除夜の鐘と同じ108のスポットライトを浴び、闇夜に浮かび上がった長渕が、優しくも力強いシャウトで“祈り歌”を捧げた。
出場歌手55組中、唯一の被災地中継となったロックシンガーは、気温1度の寒さの中、宮城・石巻市の門脇小学校の校庭に、革ジャン&サングラス姿で登場。白組司会の嵐からメッセージを求められ、東日本大震災1カ月後の4月中旬から、何度も足を運んできた被災地への思いがあふれた。
津波と火災に見舞われ廃虚となった小学校を背に、「この闇に立って目を閉じるとね、子供たちの顔が浮かんでくるんだよ。すぐそこの日和山公園で一緒に歌ったみんな覚えてるかな! 俺のふるさと、鹿児島の海や山で遊んだ浪江町の子供たち、元気してるか! 早くふるさとに帰りたいよね…」と呼びかけた後、サングラスを外して追悼。
「きょうは震災で犠牲になった東北の方々への鎮魂の祈りを込めた歌をみんなに届けます」とギターに手をかけた。
ステージは幻想的だった。闇に差す希望の光を象徴するように、校庭の中央に立つ長渕を照らすスポットライトが幾重にも光線を放つ。それはまさに、夜空に輝く太陽そのものだった。
12月中旬に長渕自らが石巻市内を視察し、試行錯誤の末に選んだ門脇小学校の壁は焼けただれていたが、幸いにも在校生たちは高台に逃げ、全員が助かった。
♪僕は悲しみを抱きしめようと決めた…ひとつになって君と生きる 共に生きる
「ひとつ」のフレーズを精いっぱいシャウトした長渕は、曲のラストでギターを抱きしめ、ギュッと目をつむる。祈りを捧げた後、思わず涙を浮かべた男の視線の遠い先には、ステージを見守る被災地の人々が大勢いた。
まさに、悲しみと希望が共存する“闇と光”の地から、長渕は2012年の新たな夜明けを歌の力で伝えていた。
(紙面から)