関越道バス事故:「あすは我が身」運転手たちの不安と不満
毎日新聞 2012年05月02日 22時03分(最終更新 05月03日 02時31分)
車内は消灯後、静寂に包まれる。果てしなく続く単調な風景。カーブでは徐々に速度を落とし、曲がり終え静かにアクセルを踏む。背後から客の寝息が聞こえ始めると、自分も睡魔に襲われる。
「夜行バスは日中のバスとは別の乗り物だ」。同僚男性(54)も言う。「日中、どれだけ寝ても眠いときは眠い」。たばこは吸えないので、ガムやチョコレートで何とかこらえる。「ヒヤッとしたことのない運転手など多分、一人もいない」
国内団体客の減少で立ち行かなくなった観光バス会社は、00年に貸し切りバス事業の規制が免許制から許可制に緩和されると、ツアーバスにこぞって参入するようになった。客の中心は都心へ向かうビジネス客だが、地方のバス会社は都内に車両を置く場所がない。JR東京駅や新宿駅と広大な駐車場があるTDRを組み合わせるコースが一般化した。
2人は2年前から夜行バスを運転している。北陸−東京間を連続3往復という過酷な勤務もある。バブル期に500万円近かった年収は300万円余りにまで減った。石川−東京間の料金は4000円を切る。「価格競争は運転手の賃金と安全管理に跳ね返る。家族はツアーバスには乗せたくない」