大みそか恒例の「第62回NHK紅白歌合戦」が31日、東京・渋谷のNHKホールで行われた。震災被災地の宮城・石巻市から中継出演した長渕剛(55)は、子供たちに向けて異例の2分44秒に及ぶメッセージ。犠牲者へ鎮魂の思いを込めた新曲「ひとつ」を、“光の柱”に包まれながら優しく歌い上げた。紅組が2004年以来の勝利を挙げ、通算成績は紅組の29勝33敗。
津波が押し寄せた海岸近くにある、石巻市立門脇(かどのわき)小学校のグラウンド。長渕は、氷点下1度の凍えるような寒さの中、8分56秒のメッセージと歌で、熱い思いを静かに訴えた。円形の照明に包まれた“ステージ”で「ひとつ」を歌い、魂を絞り出すように、優しい鎮魂の歌声を天へと届けた。
全出場歌手の中でただ一人、被災地からの中継出演。震災後の支援活動を紹介する46秒のVTRの後、司会の嵐から呼びかけられた長渕は、2分44秒に及ぶ被災地の子供たちへのメッセージを語りかけた。「眼前に広がるのは、漆黒の闇。ともし火が消え、今は見渡す限りの荒野です。目を閉じると、たくさんの顔が浮かんでくるんだよね」。がれきが残る大地を見回し、震災後に交流した被災地の子どもたちの顔を思い浮かべた。
昨年、石巻・日和山(ひよりやま)公園で合唱した地元の児童へ、故郷の鹿児島で触れ合った福島・浪江町の児童へ、「早くふるさとに帰りたいよな。こんなんじゃ、ダメだな。ごめんな」「僕は信じたい。日本の力を結集して、いつかふるさとに帰れるってことを。今はそれを信じて、それまで、俺たち大人も頑張るからさ、お前たちも一生懸命生きてくれよ。一緒に頑張ろう」と語りかけた。
長渕を囲んだのは、108つの照明の光。一つになった大きな光の柱は、1万5000人に上る犠牲者への鎮魂の思いを表すように、長渕の歌声とともに空へ上った。ギターを抱きしめた長渕は、ヘッドを天に向けて目を閉じた。
復興への道のりは、まだ遠い。「みんなの力をひとつに、前を向いて一緒に歩こう」。未来への希望を示すように、大きな光の柱は外へと広がり、町を染めた。
[2012/1/1-06:00 スポーツ報知]