シンガー・ソングライターの長渕剛(55)が「第62回NHK紅白歌合戦」(31日・後7時15分)で、宮城・石巻市から中継で歌うことが27日、分かった。東日本大震災で大きな津波被害が出た石巻市は、長渕が4月に自衛隊員を激励し、6月に石巻小の児童100人らと合唱した縁深い場所。当日は、がれきが散乱するなど津波の爪痕が残る地から、鎮魂の思いを込めた新曲「ひとつ」をギター1本で披露する。
震災被災地からの中継出演をNHK側からオファーされた長渕は、石巻市から歌声を届けることを決めた。
石巻市は、震災後に長渕が2度慰問した縁の深い場所だ。初めて訪れたのは4月16日。自衛隊員が遺体の捜索やがれき撤去など全力で活動を行う中、救難拠点だった石巻総合運動公園で隊員を激励。避難所の石巻高校ではミニライブを行い、震災直後の被災者を勇気づけた。2度目は6月26日。海岸を見下ろす日和山(ひよりやま)公園で、石巻小の児童100人を含む1000人とともにゴスペル曲「TRY AGAIN for JAPAN」を合唱した。
長渕は今月上旬、中継場所の選定のため石巻市を訪れた。「悲痛な声、恐怖におののいた声が聞こえた。ギターを手に声を出したら見事に共鳴した。ここだな、と自然に思った」。いまだにがれきや生活用品が散乱し、津波被害の爪痕が残る場所。「被災した方々の無念さ、悔しさ、さまざまな思いを背中に感じながら、優しく歌いたい」
石巻市の亀山紘市長は、鎮魂への思いを込めた歌唱曲「ひとつ」を聴き「心を揺さぶる曲。涙を流すことで自分の感情を外に出し、生きていく上での勇気や希望を与えられる」と話した。「ひとつ」は配信開始と同時に「着うた」チャート2位を記録し、来年2月1日にシングルで発売されることも決まった。
今回、NHK側は安全上の理由などにより、石巻市からの中継放送は完全非公開。「撮影地への立ち入りは一切できない」としている。
歌唱場所は、復旧途中で街灯もない真っ暗な所。長渕の声で、歌の力で、日本中に希望の光りをともすことになる。
◆紅白歌合戦での中継出演 今回、被災地からの中継出演は長渕だけ。ほかに、松田聖子・神田沙也加と福山雅治はカウントダウンのコンサート会場から中継される。また、過去には90年の長渕剛(ドイツ)、02年の平井堅(米国)、05年の松任谷由実(中国)ら海外から出演した例がある。
[2011/12/28-06:00 スポーツ報知]