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東アジア市民の平和連帯に向けて

姜咲知子2005/02/19
韓国の平和団体に勤務する友人が、日本を訪れた。思いがけず私がコーディネーターを引き受けることになり、私自身も改めて草の根の市民活動の力を感じることができた。
東アジア NA NA
 「北東アジアを非核化していくためには、日韓が協同することはとても大事だと考えます」と語る中村桂子さん(ピースデポ事務局)の話を大きくうなずきながら熱心に聴く女性。彼女は、韓国の平和団体「韓国平和フォーラム」に勤務するアン・キョンアさん(27歳)だ。

 キョンアさんはこの度、2月上旬に国連大学で開催されていたGPPACという、紛争予防に関するNGOの東北アジア地域会議に参加するため、韓国代表の1人として来日した。

 GPPACの会議が終了した後も数日間日本に残り、東京近郊にある平和団体を訪問したいということで、私がコーディネーターを引き受け、一緒にいくつかの団体を訪れた。

 最初に訪れた団体は日本国際ボランティアセンター(JVC)。大まかな活動の歴史と、「コリアこどもキャンペーン」についてお話を伺った。コリアこどもキャンペーンは、日本・韓国・北朝鮮のこどもたちの描いた絵を各地で展示しつつ、市民交流を進める取り組みである。

 お話の中で印象に残ったのは、JVCは常に一方的な支援ではなく、現地に入ってそこに生きる人たちの自立を促す支援をやっていきたということだ。何よりもそこに生きる人たちとの交流を重視している。「コリアこどもキャンペーン」も、マスメディアが伝えない北朝鮮に住む人々との直接的なつながりを生んでいる。大学院で北朝鮮問題について研究していることもあり、キョンアさんは熱心に耳を傾けていた。

 GPPACの東北アジアの事務局を担ったピースボートも訪問した。ピースボートが生まれた最初のきっかけが、日本で起きた歴史教科書問題だったことや、コリアクルーズで初めて北朝鮮に訪れた時の感動、世界情勢に翻弄される苦労話などもうかがった。

 キョンアさん曰く、ピースボートの世界を船で旅をするという事業に関しては、韓国でも興味をもっている人たちが多いということだ。今後の活動予定について大変わくわくする話を聞くことができた。ピースボートでは近い将来、日韓で同時に参加者を募集し、日韓共同クルーズを開催したいという夢があるそうだ。その時は是非乗りたいと、キョンアさんも話していた。

 私が今回特に目を開かされたのは、ピースデポで聞いたお話だった。ピースデポは市民による平和活動を支援するのためのシンクタンクを目指して設立されたNPOで、主に核問題に取り組んでいる。

 反核運動といえば、とかくデモ隊や反政府的なイメージがあるが、広島・長崎の被爆体験を持つからこそ、感情的になるだけでなく理性的に話し合うことが大事だと考え、北東アジアに「軍事力によらない安全保障」を作っていくための案を出していくことがピースデポの仕事だ、と中村さんは仰っていた。

 日本と韓国は、アメリカの傘の下で安全を保障されているという意味においてはとても立場が似ているし、東北アジア地域の重大な課題として、北朝鮮の核問題を抱えている。そういった意味からも、自分たちの問題だという意識でお話を興味深く聞くことができた。

 GPPACの会議で、この東北アジア地域における紛争予防について、多方面の立場から話を聞き、議論してきたばかりだったキョンアさんも、多くのことを感じたようであった。

 ピースデポは、韓国の「アジア平和ネットワーク」という団体と連携した取り組みも行っている。韓国ではまだ「非核」という概念が知られていないため、非核という平和への取り組みを、誰もがわかりやすい形で伝えるため、韓国語・日本語でブックレットを出版する計画があるという。こういった市民による平和の連帯が大きな力になると信じたい。

 今回思いがけず、コーディネーターという立場で、改めて草の根の市民活動の力を感じることができ、今を生きる1人として、当たり前に身の回りで起きている問題について知っていなければという思いを強くした。

 「たくさんの収穫を持って韓国に戻れます。今後、平和フォーラムでの活動に活かしていきたいです」と、目を輝かせ帰国したキョンアさんの笑顔が何より嬉しかったのは言うまでもない。
◇ ◇ ◇
東アジア市民の平和連帯に向けて
話を聞くキョンアさん(右)

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