安さと手軽さで急成長してきた高速ツアーバス業界。群馬県内の関越自動車道上り線で高速バスが防音壁に衝突し、多数の死傷者が出た事故を起こした運転手は「居眠りしていた」と話しているという。競争の激化で安全面へのしわ寄せの懸念が高まり、国が新たな対策を始めようとしている矢先の惨事だった。
朝日新聞デジタルに特集「格安バス、競争激化」「格安! 快適! 高速バス!」。今回のツアーを企画した「ハーヴェストホールディングス」(本社・大阪府豊中市、大屋政士社長)のホームページには、そんな言葉が躍る。首都圏や関西と東北・北陸・九州などを結ぶツアーが100以上並んでいる。
金沢と東京ディズニーリゾートを結ぶツアーは、曜日によって値段が変わるものの、片道3千円からと格安だ。事故にあったバスが出発した28日夜発の便は3500円で、鉄路でJRを利用すると1万円を超す区間。この区間でJRバスが運行している路線バスも最低で5千円する。
2010年3月にJRの寝台特急「北陸」と急行「能登」が廃止されて以降、北陸地方では特に価格競争が激しくなっている。あるバス業者は「十数年前にはバス1台あたり30万円ほどで委託を受けていたが、最近では約20万円まで下がった」と嘆く。事務経費を削り、「ギリギリの経営」をしているという。