社説
小沢元代表判決 無罪でも重い政治責任(4月27日)
資金管理団体「陸山会」の土地取引をめぐり政治資金規正法違反(虚偽記入)の罪で強制起訴された民主党元代表・小沢一郎被告に対し、東京地裁は無罪判決を言い渡した。
判決は元秘書の石川知裕衆院議員(道11区)らが政治資金収支報告書に虚偽記入したことや、小沢元代表が4億円の土地購入資金の簿外処理などに関し報告を受け了承したことは認めた。
しかし元代表が取引の決済日など細部を認識していなかった可能性があるとして、虚偽記入の故意や共謀まで認める証拠はないと判断した。
「疑わしきは被告人の利益に」とする刑事裁判の原則に沿って無罪と結論づけたものだ。
だが石川議員ら3人の元秘書は一審で有罪判決を受けている(控訴中)。「政治家・小沢」としての管理責任、道義的責任は残る。「秘書がやったこと」で済まされず、政治への信頼を失墜させた責任は重い。
小沢元代表は無罪判決を受け政界で復権を目指すとみられるが、今の元代表にその資格はない。まずは自らの「政治とカネ」をめぐる疑問点を国会でしっかり説明すべきだ。
東京地裁は公判段階で、取り調べに問題があったとして「小沢元代表に報告し、了承を得た」とする元秘書らの供述調書をほとんど採用しなかった。しかし判決ではその他の証拠から報告、了承までは認めた。
「収支報告書の内容を確認したことは一度もない」と関与を否定した元代表の公判供述も信用できないと退けている。
4億円もの巨額の取引であり、購入資金を元代表自ら提供していることからも常識的な見方だろう。
しかも今回の判決は、元秘書らが虚偽記入した動機を「元代表の資産を明らかにすることによる政治活動への影響をおもんぱかった」と認めた。元秘書らが有罪となっていることへの元代表の責任は免れない。
また元秘書らへの昨年の判決は、岩手県のダム工事受注の見返りとして中堅ゼネコンが小沢事務所に1億円の裏献金をしたと認定している。
小沢事務所が岩手県や秋田県の公共事業で談合を取り仕切る「天の声」を発していたことも認めた。
小沢元代表は衆院政治倫理審査会出席を「2011年度予算が成立したら」などと先送りしてきた。国会で説明すべき点はなお少なくない。
*問われる与党の結束
無罪判決を受け、民主党執行部は小沢元代表の党員資格停止処分解除や役職復帰を検討し始めた。
元代表も秋の党代表選をにらみ首相交代に言及している。だが元秘書らが有罪判決を受けている状態で政界を動かそうとするなら不見識だ。
民主党内は環太平洋連携協定(TPP)参加や消費税率引き上げに、元代表に近い議員らが反対し対立が続いている。09年の衆院選マニフェスト(政権公約)見直しをめぐっても政権は迷走気味だ。
元代表の無罪判決を契機に党内の主導権争いが激しくなる可能性があるが、主眼はあくまで政策論議に置くよう求めたい。
小沢元代表は野田佳彦政権をいたずらに揺さぶるべきではない。野田首相は「国民の生活が第一」と掲げた政策実現のため元代表と率直に話し合い、党の結束を図るべきだ。