金第1書記:6幹部の粛清取り消し 正日体制の判断覆す
毎日新聞 2012年05月02日 02時30分(最終更新 05月02日 02時33分)
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記は最高指導者就任直後から、治安機関などに、生活苦により不平不満の声を上げる住民を処罰しないよう訴えてきた。その後も「人民愛」「慈愛」を強調した施策を次々に打ち出しており、今回の「粛清再調査」もその一環のようだ。指導者としての実績の乏しさを「慈愛」によって補おうとの意図がうかがわれる。
金第1書記は、資本主義的手法の取り入れを含めた経済論議を促すなど、大胆な国内改革を模索しているとみられる。先月13日の長距離弾道ミサイルの発射失敗を潔く認めたのに加え、就任早々に肉声を披露した。北朝鮮内部でも「変化」に対する期待感が高まっているようだ。
ただ「慈愛」政策を次々に繰り出すことは、父親の金正日(キム・ジョンイル)総書記が進めてきた「恐怖による統治」のひずみを露呈させることにもつながる。金第1書記自身が権力継承の際に宣言した「金総書記の遺訓貫徹」から逸脱することになり、権力継承の正統性が否定されかねない。金第1書記は側近らによるクーデターに強い危機感を抱いていることも判明し、国内や中朝国境の取り締まりを強化しているとの情報もある。