現場発:立ち直った少年
毎日新聞 2012年04月29日 02時30分
更生は、意外な形で始まる。入店1カ月後、先輩店員から仕事の怠慢を注意された。「どう仕返しすれば店を一番困らせられるか」。考えたのは「店で一番仕事ができるようになってから辞める」。そのために毎日、仕事をした。野口さんは見ていた。「最近、頑張っとるやないか」。他人からほめられたのは生まれて初めてだった。うれしくて、さらに仕事に打ち込んだ。
◇養護学校の「先生」に
昨年4月、福岡県立直方養護学校(同県直方市)高等部に、「作業学習」の講師として派遣された。野口石油が取り組む地域貢献の一環だった。授業は「洗車コース」。知的障害がある同世代の生徒と話すのは初めて。「先生、これどう使うの」。最初は「俺が先生?」と首をひねった。
「水ぶきは丁寧に」。南さんの指導に、生徒たちはぞうきんを手に一心不乱に水ぶきする。誰一人として、手を抜かない。「なんでこんなに一生懸命なんだろう」。そのうち「洗車の技術は自分が上だが、車をきれいにしたいという気持ちは負けている」と思った。「先生」の大変さに気付き、中学校の先生に殴りかかっていた2年前の自分が、恥ずかしくなった。