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マントル2層、異なる組成 「均一」の定説覆す 東北大
東北大大学院理学研究科の村上元彦准教授(岩石・鉱物・鉱床学)らの研究グループは、地球深部と同じ環境の高圧力高温を再現した実験装置を使い、地球の「マントル」と呼ばれる2層の岩石層が、上部と下部で化学組成の異なる構造であることを突き止めた。「マントルの化学組成は均一である」という従来の地球科学の定説を覆す成果で、3日付の英科学誌ネイチャーに発表された。 地球の内部は、中心の核を厚さ2900キロの岩石層「マントル」が包み、その外側を地殻が覆っている。マントルは地球内部を伝わる地震波の速さの違いにより、地表から深さ660キロのマントル内の境界面を挟み、上部と下部の2層構造であることが分かっている。 上部は火山の噴出物などから、主にカンラン石などマグネシウムの含有量が多い鉱物で形成されているが、下部の組成は採取できないため、よく分かっていなかった。 従来は、地球誕生から40数億年にわたる内部の対流運動でマントルは均質化し、上部と下部は同じ組成とされてきた。 研究グループは、下部マントルの環境に相当する124万気圧、2700度の条件で地震波速度を測定する実験装置を開発。下部マントルの組成として想定される物質の地震波速度を観測した。 得られた実験データと、地球内部を伝わる地震波観測データを比較した結果、上部と下部を同じ組成とした場合、データに食い違いが生じた。 下部マントルの組成を、上部のカンラン石よりもケイ素に富む「ペロブスカイト相」と想定すると、実験と観測のデータが同じになった。上部と下部が、異なる組成を持つ二重構造だという実証につながった。 マントルは地球誕生から対流を続けているが、上部と下部は混ざることなく、別々に対流してきたとみられるという。 地球は40数億年前、隕石(いんせき)の衝突を繰り返して形成されたと考えられている。下部マントルの化学組成を分析した結果、地球を造り上げた隕石は太陽系の惑星などの平均組成と一致することが分かった。 マントルの組成と地球の原料物質をめぐっては、約40年前から論争が続いている。村上准教授は「従来考えられてきた地球内部の基本構造と形成、進化の歴史のシナリオを書き換える成果が出た」と話している。
2012年05月03日木曜日
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