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2012年4月29日(日)付

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日銀の政策―緩和の自動化を憂える

日本銀行が追加の金融緩和を決めた。いま景気は緩やかながら回復基調にあり、インフレ率もプラスに転じつつある。そうした中での度重なる緩和は疑問だ。日銀[記事全文]

在日米軍再編―施設返還を早く確実に

沖縄の米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設と、海兵隊のグアム移転や嘉手納基地より南の米軍施設の返還を切り離して考える。この新しい方針に基づく、日米両政府の「在日米軍再[記事全文]

日銀の政策―緩和の自動化を憂える

 日本銀行が追加の金融緩和を決めた。

 いま景気は緩やかながら回復基調にあり、インフレ率もプラスに転じつつある。そうした中での度重なる緩和は疑問だ。

 日銀法の改正までちらつかせる政治からの圧力や、市場からの期待に押し切られたとしか映らない。

 日銀が自らの経済見通しを示す今年度初の「展望リポート」では、来年度のインフレ率を0.7%とした。日銀は2月から1%の「インフレ目標」を掲げており、デフレ脱却への決意を改めて示すことが迫られた。

 展望リポートは3カ月ごとに見直される。となると、目標に届くまで、少なくとも3カ月ごとに市場や政治から強烈な圧力を受け、やる気を見せるために緩和を繰り返すのか。

 これでは緩和の「自動化」である。目標に達しない間、投機的な思惑がエスカレートすることは目に見えている。

 さらに日銀が緩和で国債などを買い込むほど市場での存在感が大きくなり、期待を裏切った時の失望売りも大きくなるジレンマが深まる。

 ちょっとしたきっかけで売りが売りを呼ぶ相場崩壊が起こりうる局面では、日銀自らが危機の引き金を引く恐れも高まる。そう考えると、なおさら市場の言いなりに緩和するほかない。そんな深みに、日銀ははまりかけている。

 緩和の矛盾や限界もあらわになりつつある。日銀が2月に10兆円の緩和に踏み切った直後、2年国債が総額2兆5千億円あまり発行された。このうち5割近くは日銀が保有する。

 ある資産の市場で日銀の存在が大きくなりすぎると、売り手もいなくなる。いきおい他の資産を買うほかなく、国債なら満期までの期間がより長いものになる。

 それは、財政資金の調達を長期にわたって支援するようなものだ。事実、今年度は新たに44兆円強の長期国債が発行されるが、日銀が年度内に買う長期国債の額はそれに匹敵する。

 催促相場に迎合するままでは政策効果は薄れる一方だ。消費増税法案の審議が難航するなかで、財政尻ぬぐいの疑念は増すばかり。それでも失望売りが怖くて、市場には逆らえない。国会で袋だたきにあうことを考えればなおさらだ――日銀はそう考えているのだろうか。

 追い込まれるほど転換は難しくなる。行きすぎた圧力は断固として退ける。日銀が政策の自由を取り戻すには、そこから始めなければならない。

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在日米軍再編―施設返還を早く確実に

 沖縄の米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設と、海兵隊のグアム移転や嘉手納基地より南の米軍施設の返還を切り離して考える。

 この新しい方針に基づく、日米両政府の「在日米軍再編見直しの中間報告」には評価できる点と、できない点がある。

 懸案だった米軍施設の統合、土地の返還、さらには海兵隊の国外移転への道筋が示されたことは一歩前進であり、進展を期待する。

 一方で、普天間の辺野古移設を相変わらず「唯一の有効な解決策」としたのはいただけない。「見直し」に含みを持たせるような表現も加えたとはいえ、展望は開けていない。

 まず土地の返還に関しては、報告は普天間を除く嘉手納以南の五つの米軍施設を分割し、すみやかに▽代替施設の提供後▽海兵隊の国外移転後の3段階での実施を明記した。年内に具体的な計画を決めるという。

 96年の普天間返還合意の際にも、訓練場や軍港など11施設、約5千ヘクタールの返還を決めたが、実現しているのは1割未満にすぎない。今度こそ一刻も早く実現させ、沖縄の負担軽減を確実に進めなければならない。

 海兵隊の移転では、海外へ出るのは約9千人で、そのうち約4千人がグアムに行く。

 グアムへの人数は06年の日米合意より減るのに、米政府はいったん日本政府に移転費用の増額を求めてきた。結局、元々の最大負担額28億ドルで折り合ったが、一部を新たに米領北マリアナ諸島での日米共同訓練場の整備にあてることにした。

 いままでにはなかった取り組みであり、自衛隊の島嶼(とうしょ)部防衛の訓練をより効率的におこなう狙いがある。

 だが、西太平洋での米軍との連携強化は、中国などを刺激する側面があり、さまざまな目配りも求められる。

 普天間問題には、首をかしげざるを得ない。新しい方針への転換は、辺野古案を白紙に戻す好機だったはずだ。

 嘉手納への統合を唱える米議員の要望もあり、「唯一の有効な解決策」の前に「これまでに特定された」をつけたが、政府が本気で検討する気配はない。

 一方で報告には、普天間の補修工事を「日米が相互に貢献」して進めることを明記した。

 これでは、米軍が普天間を使い続ける「固定化」の疑念が膨らむばかりだ。

 そうではないというなら、日米両政府は30日に予定される首脳会談を機に、新たな移設先の検討に本腰を入れるべきだ。

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