総合特別事業計画は、東京電力の経営再建の前提に、電気料金の値上げを挙げた。家庭向けの電気料金については、枝野幸男経済産業相や政府の消費者委員会が上げ幅の圧縮を求める可能性もある。ただ、4月からの企業向け電気料金の値上げも、東電の対応のまずさから難航しており、値上げの行方が、経営再建も左右することになる。
支援機構が金融機関などに示した収支計画では、企業向け料金を4月から平均17%、家庭向け料金も7月から10%値上げする。その結果、初年度の平成25年3月期の営業収益を前年比で約8千億円、26年3月期にはさらに約2800億円改善すると見込む。
収支計画では値上げは3年間の限定で、その後は料金を原発事故前の水準に戻すとしている。7年目の31年3月期には現在よりも5%引き下げることで、今年からの値上げに対する理解を取り付けたい考えだ。
家庭向けの電気料金は、自由化されて個別契約に委ねられている企業向け料金と違い、逆に一斉一律に実施できる。発送電費用などに一定利益を上乗せして算定する「総括原価方式」が認められているからだ。
枝野経産相は、東電による家庭向け料金の値上げ申請を見越し、有識者会議を昨秋発足した。原価から宣伝広告費や寄付金を除外し、人件費にも上限を設ける方針を早々に決め、利用者の反発に備えている。
しかし、実際の値上げの審査には消費者委員会などの審議があり、10%の値上げ幅圧縮や値上げ時期の延期も予想される。
東電はすでに、企業向け電気料金を4月から値上げしたが、契約期間に関する説明が不十分だったことで、大きな批判を浴びた。対象の23万7千件のうち、値上げに合意したのはまだ半分に満たないという。
一方で、支援機構は銀行などに、原発が再稼働しなければ、料金値上げは最低10年間継続する見通しも示す。値上げの実施が混乱すれば逆に東電の収支の悪化を通じ、将来の一層の値上げにつながる恐れがある。