夜9時、大阪駅から1q程離れた民間の駐車場が突如変貌する。およそ40台の超大型バスが頻繁に発着する。春休みの学生、単身赴任のサラリーマンなど千人を超える乗客が路上にあふれ出す。ここは東京、九州などへ旅立っていく「都市間ツアーバス」のターミナルだ。 2000年に行われたバス業界の規制緩和で高速バス界は大きく変貌した。「ドル箱路線」と呼ばれ、最も激しい競争が繰り広げられる大阪-東京路線。かつては8000円台だった片道運賃が格安競争により半額以下に減少した。とりわけ成長著しいのが、規制緩和によって参入したバス会社を傘下におさめる旅行会社だ。徹底したマーケティング戦略、さらにインターネットを駆使し、客の争奪戦を繰り広げる。その一方で、下請けのバス会社は、激しい車体の消耗と安いバス代に苦悩しながら、安全運行の努力を続けている。 急成長を続け業界の覇権を握ろうとする旅行会社。激しい安売り競争の中で揺れる下請けのバス会社。そして新興の「都市間ツアーバス」に対し、安全面での警鐘を鳴らす老舗の大手バス会社。一年で一番賑わう春の観光シーズン、各社はどう動いたのか。規制緩和がもたらした苛烈な競争の舞台裏を描く。
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