急性腎不全:発症にかかわるたんぱく質を発見
毎日新聞 2012年04月29日 20時20分(最終更新 04月30日 08時15分)
急性腎不全の発症にかかわるたんぱく質を、米ハーバード大の根来(ねごろ)秀行・客員教授(内科学)らのチームが発見し、米科学アカデミー紀要に発表した。急性腎不全の死亡率は約5割と高いが、人工透析などの対症療法しかない。このたんぱく質の働きを抑える薬を開発すれば、新たな治療につながると期待できる。
急性腎不全は、ろ過した尿の元から水分やブドウ糖などを再吸収する腎臓の組織「尿細管」にある細胞同士の結合が血栓などがきっかけとなって壊され、発症することが知られている。だが、何が細胞をばらばらにさせているのかが不明で、新薬開発の妨げとなっていた。
チームは、細胞表面にあって、細胞外からの信号を内部に伝えるスイッチ役のたんぱく質「Gα12」に着目。このたんぱく質が働くと、細胞同士の結合が壊れることを突き止めた。また、このたんぱく質の働きがいつも活発なマウスを人工的に作成。より細胞同士がばらばらになって、腎臓の機能が落ちていた。
根来さんは「このたんぱく質の働きを抑え、急性腎不全を防ぐ創薬を目指したい」と話す。【河内敏康】