現場発:立ち直った少年
毎日新聞 2012年04月29日 02時30分
バイクでの暴走など非行を繰り返した少年が、ガソリンスタンドでの仕事を通して立ち直り、この春、正社員になった。17歳。日々働く姿を見守り、背中を押してくれたのは、69歳の社長と、自分を初めて「先生」と呼んでくれた養護学校の生徒たちだったと、少年は思う。【高橋克哉】
◇「金髪姿」受け入れ
「いらっしゃいませ」。北九州市戸畑区のガソリンスタンド「野口石油」。南将平さんの声が響く。きびきびした動きが、すっかり板についた。社長の野口義弘さんの前にふてくされたように現れた2年前の暗い影は、どこにもない。
中学1年の時、両親が離婚した。父の再婚相手を「お母さん」と言えなかった。家にいるのが嫌で、仲間と深夜に街をうろついた。学校を休み、バイクで暴走した。先生にも、警察官にも殴りかかるほど、すさんでいた。
野口さんは17年前から非行少年や引きこもりの子どもたちを雇い、立ち直りの場にしてきた。中学卒業後、福岡県警少年サポートセンターの紹介で面接に訪れた金髪の南さんに「大変かもしれん」と思いながらも、受け入れた。