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ノーベル賞候補 外村彰氏が死去
5月2日 10時45分

ノーベル賞候補 外村彰氏が死去

目に見えない磁気の力、磁力を電子を利用して観測できる新しいタイプの電子顕微鏡を開発し、ノーベル物理学賞の候補とされていた日立製作所フェローの外村彰さんが、2日、埼玉県内の病院で亡くなりました。70歳でした。

外村さんは東京都の出身で、昭和40年に東京大学理学部を卒業したあと日立製作所に入社し、一貫して電子顕微鏡の開発に取り組みました。
昭和53年、極めて短い波長を持つ電子の性質を利用した「ホログラフィー電子顕微鏡」と呼ばれる新しいタイプの電子顕微鏡を世界で初めて開発しました。この顕微鏡は電子が磁力によって影響を受ける様子を捉えることで、その場所に働いている磁力を目に見える形で観測できるもので、電子顕微鏡の可能性を大きく飛躍させました。
これによって、超電導の研究や磁気による記録媒体の開発などを目に見える形で行うことができ、この分野で欠かせない技術となっています。さらにこの技術を応用して、真偽を巡って30年近くも論争が続いていた「アハラノフ=ボーム効果」と呼ばれる量子力学の理論を証明し、物理学の発展にも貢献しました。
こうした業績で平成11年にアメリカのノーベル賞といわれる「ベンジャミン・フランクリンメダル」を受賞したほか、国内でも平成14年に文化功労者に選ばれ、ノーベル物理学賞の候補の一人とされていました。

“物理学発展に貢献した人”

外村彰さんと研究を通じて親交が深かった理論物理学が専門で学習院大学の江沢洋名誉教授は「1年ほど前から体調が悪いと聞いていましたが、まさかという思いです。新たな電子顕微鏡を開発し、見えなかったものを見えるようにしてくれ、物理学の発展に貢献した人でした。まだやりたいこともあったと思うので、とても残念です」と話していました。

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