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【社会】

「9日連続乗務 常態化も」 ツアーバス運転手ら訴え

2012年5月2日 07時04分

 群馬県藤岡市の関越自動車道で乗客七人が死亡、三十八人が重軽傷を負った高速ツアーバス事故を、同じ仕組みのバスに乗務する運転手らは切実な思いで受け止めた。「旅行会社主導で、しわ寄せはすべて現場に来る」。ツアーバスの乗降場で聞くと、あえぐように苦境を訴える声が聞こえてきた。

 「規制緩和でバス会社が急増し、価格競争が激しくなった。どこも長距離運転は二人から一人になった」

 東京・新宿駅近くで一日夜、ツアーバスから降りてきた男性添乗員(53)は、そばで見る運転手の過酷な労働環境を説明した。

 「運転手から八日、九日連続乗務なんて当たり前のように聞く。ただ、今日の運転手が、群馬の事故後に会社から『勤務体制を見直す』という連絡があったと話していた。ようやく業界内で見直されるかも」と続けた。

 添乗員によると、運転手が運転中、うとうとする姿を何度も目にしてきた。そういう場合は声を掛けているが「時間通りに目的地に着かないといけないから、運転手は決められた休憩所以外で休もうとは絶対にしない」。

 ツアーバスは、二〇〇〇年以降の規制緩和をきっかけに新規参入が相次いだ。国土交通省によると、ツアーバスを運行する貸し切りバスの事業者数は、同年末の二千八百六十四社から十年間で四千四百九十二社に増えた。中には事故を起こしたバスのように、旅行会社が旅程を決め、貸し切りバス会社に運行を委託する仕組みのものも含まれている。

 観光バス会社に勤務していた元バス運転手の男性(51)は、今回の事故で、千葉県市原市から広島市までの約九百キロを一人で往復した経験を思い起こした。

 「岡山辺りで疲労が限界になり、ふらふらになり意識が落ちた。『これは危ない』と思った」。幸い近くにサービスエリアがあり添乗員に限界だと告げて一時間仮眠。乗客には「時間調整」だと説明してもらった。朝、広島に着いた後も、そのまま夕方まで観光バスを運転した。「大手だと五百キロを超えると二人の運転手で交代していた。特に夜行で一人は無理。一人では四百キロが限界ではないか」と話す。

 「価格競争で安い値で旅行会社から引き受けるため、交代要員が置けないこともあるのでは」

 一方、長距離路線バス会社の男性運転手(41)は「うちは勤務シフトがしっかりと組まれているから、睡眠も休みもしっかり取れる」と話した。

 最も厳しい乗務は月一回、約四百キロを一人で運転する夜行バスだという。「その時は確かに眠くもなる。一日上限六百七十キロなんて信じられない」と国の現行指針に批判的だ。

(東京新聞)

 

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