「ミッシング・リンク」という言葉がある。『英和中辞典』には、「問題解決に必要な未だ欠けている情報」と記されている。
以下、挙げる名前から現下の消費増税政局にとって焦点となった、ある事実について想像を膨らませていただきたい。
金子一平、藤井裕久、森田一、柳澤伯夫、杉崎重光、野田毅、涌井洋治−。全員が旧大蔵省(現財務省)OBであり、杉崎、涌井両氏を除く5人が政治家である(森田、柳澤の両氏は引退)。
そして、重要なことは、全員が故大平正芳元首相と密接な関係があるということである。1979年9月の総選挙で、当時の大平首相は一般消費税の導入に言及、自民党は敗北を喫した。
その第1次大平内閣の蔵相が故金子氏、故田中六助官房長官秘書官(事務担当)が柳澤氏、金子蔵相秘書官(事務担当)が杉崎氏である。杉崎氏は金子氏の娘婿でもある。
杉崎、野田、涌井氏は64年入省の同期である。杉崎氏は現在、IMF(国際通貨基金)副専務理事を経てゴールドマンサックス証券副会長。主計局長を歴任した涌井氏は日本たばこ会長。そして政界に転出した野田氏は自治相、経企庁長官を歴任、現在、自民党の税制調査会長である。
藤井氏は、非自民連立の細川護煕と羽田孜内閣の蔵相、そして鳩山由紀夫内閣の財務相を歴任し、現在は民主党税制調査会長である。と同時に、野田佳彦首相の後見人役として知られる。
ちなみに、森田氏もまた大平氏の娘婿であり、大平首相秘書官(事務担当)を務めている。加えるならば、杉崎氏の長男・剛氏(故人)は、自民党の谷垣禎一総裁が小泉純一郎内閣の財務相時代の大臣秘書官(政務担当)。
ここからは、過去から現在に転じよう。「消費増税法案に政治生命を懸ける」野田首相を支える財務省のことだ。勝栄二郎事務次官(75年入省)以下、古谷一之主税局長(78年)、香川俊介官房長(79年)、星野次彦官房審議官(主税局担当・83年)の陣立てが同法案を所管している。
星野氏は谷垣財務相秘書官(事務担当)を務め、杉崎氏が国際金融局担当官房審議官時代の直属の部下である。大物事務次官としてメディアが頻繁に取り上げる勝氏だが、入省して配属された主税局国際租税課の当時の上司が杉崎氏だ。
実は、杉崎氏こそが2月25日の野田・谷垣極秘会談の仲介者なのだ。こうして欠けている情報は繋がったのである。(ジャーナリスト・歳川隆雄)