入社以来、一貫して「FTサーバ」の開発に携わっています。FTとは「Fault Tolerant」の略で、証券取引や大メーカーの製造現場などミッションクリティカルな分野を支えている故障に強いサーバです。2台のマシンが互いに監視しつつ並行して動いていて、片方が壊れても継続して稼働します。
最新のCPUと汎用OSで動かせるハードウェアを開発しているのは今日でも世界でNEC1社だけ。世界でもオンリーワンである理由は、ものすごく高度な技術が必要だから。その超高速のCPUを並行して稼働させ、故障しても一瞬も仕事をストップさせない技術は膨大なノウハウの塊で、簡単に追随することはできないのです。
現在は第五世代の開発に取り組んでいます。私は入社後ほどなく極秘裏に立ち上がったこのプロジェクトに新人ながら配属され、主にLSIの開発を担当してきました。ひとつの製品をこれだけ長く担当するのは、社内でも珍しいかもしれませんね。
府中事業場は広々としていて実に気持ちが良いです。お昼休みにジョギングしている人も多いですね。
ここには、NECが開発した宇宙システムに関する展示もあります。小学生が見学に来たりします。
ハードウェアは一度つくってしまうとつくり直すのは簡単ではありませんから、開発には常に不安がつきまといます。何か考慮漏れはないか?他の方式がいいのではないか?そんな時、私が自分に言い聞かせるのは「不安は努力の勲章」という言葉です。不安とは知識や経験の裏付けがあるからこそのもので、それがなければ何も感じないはず。不安な気持ちも糧にして、さらに優れた製品になるよう検討していくことを心がけています。
上司の教えも生きていますね。新人時代、設計段階であまりいい改善策を思いつかず、上司に「とりあえずこの案をやってみます」と報告した時のことでした。上司は「仕事は『やる』か『やらない』かだ。『やってみる』なんてないよ」と一言。トライするのはいいけれど、最終的には「やるかやらないか」の判断になる。そういう覚悟をもってやれという意味ですが、お客さまへの責任を担う仕事をしているのだと再確認させられた、今でも肝に銘じている言葉です。
研究職より開発職におもしろみを感じて入社。それは間違っていなかったと実感しています。
初めて買ったパソコンは、PC98でした。
それもなにかの縁なのでしょうか。
苦労も伴いますが、それでもFTサーバは面白い。私が好きなのは、逆説的ですけれどもそのすごさをまったく感じさせないところです。一般のサーバは障害が発生したらブルーバックが出てデータが飛んでしまいますが、FTサーバはそれを水際で食い止め、しかもお客さまに何も気づかれずに淡々と動いている。完全な縁の下の力持ちであるところに、非常に技術者魂をくすぐられますね。誰も気づかないけど非常に優秀で、事故を起こさないことが勲章だと。そういうところは、私が入社前にNECに対して感じていた魅力そのものでもあります。いずれは他のサーバの開発も担当したいですが、まだまだFTサーバだけで手一杯だし、学ぶところがあると思っています。
現在は、ラインナップ拡大に向けた新規プロジェクトもスタート。そこには私も携わっていますが、これからも幅広く経験させてもらいながら、まずは全体を俯瞰して捉えられるプロジェクトマネージャーになるという目標に向けて歩を進めていきたいと考えています。