警察庁の発表によると、昨年のサイバー犯罪相談件数ではウイルス被害、不正アクセスが目立って増えている。形をひんぱんに変えるサイバー犯罪への対応が求められる。(ITジャーナリスト・三上洋)
■相談件数はウイルス被害、不正アクセスが増加
警察庁が「平成23年中のサイバー犯罪の検挙状況等について」という統計データを発表した。検挙状況を見る前に、サイバー犯罪に関する相談状況を見てみよう。平成23年中に都道府県警察の相談窓口で受けたもので、いわば被害者の声をまとめたものだ。
右のグラフが都道府県警察における相談受理件数の推移で、平成23年は80,273件。前年よりも4463件、5.9%も増えている。ピークの平成21年よりは少ないものの、8万件を超える大量の相談が寄せられている。相談の種類別に、増減を見てみよう。
・ウイルスによる被害に関する相談は428件(+101件、+30.9%)
・不正アクセス等に関する相談は4,191件(+850件、+25.4%)
・迷惑メールに関する相談は11,667件(+1,831件、+18.6%)
・詐欺・悪質商法に関する相談は32,892件(+1,559件、+5.0%)。
・インターネット・オークションに関する相談は5,905件(-1,000件、-14.5%)
もっとも増えているのは「ウイルスによる被害」で、前年比30.9%と大幅に増加。具体的には「アダルトサイトを見たら、高額な架空請求画面が繰り返し立ち上がるようになった」などの相談があった。
「不正アクセス等に関する相談」も前年比25.4%と増えている。オンラインゲームのアカウントが盗まれた、インターネットバンキングのID・パスワードが不正に使用されたなどの相談が寄せられている。
迷惑メールの相談は、平成14年以降、増加傾向が続いており、前年比18.6%の11,667件。平成23年は東日本大震災関連の義援金募集のメール、原発関連のチェーンメールなどの相談があった。
逆に減っているのはネットオークションの相談で、前年よりも14.5%減っている。ネットオークション詐欺は、サイト運営者側の対策や警察の取り締まり強化により、以前よりも件数は減ってきているようだ。平成19年に比べると、相談件数はおおむね半分程度まで少なくなっている。
■検挙件数では「わいせつ物頒布等」が大幅増加
平成23年のサイバー犯罪検挙件数は5,741件で、昨年よりも1,200件程度減っている。減った理由はオークション詐欺が減ったこと、刑法改正により一定の抑止効果があったことなどが考えられる。
ただし全体が減っている中で「ネットワーク利用犯罪」は増加しており、5,388件(前年比+189件、+3.6%)で、過去最高を記録した。「ネットワーク利用犯罪」は、ネットでの児童ポルノ頒布、出会い系サイト規制法違反などが含まれているが、もっとも目立つのは「わいせつ物頒布等事犯」だ。わいせつな画像や動画をサイトや掲示板にアップした投稿者を検挙している。増えた理由は、全国で一斉に検挙が行われたこと。都道府県警察を超えた「全国協働捜査方式」を本格的に運用したことで、検挙件数が増えたようだ。
今回の警察庁の発表では、ネット上の自殺予告についての対応件数もまとめられている。それによると、平成23年中に都道府県警察が対応したのは329件・333人で、前年より45人増えている。このうち、自殺を図った者は20人、死亡者が5人、救護等により存命した者が15人いた。警察は自殺のおそれのある81人に対し、本人への説諭、家族への監護依頼等の自殺防止措置を実施したとのこと。警察による対応が一定の効果をあげたと言っていいだろう。
警察庁ではこの統計を受けて、刑法改正によるウイルス罪などで取り締まり体制を強化すること、都道府県警察を超えた全国協働捜査方式でネット上の違法・有害情報の取り締まりを推進することを今後の対策としてまとめている。また、相談窓口を充実させること、ネット上の自殺予告に対して迅速に対応すること目標として掲げた。年々変化するサイバー犯罪に合わせて、取り締まりなどの方法も変えることが求められそうだ。