自民党は27日、新たな憲法改正草案を発表した。9条に首相を最高指揮官とする「国防軍」を持つと明記し、天皇を「日本国の元首」と規定、国旗・国歌への尊重義務を設けるなど、05年にまとめた新憲法草案より強い保守色を鮮明にした。日本が独立を果たしたサンフランシスコ講和条約の発効から60年となる28日に合わせて決定した。
谷垣禎一総裁は草案発表の記者会見で、「自民党が先頭に立ち、自主憲法の制定に向けた取り組みを加速させ、日本の進むべき進路と骨格を明確にしたい」と強調した。新草案は05年草案をベースにした改定版。
草案では、前文で日本について「長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を頂く国家」と規定。「日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、和を尊び、家族や社会全体が助け合って国家を形成する」などとした。
天皇については、1条に日本国の「元首」とも明記した。国旗・国歌については、国旗を「日章旗」、国歌を「君が代」として、「国の表象」としていた2月末の原案より踏み込んだ。
9条については「戦争放棄」を維持したが、自衛隊を「国防軍」と明記。「自衛権の発動を妨げるものではない」との条文を追加し、現行の憲法解釈では認めていない集団的自衛権の行使の容認を明確化した。国の領土や領海などの保全義務も新設した。
武力攻撃や大規模災害などの際に、首相が「緊急事態」を宣言し、国民が国の指示に従う義務があるとの規定も盛り込んだ。
憲法改正の発議要件については、現行の衆参両院の「3分の2以上」の賛成を「過半数」に緩和した。一方で参院で野党が多数を占める「ねじれ国会」で問題化している参院改革には触れていない。
「信教の自由」では、国や地方公共団体が、社会的儀礼や習俗の範囲内で宗教的活動に関与できると規定し、首相の靖国神社公式参拝への道を開く意向だ。【坂口裕彦】