財政拡大とマンデル・フレミング理論
【1】「『もはや財政出動は効かない』が世界の常識」のウソ「国債を刷れ!」p.59で国の借金が増えることと金利とは無関係 と言う話をしたのですが、関連して 「金利が上昇するから財政出動は利かない」とする説がウソ であることについても述べておきたいと思います。 例えば、竹中平蔵氏。 そもそも従来、開放経済の下では財政拡大は大きな効果を持たないことが知られてきた。
財政で内需を増やしても、一方で金利上昇・通貨高(筆者注:つまり、円高)・輸出減というメカニズムが働き、財政の効果がキャンセルアウトされるためだ。 その中で日本は、ロジック(論理)を無視して常に財政拡大を指向してきた数少ない国だった。 (Fuji Sankei Business i 2008.12.22) ここで、「開放経済」とは要するに、為替変動相場制で自由貿易をしている場合の経済です(江戸時代の鎖国経済と正反対の経済)。 このような話は、竹中氏と密接な関係のある高橋洋一氏(「霞ヶ関埋蔵金」の提唱者)も著書「日本は財政危機ではない!」p.19で 景気対策に公共投資を投下する財政政策が効いたのは、はるか昔の固定相場制の時代のことであり、変動相場制の下では、ほんの少ししか効かない
(中略) これは『マンデル・フレミング理論』によって証明されている。 (中略) (その理論は)ノーベル経済学賞を受賞した国際経済学者、ロバート・マンデルらによって唱えられ…もはや世界では常識となっている と述べています。 竹中氏も高橋氏も特に 日本の90年代(借金ばかりが増えてGDPが伸びなかった「失われた10年」)を問題にしています。 公共事業をしまくった割りには景気が良くならず、借金ばかりが残ったという具合です。 そして、 その理由を「金利が上昇するから」としているのですが、 その「公共事業をしまくった90年代」は金利は下がり続けています(図表1)。
つまり竹中氏の 「財政で内需を増やしても、一方で金利上昇」 という見解は、 全くの事実無根であるのです。 そもそも、 金利というものは、中央銀行(日銀)が市中に資金を供給することでいくらでも下げることが可能 です。 変動為替相場制の下で中央銀行が金融緩和を行ったとする
とあります。(中略) 国内金利には低下圧力がかかる (中略) MFモデル(マンデル・フレミング・モデル)においては、国内金利の低下のため、資本が自国から外国に流出する圧力がかかり、外国通貨への需要が増加するという追加的な効果が発生する つまり、マンデル・フレミング理論によれば、 1.日銀が資金供給(金融緩和)をすれば金利が下がり、 2.それにつれて外貨需要増加=外貨高=円安の効果がある ことになります。 竹中氏や高橋氏がこのマンデル・フレミング理論を用いて財政拡大は無意味と主張するのは、実際のところ、かなりの無理があると言えます。 #なお、「国債を刷れ!」のp.88で 江戸時代は鎖国、つまり閉鎖経済だからうまく行ったのでは、という疑問が生じるかも知れないが、この吉宗のバラマキは金融緩和とセットで行われた。開放経済でもうまく行くと見て良い。
のように書いているのですが、暴れん坊将軍の政策は、 バラマキ(=積極財政)と金融緩和(=資金供給増加)がセット ですので、 マンデルフレミング理論に従って考えれば開放経済でも全く問題なかったであろう、と考えられるわけです。 【2】いまや、世界の常識は財政拡大!実際、80年代から90年代にかけての「はるか昔」でもなく「固定相場制」でもないイタリアでは、「失われた10年」の日本以上に「ロジック(論理)を無視して常に財政拡大を指向してきた」 のですが、 公的債務/GDP比で見れば財政は日本よりもずっと健全なままであり、 かつ、 国民の実質所得は日本よりもずっと増えています。 (このイタリアの事例については「国債を刷れ!」p.257で詳述しています)。 開放経済・変動相場制だからといって財政が効かないということはないのです。 そして、 いまや世界の常識は財政拡大です。
中国・米国は金額もGDP比も抜きん出て大きくなっています。 そして、世界はつながっているのであり、経済は持ちつ持たれつです。 中国・米国の経済がダメになれば日本も当然タダでは済みません! もし本当に 「開放経済では財政拡大は無意味」 ⇒景気は良くならず、借金ばかりが残るだけ
⇒いずれ中国政府も米国政府も財政破綻するかも
であるのなら、竹中氏や高橋氏は世界経済を救うため、 胡錦涛主席やオバマ新大統領が巨額の 財政拡大を実施することを思いとどまるよう、 身を挺して説得しに行くべきでしょう。
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