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民主党執行部は、立法府の一員としての責任を果たす気がない。そう疑わざるを得ない国会運営が続いている。ひとつは、消費増税法案を扱う衆院特別委員会の審議入りを大幅に先送りし[記事全文]
国から出資を受けるため、東京電力の新たな事業計画が経済産業相に提出された。一時国有化のもとでリストラを急ぎ、14年3月期の黒字回復を目指すという。[記事全文]
民主党執行部は、立法府の一員としての責任を果たす気がない。そう疑わざるを得ない国会運営が続いている。
ひとつは、消費増税法案を扱う衆院特別委員会の審議入りを大幅に先送りしたことだ。
もうひとつは、衆院の選挙制度改革をめぐる各党協議を暗礁に乗り上げさせたことだ。
ともに、野田首相が「連休前に」と力をこめた重要課題だ。
うまくいかなかった大きな理由は、民主党執行部のとんでもない怠慢である。
特別委の審議入りは、連休前どころか5月16日になった。それも、小沢一郎・民主党元代表に無罪判決が出た日のどたばたのなかで決めた。
野党の出方もある。本会議での趣旨説明に日数が必要なのもわかる。だがこれでは、6月21日の会期内成立は絶望的だ。
3月末に法案が国会に提出されてからすでに約1カ月。田中防衛相、前田国土交通相の問責決議があったにせよ、ここまでずれ込んだのは、なぜか。
消費増税に反対する小沢氏らによる党分裂を避けるため、法案の採決を遅らせたい、あわよくば継続審議にしたい――。小沢氏との「融和」を重視する輿石東幹事長ら執行部の、こんな魂胆が透けて見えないか。
選挙制度改革では、執行部の対応はさらにひどい。
今週、樽床伸二幹事長代行が各党に示した「私案」はずさん極まるものだ。
一票の格差是正のために、小選挙区の定数を5減するのはいい。だが、あとがいけない。
比例区を11ブロックから全国区にする。定数は75減の105にして、うち35議席を連用制にする。各党の要求をつぎはぎした奇っ怪な内容で意味不明だ。それも、この制度での選挙は1回だけと提案した。
どんな政治や社会をめざすのか。選挙制度の根幹をなすべき理念がない。これでは、あまりに説得力がない。
最高裁で「違憲状態」と指弾されてから1年余り。いつまで立法府にあるまじき不作為を続けるのか。衆院解散を恐れるあまり、首相に解散権を行使させないために先送りしていると言われても反論できまい。
民主党執行部は、政治を前にすすめる国会の使命を忘れている。この職責放棄は罪深い。
野田首相は早く、執行部に襟をたださせるべきだ。問責された2閣僚の交代をふくめ、国会正常化を急ぐのは当然だ。
なりゆき任せのままでは、消費増税に「政治生命をかける」という言葉がむなしく響く。
国から出資を受けるため、東京電力の新たな事業計画が経済産業相に提出された。
一時国有化のもとでリストラを急ぎ、14年3月期の黒字回復を目指すという。
ただ、今年7月からの家庭向け料金の10%値上げと、新潟県・柏崎刈羽原発を来年度から動かすことが前提だ。
非現実的で、無理がある計画と言わざるをえない。
確かに供給力を確保するうえで、当面は火力発電の比率を上げるのは避けられない。増えた燃料費分の値上げはある程度やむをえないだろう。
だが、それもぎりぎりまで合理化努力をしてからの話だ。
大口顧客に対する強引な料金値上げのやり方を見て、消費者の東電不信は募っている。ほかの電力を選ぶこともできない。新しい態勢になったからといって、値上げへの理解を得るのは相当にむずかしい。
さらに問題なのは、柏崎刈羽の再稼働だ。
東電は福島原発事故の当事者である。発生後の対応のひどさは記憶に新しい。ストレステスト(耐性評価)の報告書でも、柏崎刈羽は239カ所と他社に比べケタ違いに多い誤記が見つかった。東電の原発管理能力に疑問が突きつけられている。
それなのに、今のうちから再稼働を盛り込むのは、勘違いもはなはだしい。
こうした無理な前提を置いてまで黒字計画を立てざるをえないのは、支援した資金をいずれ返済させるという政府の方針では、東電をなんとか生き永らえさせる形が必要だからだ。
しかし、巨額の賠償や除染、廃炉などの費用負担を考えれば限界は明らかだ。結局は電気料金か税金かで国民が負担せざるをえない。
目先の財政負担を避けようと問題を先送りすれば、かえって最終的な負担が増えかねない。東電の改革も進まない。
私たちは、東電を国有化し、政府主導で被災者への賠償を急ぐ一方、原点に戻って、東電の実質的な破綻(はたん)処理に踏み込むべきだと主張してきた。
野田政権は、東電温存という弥縫(びほう)策を早く放棄し、事故の後始末における国の役割を明確にしたうえで、国民負担をできるだけ小さくする新たな枠組みをつくらなければならない。
国会の役割も見逃せない。昨夏、今の支援策のもとになる法案を審議するなかで、国の責任を明確化する修正をした。
民主党も、自民党も原発を推進してきた責任を、今こそ果たすべきだ。