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概要
「顧客が本当に必要だったもの」とは、ITビジネスにおける多難なシステム開発プロジェクトの姿を風刺した絵に登場する、オチの部分のフレーズ。顧客が期待した通りのシステムとして完成しなかった原因は、開発側の勝手な思い込みや都合の押し付けだと思いきや、そもそも最初に顧客が説明した要件からしてズレていた、というオチ。
以下のような場面に分けられており、ブランコが設置された木のイラストがオリジナルだが、絵を差し替えてIT以外のシーンでも使われている。ブランコの形態はソフトウェア・システムの構造・機能・使い勝手・規模などを比喩したものである。
顧客が説明した要件 |
プロジェクトリーダーの理解 |
アナリストの設計 |
プログラマのコード |
営業の表現、約束 |
プロジェクトの書類 |
実際の運用 |
顧客への請求金額 |
得られたサポート |
顧客が本当に必要だったもの |
この類の風刺画は他にも様々な業界向けのバリエーションが存在するが、大元をたどると1970年代アメリカの産業界で既に広まっていた有名な風刺画(モノクロの線画でブランコは6種類描かれている)から説明文を改変するなどして生み出されたパロディのようである。
解説絵参考リンク
一方でアイドルマスター関連の動画では、9・18事件を受けて「いや、我々が望んでいたものはそうじゃない。これくらいであれば十分幸せになれたんだ...」という想いを込めて付けられる。
それぞれの絵が意味するところ
これらの絵から読み取るべき意味については、これといった公式で厳密な答えは存在しない。
以下は勝手な解釈のほんの一例。
※他にいい解釈・補足などございましたらしたら掲示板でご教示願います。
- 顧客が説明した要件
ちょっと機能過剰(?)なブランコの製造依頼。一度に3人乗るつもりだろうか。
- 明らかにピントのズレたシステムを提案する顧客。どこかで似たようなものを見聞きしたのだろう、素人考えレベルのシステム提案といったところか。問題解決を求めている当事者でありシステムを使う立場なのだから、と自信を持って提案しているのかもしれない。もちろん金を払う立場でもあるのでシステム開発を請け負う側もあまり批判的なことは言えない状況が多いかもしれない。
- それでも顧客自身に最終的な問題解決策を提案させてはいけない。それは開発者側が行うべき仕事である。
- プロジェクトリーダーの理解
木にぶら下がったブランコが欲しいという顧客の要求はなんとか理解できたが、動くかどうか疑わしいブランコの構想。ちょっと技術を知る人が側にいればその妥当性を検証できるのだがそういう体制はないようである。
顧客にいちばん近い位置で開発に必要な情報を取り入れ、顧客のためのシステムを提案し、開発チームに完成品のビジョンを共有させる立場(のはず)。ここで既に顧客との意思の疎通に齟齬が発生している。また実際に動くかどうか分からないシステムが構想されているが妥当性を検証する手段を持たないのか、検証している時間がないのか、それでなければ自信過剰というところか。- アナリストの設計
プロジェクトリーダーの構想のままではブランコが動かないことに気づいたのでブランコがなんとか揺れることができるように改良(?)されている。
- プロジェクトリーダーの意図はとりあえず反映するが、そもそも当初の見通しが間違っているため顧客の要求と両立させるために不自然な歪んだシステムが設計される。妥当性を検証し上流工程に差し戻してやり直しを要求することは立場として難しいのか、あるいは腕の見せ所と張り切った結果か。
また、無意味に新技術を導入したがる設計者が多いのも問題かもしれない。 - プログラマのコード
木の幹にブランコが繋がれている状態。第三者の目にはかなり異様な光景に映るがさっさと仕事を終えたいプログラマは気にしない。一昔前なら「ステップ数でこれだけの進捗がありました」と報告するような職場での仕事ぶりだろうか。
これがブランコの設置だからまだ見た目分かりやすいが、プログラマの労働の成果であるプログラムの構造や動作を第三者が手早く評価したり欠陥を見抜くのは容易ではない。 設計者の意図は正しくプログラマに伝わっておらず、まともに動かないシステムが生まれゆく状況である。木とブランコが「とりあえず」繋がっているので「間違ってはいない」レベルで設計が実現された状態。プログラマが顧客の要求を知る術もない。ここでも成果物の妥当性を検証する機会はないようだ。成果は見かけ上増えていくが後々捨てられる部分が大半を占める。- 営業の表現、約束
ソファを搭載した無駄に豪華な光り輝くブランコ。第三者の目にはかなり異様な光景に映るが売り込みに熱心な営業担当者は気にしない。
本質的でない上に過剰な機能の搭載を売り込む営業。製品はまだできていないんだから何とでも言える。 顧客が技術的なことを理解できない場合はなおさら有効なのだろうか。 ところで営業担当者たちは実際の開発現場とどんな交流があるのだろうか?たぶんほとんどない。- プロジェクトの書類
ブランコに関する情報記録が何もない。なにかしらそこに存在した痕跡はあるようだが・・・という状態。
振り向けば開発に関するドキュメントの類が一切残っていない状態。仕様がコロコロと変わるため記録しても意味がないのかもしれない。しかも顧客から次々とやってくる追加要求を安請け合いして情報量的には膨らんでいるかもしれない。また開発スタッフも、仕様書を丁寧に書いたところで開発成果に直接繋がらない上に上司からもそんな仕事は評価されないため誰も書きたがらないのかもしれない。後々開発メンバーが交代したりするとシステム保守・改良がやり難くなる一因にもなるはずだが。- 実際の運用
ロープ一本だけが枝からぶら下がっている。とりあえず、枝からぶら下がって揺られて遊べる。辛うじて遊具の体をなしている状態。腕の力が弱い人・体重の重い人には厳しい遊具である。
- 当初の設計案をすべて盛り込むには納期に間に合わないと判断され、予定よりも大幅に縮小された機能だけを載せて納期に間に合わせて顧客へ渡った状態。約束されたシステムとは程遠い不完全で使い勝手の悪い状態で顧客は運用を強いられることとなる。顧客の日常業務がこのシステムに依存・維持させるために、システム導入前とは別の手間とコストかかるものにならないか心配である。この時点で、一体何のためにシステム導入を検討していたのかを覚えている人も少なくなっているのではなかろうか。
- 顧客への請求金額
ジェットコースターらしき遊具。
- ブランコの設置なのに遊園地のアトラクションの建造費用レベルの法外な請求額ということか。初期の設計にあった仕様すら満たしていないというのに。
- 得られたサポート
切り株だけが存在する。あるいは、ブランコが設置された木が根本から切り倒されてしまった状態。
- システムの存在を根幹から台なしにするような不適切なサポートが行われた結果か。あるいは、顧客が実際に受けることのできたサポートの質や量がこの程度のショボいものだったということか。
- 顧客が本当に必要だったもの
タイヤをぶら下げたブランコ。本物のブランコほどではないが、木にぶら下がって(腕に負担をかけず体重を預けた状態で)揺れて遊ぶという本来の要求を十分に満たす機能を持った遊具。おまけに本物のブランコよりも安上がりな実現方法である。もちろん材料のタイヤも新品である必要はない。顧客がパンダであろうと申し分ないはず。
- 顧客には見えていなかった理想的製品像。ひょっとしたら開発者側も見えていなかった可能性も大きいが、開発者側が探り当てて提示すべき到達点。
- それでも現実問題として、タイヤを使ったブランコ型遊具(顧客に必要な機能は十分に盛り込んでいるシステム・最新技術とは言い難いがお値段お手頃)を顧客が、「これで十分、わが社に導入するには最適」ときちんと理解・納得して受け入れるのか?という疑問は残るのであるが。
関連動画
アイマス版
ライフル版
関連商品
関連項目
携帯版URL:
http://dic.nicomoba.jp/k/a/%E9%A1%A7%E5%AE%A2%E3%81%8C%E6%9C%AC%E5%BD%93%E3%81%AB%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%A0%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%82%82%E3%81%AE
http://dic.nicomoba.jp/k/a/%E9%A1%A7%E5%AE%A2%E3%81%8C%E6%9C%AC%E5%BD%93%E3%81%AB%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%A0%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%82%82%E3%81%AE
読み:コキャクガホントウニヒツヨウダッタモノ
初版作成日: 10/09/26 04:27 ◆ 最終更新日: 12/05/01 22:16
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