について、東京高裁は原告敗訴の一審判決を取り消し、販売を認める逆転判決を言い渡した。
ビタミン剤、整腸剤など一部の種類の薬にしかネット販売を認めない同省の裁量行政について、私たちはこれまでも見直すよう主張してきた。消費者がネットでも安心して薬を買えるように、分かりやすい基準を定めるなど、厚労省は規制緩和に向けた条件整備に乗り出すべきである。
この裁判は医薬品などの通販会社が国を相手に起こしていた。一審の東京地裁判決は、規制を定めた厚労省令について「健康被害を防ぐために必要性、合理性がある」と原告の請求を退けていた。
規制の根拠について同省は、副作用の危険性が高い薬は薬剤師など資格者が直接、買い手に面と向かって売らなければ健康被害を防ぎきれない、などと説明してきた。高裁判決は服薬時の注意事項や副作用情報を伝える手立てについて、ネットなどを通じた「幅広い方法が考えられる」と、厚労省側の主張を完全に退けた。理にかなった判断といえるだろう。
消費者のなかには、からだが不自由で外出しにくい、買う薬を他人に知られたくない、という人もいる。ネット販売の解禁は特にそうした人びとが切望していた。
民主党政権は昨春、行政刷新会議の規制仕分けで薬ネット販売を取りあげたが、厚労省に押し切られて消費者の利便を重視した結論を出さなかった。本来、規制改革は政権が先導して推し進めるべきものだ。今回の司法判断が確定したわけではないが、改革を裁判所に頼るようでは情けない。
高裁判決がさらに画期的なのは「改正薬事法には市販薬のネット販売を禁ずる規定はない」と、厚労省の裁量行政に警告を発した点にある。同じような裁量行政は、保険診療と自由診療とを組み合わせて提供する「混合診療」の原則禁止などにもみられる。
薬のネット販売にしろ、混合診療にしろ、真に規制が必要と考えるなら国会での審議を通じて立法措置を講じるのが筋だ。既得権者の意向に引きずられた官僚の胸三寸で、消費者や患者の利益を損なうようなやり方を、同省は断ち切るべきである。
厚生労働省、ネット販売、厚労省、インターネット、医薬品
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