自殺賠償訴訟判決で他殺の可能性言及 京都地裁
京都市山科区の男性=当時(44)=が2008年、近江八幡市の琵琶湖岸で首つり自殺したのは勤務先での長時間労働や暴行が原因として、両親が山科区のビル管理会社と経営者に損害賠償を求めた訴訟の判決が26日、京都地裁であった。大島眞一裁判長は請求通り計2千万円の支払いを命じた。一方、死亡に関し、遺体発見までの状況などから他殺の可能性にも言及。事件性なしとした滋賀県警の判断に疑問を示し「今後、適切な捜査がされることが望まれる」と異例の注文を付けた。
大島裁判長は自殺に対する会社側の責任を認めた上で、死亡した経緯を検討。自殺場所が発見されにくい林の中であるにもかかわらず経営者らが第一発見者だったことや男性が自殺前日、父親に「支度して逃げろ。俺も逃げる」と電話したことなどから「経営者らに執拗(しつよう)に追い回され、精神的に追い詰められていた」と指摘した。
判決によると、男性は02年ごろから同社の清掃業務に従事。長時間勤務や経営者宅の見張りなどを強制され、経営者から暴行を受けるなどし、08年10月25日に自殺した。遺族は当時、他殺を疑い、県警に申し入れたが取り合ってもらえなかった。
原告代理人の森川明弁護士は「警察は司法解剖もしていない。判決は両親と同じ疑問を示してくれた」とし、滋賀県警捜査1課の瀧岡英典管理官は「すぐにコメントできない。遺族には当時、きちんと説明しているはず」としている。
【 2012年04月27日 10時54分 】