第108回 日本国債を買い進める海外の中央銀行(2/3)
さらにいえば、日本が供給過剰状態(=デフレ)に陥っている以上、大震災のような悲劇に見舞われてさえ、日本国家がその痛手を回復するに充分なリソースを持ち合わせていることは、誰にでも理解できる。すなわち、極度のインフレによる通貨価値の暴落などの局面も、発生し得ないということだ(これはこれで、日本のデフレの深刻さを表しているわけで、問題ではあるのだが)。
3月11日以降の日本は、「長期金利が世界最低」「供給能力が過剰」という強みを生かし、「普通の政策」を実施するだけで、現在の苦境を乗り超えられるばかりか、新たな成長のステージに進むことができる。すなわち、政府が国債発行で国内の過剰貯蓄を「超低金利」で借り入れ、有り余る供給能力を復興に投じれば済む話なのである。日本国内の「供給能力過剰」すなわちデフレギャップの拡大という問題は、以前は日本経済の成長のボトルネック(制約条件)であった。しかし、今や我が国にとって、巨大なデフレギャップは「宝」に変わったのである。
我が国の現状を、外国人投資家の方が冷静に見つめ、「日本買い」を続けていた事実は、なかなか感慨深いものがある。「日本経済は破綻する」「円が大暴落する」「国債金利が急騰し、政府が財政破綻する」などの妄想を本気で信じ込んでいるのは、結局は日本の国内マスコミや評論家たちだけというオチである。
特に、最近は「外資系証券会社」勤務のアナリストなどが、やたら「日本財政破綻」「国債暴落」「円暴落」などのカタストロフィを煽っているのは頂けない。何しろ、外資系証券会社などに務める人たちにとって最もありがたいのは、日本国民が「日本」に対する不安に駆られ、外国の投資商品を購入してくれることなのだ。結果、彼らは手数料収入を増やすことができるという算段だ。
逆に、証券会社にとって最も困るのは、日本国民が淡々と自国の銀行に預金し、あるいは日本国債を購入することだ。すなわち、証券会社の「ポジショントーク」で、日本破綻論が叫ばれ続けている可能性を否定できないのである。
以前、講演会会場にて「日本国債は安全ですか? 銀行に預金した方が良いのでは?」などと質問され、思わず笑ってしまったことがある。何しろ、日本国債は「日本政府の保証」のもとで元本が維持され、金利が支払われる。長期金利(新規発行十年物国債金利)1%というのは、極めて低い水準であるが、それにしても銀行の預金金利よりは高い。
さらに言えば、銀行預金とはペイオフ解禁後、銀行破綻時に元本1000万円とその利息までしか保証されない性質の「投資商品」だ。十億円の銀行預金を持っていたとしても、破綻時に返済されるのは1000万円と金利のみなのである。
別に、銀行に預金するなと言いたいわけではない。それにしても、「政府が元本保証し、金利が高い」日本国債を、ペイオフがある銀行預金(しかも超超低金利)と比較して「安全ですか?」などと質問されたわけであるから、思わず苦笑が漏れたのである。
ついでに書いておくと、銀行預金にしても最近は過剰貯蓄状態が続いており、その多くが国債で運用されている。何しろ、2010年末時点で、日本政府発行の国債の保有者別内訳を見ると、四割近くが民間銀行なのである。「国債は安全ではないかも」などと考え、銀行に預金したところで、結局そのお金が向かう先は国債になる可能性があるという話である。
同じような「苦笑が漏れるケース」は、日本政府の外貨準備についてもいえる。冒頭の「海外の中央銀行が日本国債への投資を増やしている」と逆に、「日本政府による外国国債への投資」の話である。
2011年3月現在、日本の外貨準備高は1兆1160億ドルに達している。そのうち、約1兆0276億ドルが外国証券(米国債など)による運用だ。すなわち、日本の外貨準備の92%は、米国債などの外国国債に投資されている計算になる。
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