社長メッセージ 今月の『雄気』Web版

◎第38回 伊勢神宮の教え

 風呂の栓を抜く。排水口近くまで水量が下ると必ず渦を巻く。不思議に思うことがあります。その渦はいつも左巻きなのです。どうした現象なのでしょうか。洗面所、台所のシンクの排水も同じように渦は左巻きです。別に心配をした訳ではないですが、調査をしてみる気持ちになったのです。サイエンスマガジンを何冊か繙くと、答えがありました。「力学的仕事の概念の確立から物件の速度の大きさに比例した転向力」。つまり、 渦が左巻きなのは地球の自転の方向であり、「コリオリの力」が関係するそうです。北半球では、台風の渦も竜巻もすべて左巻きです。反対の南半球では、右巻きです。すなわち、この渦を見ることで地球が自転しているのだと自分の目で実感できるわけです。
地球の自転速度は赤道直下で秒速0.5キロメートルだから、時速に直すと1800キロメートルとなります。なんと新幹線、「700系のぞみ号」の最大速度の6倍です。笑って下さい。どうして渦の事柄を書く気持ちになったのでしょうか。まだ、どこかに子供心が疼いているのでしょうか。若い、若い。
 伊勢神宮では、平成二十五年に二十年に一度の式年遷宮が行なわれます。総棟梁の宮間熊男氏と同友会の会議で面接する機会がありました。質問の時間にこんな話しをお伺いしました。「人間の家をつくるのと神様の家を築るのはどう違うのでしょうか」。答は、「神様の本殿や全ての建物は、見えないところまで磨き上げないと、お見通しなんです」。それが返答でした。逆に、人間が住む家なら、天井裏には誰も入ることはないし、 見られない、この天井裏に鉋をかける必要はない、というようなことになってしまうというわけです。
 しかし、神様は人間の見えないところまで全部をお見通しです。心までも掴まえられています。手抜はできません。もともと仕事とは人が見ていなくても神様はしっかり見ているというものなのでしょう。知っています。だから奥が深いし、出来栄えも違ってきます。式年遷宮では二千年前の技術が今も生きています。築る哲学を守り、見えないところをとことん磨いたら、見える所まで綺麗になる。その通りです。このことは、神殿にも人間の家にも相通じるものがあります。施主に喜ばれる仕事の答ともなります。会社発展の基ではないでしょうか。参考にして下さい。

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