大槻ケンヂ 連載エッセイ「オーケンの、このエッセイは手書きです!」

大槻ケンヂ 連載エッセイ「オーケンの、このエッセイは手書きです!」

プロフィール

大槻ケンヂ(筋肉少女帯・特撮)

1966年2月6日生まれ

1982年 筋肉少女帯結成、1988年 メジャーデビュー、バンド活動と共に執筆その他活動は多岐にわたる。作家としては94年、95年日本SF大会日本短編部門「星雲賞」受賞。代表作に『ロッキンホースバレリーナ』『グミ・チョコレート・パイン』等。
筋肉少女帯は数年の活動休止を経て2006年に復活。
2011年、筋肉少女帯、特撮、大槻ケンヂと絶望少女達など複数のバンドで活動中。著作も多数発売中である。
◎リリース情報
大槻ケンヂ
書籍「サブカルで食う 就職せず好きなことだけやって生きていく方法」
4/28(土)発売

◎ライブ情報
筋肉少女帯
地獄の決定打!筋肉少女帯VS人間椅子VS人間筋肉少女椅子帯
5/19(土) 赤坂BLITZ
結成30周年記念&『筋少動画』発売ツアー!筋肉少年少女隊
5/26(土) 大阪・BIG CAT
5/27(日) 名古屋・CLUB QUATTRO
6/10(日) LIQUIDROOM
6/17(日) Shibuya O-EAST
結成30周年大祭!筋肉少女青年館
6/29(金) 日本青年館

◎舞台情報
ステーシーズ 少女再殺歌劇
6/6(水)~6/12(火) 全労済ホール スペースゼロ
出演:モーニング娘。選抜メンバー 他
原作:大槻ケンヂ


大槻ケンヂ公式ウェブ
第十八回

第十八回 僕のゾンビがモー娘。で

2012年4月27日(金)

 拙著「ステーシーズ 少女ゾンビ再殺全談」が演劇化されることとなった。
 原作となる小説はタイトルの通りのおぞましい内容である。
 近未来、少女ばかりがゾンビとなる「ステーシー化現象」の蔓延した暗黒の世界で、少女ゾンビの肉体を165分割することによって彼女らを再殺する部隊が作られ、血みどろの戦いはさらに地獄の様相を呈していく。
 これを書いた頃、僕はメンタルのひどく悪い状態にあった。
 そんな時になんで悲惨極まりない小説を書いてんねんとつっ込まれたなら「あれは小説療法だったんですよ」と答えるであろう。
 最悪の状況の中で、いかにして一筋の光明を人は見つけ出すべきか、それを物語を紡ぐことによって探し出そうと自己治療を試みていたのだなと書いた後で気がついた。
 そんなマイ黒歴史のポイントが演劇化される上に、少女ゾンビたち…ステーシーズを演じるのがモーニング娘。であるというのだから人生って何があるか本当にわからんですね皆さん。
 モーニング娘。さんによるミュージカル(!)「ステーシーズ 少女再殺歌劇」製作発表記者会見に原作者として参加してきた。
 モー娘。さんも今や第10期生までいるそうで、6期生の田中れいなさん以外は皆10代前半とのこと。
 れいなさんにしても彼女の御父上と僕は同年代であるらしく、まさに46歳の目で見れば全員が実の娘のように映って仕方がない
 しかも娘たちが皆いいコばかりでお父さんうれしいったらないわけだもう。
 とにかく礼儀正しくてビシッとしているのだ。
 誰に会っても「おはようございます!」何があっても「ありがとうございます!」エレベーターに僕も含め全員で乗る時にさえ、扉が開くなり「ありがとうございます!」と声を揃えるので、さすがに「…そのありがとうは、誰にありがとうなの?」と近くにいた娘さんの一人に尋ねたところ「…さぁ…多分、ボタンを押してくれた方にありがとうじゃないですかね」との微笑みと共にの返答であった。かわいらしいなぁ。
 ビシッとしているのはスタッフさん方の愛ある教育の賜物によるものでもあるのだなとわかった。
 会見後、娘さんの一人が女性スタッフに注意を受けて「はいっ!すみませんでした!」と謝っていた。
 けっこう厳しい口調で指導を受けていた。文科系ふにゃらか人生を送ってきた身としてはそれ見ただけでガチこわくてマジちょっと泣きそうになったのだが、女性スタッフの方に後で理由を聞いたところ『他のメンバーが記者たちに挨拶をしている時に、自分の服のほつれを気にしていたから』とのこと。
 ウ〜ン!集団アイドルってバリ体育会系!と文化系原作者先生はまたビビりまくったわけである。
 素晴らしい。お父さんも少しはビシッとします。
 集団アイドルが、統率性やグループ内外の競争、そもそもアグレッシブなその存在自体によって、彼女らを支持する人々に戦闘を仮想体験させているのだ。
 というような論を何かで見聞したことがある。
 男の子たちの代わりに、過酷な通過儀礼アイドルという激務で表現してくれているということか。
 だとしたら戦闘集団としてグループが体育会…つきつめれば軍隊を想起させるような規律感を醸すのは必然と言えるかもしれない。
 個人的には近年の集団女子アイドル乱立ブームの根底には、日本人の軍隊式規律感へのノスタルジーがあるようにも思う。
 ゆるゆるな我々の代わりに、軍人さんがキリリとして下さっている安心感、ということだ。
 しかし、そんなことより個人的な問題は、アイドルがみんなうちの娘に見えるという我が“お父さん化現象”である。これはステーシー化現象より事態は深刻と言えよう。
 そのくせ若い娘の顔の区別がなかなかつかないという実にシンプルなオヤジ化現象も同時に発生しているため「うちの娘がみんないいこなんだけど、誰が誰だっけ?」という若年性痴呆状態にある上、誰が誰だかわからなくてもうちの娘(じゃねーっつーの!)ががんばっている姿をみていると、なんだかジ〜ンとして泣けてくるという、これはもうちょっと早い“おじいちゃん化現象”も始まっているのである。
 おじいちゃんとしてはいかにボケたとしてもかわいい孫娘らの認識だけはビシッとしておきたいものだ。
 田中れいなさんの他、「ステーシーズ」出演は9期生、譜久村聖、生田衣梨奈、鞘師里保、鈴木香音さん、10期生、飯窪春菜、石田亜佑美、佐藤優樹、工藤遥さんである。
 近年の集団アイドルブームのパイオニア(おニャンコを元祖と考えるなら中興の祖)であるモーニング娘。さんに舞台化していただけるなどとても光栄なことである。
 原作を書き始めた頃はアイドルグループはやや停滞気味で、かわりにCCガールズに代表されるセクシーグループがブームであったように思う(それもっと前だったかな?)
 と言っても、セクシーアイドルグループのブームは長く続かず、飽和状態に達したころであったか「そ、それはちょっと!?」と思わず言いたくなるほどしびれちゃうよなグループが続々と現れたものだ。
 中でも「T—BACKS」「ピンクサターン」「アンドール」という3大グループが仰天で…いやいや、あやうく筆がすべるところであった
 モー娘。についてのエッセイにピンクサターンを出すのは流れがちがうってもんです。
 いつかの機会にするとして、歌劇の公演は6月6日から12日とのこと…あ、筋少ツアーとちょいかぶり。

※次回掲載:5/15(火)予定