大手新聞社の社説や記事では、消費税の増税が必要だとする論調が圧倒的に目立つ。一方で、大手新聞社など130社以上が加盟する日本新聞協会は、消費税について「軽減税率の適用」を国に求めている。
「財務省主導の増税路線にマスコミも乗っかっています」「消費税が上がっても大手新聞社は困らないカラクリがあります」――みんなの党の山内康一・衆院議員はブログ(2011年6月19日)でこう指摘している。
山内議員がいう「カラクリ」とは、「大手新聞は『新聞購読料は消費税対象外』という主張をし、その主張に財務省はOKを出している様子」のことを指す。「財務省と大手マスコミはすでに蜜月状態にあります」とも書いている。
確かに、大手新聞の論調は、消費税の増税に前のめりだ。たとえば菅政権が、消費税について「2010年代半ばまでに10%に」とした、税と社会保障の一体改革案を決定したことを報じた2011年7月1日付各紙朝刊をみると、次のような文言が並んでいる。
「(税率10%の表現を弱めようとする声を)はねつけた点は評価していいだろう」(読売新聞、社説)、「(引き上げ時期をあいまいにしたことなどについて)原案から大きく後退した」(日経新聞、社説)、「消費増税と社会保障改革は待ったなしだ」(朝日新聞、解説記事)
一方で、新聞協会は11年7月12日、経済産業省が募集していた12年度の税制改正要望に対して、要望書を提出した。協会担当者によると、要望書の中で消費税については、軽減税率の適用を求めた。消費税関連を含む国への同様の要請は「今年が初めてではなく、以前から行っている」そうだ。
OECD加盟の「ほとんど」の国では、消費税に類する税制で、新聞には軽減税率が適用されるか、中にはゼロ税率の国もあるという。確かにドイツやフランスなどで軽減税率を新聞や食料品などに適用している。
また、要望書の中で、軽減税率を求める理由としては、新聞は、民主主義の健全な発展や生活向上に寄与しており、民主主義の基盤を支えるリテラシーの向上に不可欠だと説明しているという。
消費税率の10%への増税は国にとって必要だが、自分たちの業界には税率軽減を――こうした主張には、どの程度説得力があるのだろうか。
みんなの党の衆院国対委員長、山内康一議員に話をきくと、「矛盾があるし、フェアじゃない気がします」と答えた。文化的な意義の話をするならば、情報発信メディアは新聞だけではない。さらに、増税で新聞が高くなると所得が低い人たちが困る、という主張ならば、低所得の人たちへ税の一部を還付するなど別の形を取れば良い。いずれにせよ、「新聞を特別扱いする必要はありません」。
元財務省官僚で、「これからの日本経済の大問題がすっきり解ける本」などの著書がある、高橋洋一・嘉悦大学教授にもきいてみた。
高橋教授は、新聞の「消費増税必要」論調について、「財務省の主張に媚びることで、自分たちへの税率は甘くしてもらおうという期待が透けてみえる」と指摘した。新聞業界は「自分たちの利益に忠実」で、消費税だけでなく、再販制についても「手前ミソの議論」をしている。「おかしな話です」。
消費増税をめぐる新聞の社説などでの主張と、新聞への軽減税率適用の要望について、「矛盾だ」との指摘も出ていることについて、新聞協会にコメントを求めた。
担当者だという男性は「コメントはない」「ノーコメント」「載っけてくれなくていい」と話した。「記事化する際、『ノーコメント』で良いか」と確認すると、「コメント載っけたいのはそっちの都合でしょう。載っけなくていいって言ってるでしょ」と先方が電話を切ってしまった。
念のため電話をかけ直し、コメントを載せたいので、検討して欲しいと改めて伝えると、同じ男性が出てきて「載っけなくていい」と話し、また電話を切った。
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